• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

事業再生ADR、利用申請が増加の兆し

 事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の利用申請が増えている。2018年度は10月15日時点で上場企業を含め5件(9社)で、件数ベースで2017年度の5件(14社)に並んだ。
今年7月の産業競争力強化法の改正で、事業再生ADRから会社更生や民事再生など法的手続きに移行した場合の商取引債権の保護に関する規定が明記され、利便性が増した。金融機関が再生を要する企業の利用を探る動きもあり、さらに利用が加速する可能性がある。

低迷した事業再生ADR

事業再生ADRは2008年11月、私的再生スキームの1つとして運用が始まった。産業競争力強化法に基づき、経済産業大臣から特定認証紛争解決事業者として認定を受けた機関の仲立ちが必要。事業再生実務家協会(JATP)は、国内唯一の認証機関となっている。
JATPによると、事業再生ADR利用申請のピークは2009年度の17件(108社)。その後、事業再生支援協議会や地域経済活性化支援機構(REVIC)など官主導の再生スキームの拡充や、金融円滑化法終了(2013年)後の暫定リスケの運用開始などで2016年度は2件(6社)にまで落ち込んだ。

REVICの支援姿勢の変化

事業再生は、事業会社から医療法人、協同組合まで幅広く扱い、活性化投資ファンドも手掛けるREVICが中心になっていた。だが、ここにきて支援姿勢に変化が生じている。REVICを所管する内閣府・地域経済活性化支援機構担当室の担当者は、「2018年5月のREVIC法の改正に伴い、REVICは事業再生から人材・ノウハウの移転による地域金融機関での再生支援の強化に舵を切った」と話す。
事業再生ADRを所管する経済産業省・経済産業政策局の担当者は、事業再生ADRの利用申請の復調について「REVICの姿勢の変化が大きい」と明かす。

「有明テニスの森公園」改修工事の掲示

産業競争力強化法が改正

今年7月、産業競争力強化法が改正され、事業再生ADR申請後の商取引債権の弁済に関する確認規定が盛り込まれた。これまでは法的整理に移行した場合、商取引債権がカットされ事業価値の毀損に繋がる恐れがあった。だが、改正後は万が一、法的整理に移行しても優先的に弁済されるよう裁判所が考慮する規定を設けた。利便性が向上した事業再生ADRの利用が増える可能性が高まっている。
JATPの担当者は、「最近、事業再生ADR手続に準じた任意整理が行われているようだ。債権放棄を伴う再生計画の場合、事業再生税制を利用できないこともあるだけに、事業再生ADRを積極的に活用してほしい」と話す。
金融円滑化法の終了後、安易な「リスケ」が問題視されている。産業競争力強化法改正で増加が見込まれる事業再生ADRが、事業再生スキームの救世主になり得るのか。真価を問われるステージが待ち受けている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年10月24日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ