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シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題 建築会社がオーナーを提訴

 シェアハウス「かぼちゃの馬車」の投資トラブルで、物件の建築を請け負っていた会社がシェアハウスオーナーに建築代金の完済を求めて提訴したことがわかった。
一連の問題でオーナーに対する訴訟は初めてとみられる。破綻したシェアハウススキームを巡ってオーナー、スルガ銀行、建築会社が主張する三者三様の利害は、本格的に法廷で争われることになった。

 スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団が明らかにした。オーナーを提訴したのは、都内の建築会社(株)ホーメスト(TSR企業コード:297208608)。完成した物件の請負代金の支払いをオーナーに求めた。
提訴されたオーナーによると、建築代金は総額4,000万円。物件の着工時、上棟時、竣工時の3回分割で支払う予定だったが、最終の残金1,340万円の支払いを拒否していた。
被害弁護団は5月29日の会見で、「(請負代金の)50%以上が業務委託費としてスマートデイズにキックバックされている。建築会社の責任も問うべき」と主張。オーナーも会見に出席し、「キックバックの件をホーメストに尋ねたところ、相当額がスマートデイズに流れていたことを認めた。すでに3分の2(2,660万円)は支払いを終えており、本来払うべき金額は支払っていると考えている」と述べた。
被害弁護団によると、ホーメストはスマートデイズ関連のシェアハウスを確認できるだけで約70棟施工している。施工業者はスマートデイズが選定している。被害弁護団は、建築や不動産販売などの協力業者が市場価格より不当に高額な契約をオーナーと結び、「おいしい」シェアハウスビジネスに群がったとしてその構図を問題視している。

建築会社は「シェアハウスに一切関与せず」

ホーメストは今年4月、取引先を集めてスマートデイズ関連の対応について報告会を実施していた。建築代金の回収ができず資金不足が生じ、一部の仕入先に支払遅延が発生したためで、取引先に状況説明と返済猶予を求めた。席上、社長と代理人弁護士は支払いを拒否しているオーナーに法的措置を実行して代金回収を進めていくと明言。また、ホーメストがオーナーに宛てた入金催促の通知には「弊社は、本物件の工事請負人に過ぎず、スマートデイズの営むシェアハウス事業には一切関与しておりませんので、本契約に従って請負代金をお支払いください」とある。
6月4日、ホーメストの担当者は東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「代理人弁護士に一切を任せており、当社からの情報開示はできない」とした。また、代理人弁護士側も、「答えることはない」と口を閉ざしている。

「適正な建築代金だったという情報開示と証明がない限り、支払いには応じない」と、提訴されたオーナーは語る。仮に残金を支払うにはスルガ銀行から再度の融資を受けなければならない。だが、スキームが破綻した今、それは返済のめどが乏しい借金を増やすだけだ。契約通りの支払いを迫る建築会社の主張とは平行線をたどる。一連のシェアハウス問題は多くの関係者を巻き込みながら、混乱の度合いを深めている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月6日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)


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