• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

金融庁 「金融検査マニュアル」を廃止、独自のリスク算出で引当が可能に

2019年12月に検査マニュアルを廃止予定

 金融庁は9月10日、2019年12月を目標に従来の「検査マニュアル」の廃止を明らかにした。廃止時期に言及したのは初めて。
 昨年6月に公表した「検査・監督基本方針」で、段階的に分野別の基本方針を策定。今年4月以降の「検査マニュアルを廃止する方針」を明記していた。
 これまでの検査マニュアルは、「債権分類基準」により不良債権を分類し、損失額を算出し引当算定するルールが根幹だった。
 今後の検査・監督方針案について金融庁は、「金融機関が自ら経営理念や方針などを策定し、将来を見通した引当をできるようにする。担保・保証だけではなく将来のキャッシュフローに基づく返済可能性にも着目」し、これまで以上の金融仲介機能の発揮を求めた。今後、業界団体や公認会計士などと議論を重ね、最終案を年内に発表する意向だ。

「債権分類基準」から「将来性」へ

 バブル崩壊後の不良債権処理に有効だった検査マニュアルの「債権分類基準」は、財務内容や担保、保証が重要視された。いわば「過去」をみる実務で、これが定着していた。
 「正常先」や「要注意先」は、予想損失を過去の実績から算出。「破綻懸念先」や「実質破綻先」、「破綻先」は、回収不能額を見積もり、個別で償却や引当を行ってきた。
 だが、人口減少や高齢化社会、低金利による金融機関の業績悪化など、環境が大きく変化。従来のやり方の弊害も指摘されていた。
 金融庁は、「これからは金融機関が独自の経営理念に基づく経営戦略があることを理解し、個性や特性に着目した検査・監督を行っていく」と説明。ビジネスモデルの持続可能性を確認し、各地域や産業別にリスクを評価できるようにする。
 例えば、地域の重要な産業が「漁業」の金融機関の場合、これまでは業績や財務内容による債務者区分で引当や償却を行ってきた。今後は、「好漁や不漁など産業の変動を前提に(取引先と)付き合い、(正常先でも)将来性をみて引当を行い支援する」(金融庁)。将来性を重視し、今後起きることへの支援をしやすくする。

地域金融機関の生き残りをかけた取り組み

 金融機関は、それぞれの地域や産業事情に精通し、より踏み込んだ取引先との対話が必要になる。現場に寄り添う当然の姿勢だ。
 過去の実績や定量、定性情報だけでなく、足元の情報に加え、将来予測も重要となるだけに、金融機関の力量も問われる。
 金融庁は、過去の実績に基づく現状の引当実務を否定していない。だが、今後は将来のリスクを引当に反映できるが、各金融機関がそのリスクにどのように対応しようとしているかを重点に検査・監督する。
 そのため金融機関は、事案の理解を深めた説明が必要で、融資を受ける企業側もまた将来のリスクや持続性などの説明が重要になる。
 苦境が続く企業や地域、産業の再生支援が強まるが、地域金融機関の経営方針や戦略で取引の変化も現実味を帯びてきた。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年9月12日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

金融検査マニュアルを廃止する金融庁

‌金融検査マニュアルを廃止する金融庁
Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ