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「KYBグループ国内取引状況」調査

 10月16日、油圧機器大手のKYB(株)(TSR企業コード:290030463、法人番号:8010401007296、東京都港区、東証1部)は、同社と子会社のカヤバシステムマシナリー(株)(TSR企業コード:291153704、法人番号:7010401022429、東京都港区)の免震データの改ざんを明らかにした。
 免震・制振用オイルダンパーのうち、性能記録データの書き換え行為で大臣認定の性能評価基準に適合しない、または、顧客の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた。 今回のデータ改ざんの対象物件は全国に及ぶが、東京商工リサーチ(TSR)では、KYBと同社グループ(以下、KYBグループ)と直接取引のある1次、間接取引の2次の取引先数を調査した。取引先総数は仕入先合計が2,900社(重複除く)、販売先合計は1,201社(重複除く)だった。
 KYBグループと直接取引している1次仕入先の最多産業は製造業で、345社(構成比57.5%)と半数以上を占めた。1次仕入先の本社地は、愛知県が144社(同24.0%)で最多、次いで東京都が97社(同16.1%)と続く。KYBグループと直接取引する1次仕入先は約9割、1次販売先は6割が関東および中部に集中している。
 また、資本金1億円未満(個人企業を含む)の中小企業は、1次仕入先600社のうち、534社(構成比89.0%)。2次仕入先2,407社のうち、1,486社(同61.7%)と大半を占めた。
 KYBは、建物用の免震用オイルダンパーで住居、医療,福祉施設など903件(不明含む)、制震用オイルダンパーで事務所、住居など83件(不明含む)が不適合品と公表した。一方、自動車や二輪車などの車両用は、不適切行為がなかったことを確認済みとした。ただ、取引先の多くは中小企業が占めており、今後の展開次第では取引先への影響も危惧される。


  • 本調査は企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、KYBおよび同社グループの仕入先、 販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分け、業種、地区、規模などを抽出、分析した。
  • 1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と直接取引がある間接取引企業を示す。
  • KYBのほか、2018年3月期の有価証券報告書に記載されている国内連結子会社4社(カヤバシステムマシナリー(株)、KYBモーターサイクルサスペンション(株)、KYB-YS(株)、KYBエンジニアリングアンドサービス(株))の合計5社を対象とした。

KYBグループの取引先 販売先の最多業種は油圧・空圧機器製造業

 KYBグループと直接取引の1次仕入先は600社。産業別では、製造業が345社(構成比57.5%)で最多。以下、卸売業が130社(同21.6%)、サービス業他が50社(同8.3%)と続く。
 産業を細分化した小分類では、最多は自動車部分品・附属品製造業の54社(同9.0%)。以下、油圧・空圧機器製造業46社(同7.6%)、その他の産業機械器具卸売業26社(同4.3%)、金属加工機械卸売業15社、金属プレス製品製造業14社の順。
 2次仕入先は1次仕入先の4.0倍の2,407社に増える。産業別では、製造業が最も多く1,216社(同50.5%)。次いで、卸売業の912社(同37.8%)で、この2産業が突出して多い。
 また、販売先では、1次販売先は198社、2次販売先は1,049社だった。産業別では、1次販売先の最多は製造の96社(同48.4%)、2次販売先の最多も製造業の420社(同40.0%)。
 販売先の業種別は、1次が油圧・空圧機器製造業18社(同9.0%)、2次は自動車部分品・附属品卸売業49社(同4.6%)がトップだった。

「KYBグループ取引状況」調査対象 産業別

 日産自動車やスズキ、SUBARU、神戸製鋼所など、グローバル企業の検査データ改ざんが相次いでいる。企業規模を問わず、コンプライアンス(法令順守)の重要性が一段と高まっている中で、油圧機器大手のKYBでもデータ書き換えによる不適切な行為が明らかになった。
 KYBは油圧緩衝器・油圧機器等の世界的メーカーで、その製品は不正が発生した建物関係以外に、自動車や二輪車、航空機など幅広く使われている。日本は技術大国を目指すが、世界を代表する日本メーカーの相次ぐデータ改ざんの発覚は、日本製品への不信感を招くことになりかねない。すでに個々の企業の不祥事では済まない事態を認識し、早急な本題の本質の検証だけでなく、コンプライアンスとカバナンスの徹底が求められる。

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