• TSRデータインサイト

突然の社長交代で注目される老舗出版社のベストセラーズ

 老舗出版社の(株)ベストセラーズ(TSR企業コード:292255152、豊島区)が注目を集めている。1月31日付で、オーナー社長の栗原武夫氏の辞任と同時に、取締役7名が辞任した。新社長に就任したのは経営コンサルタントで公認会計士の塚原浩和氏で、栗原前社長らオーナー家が持つベストセラーズの株式は新社長側へ売却された。社長と同時に税理士1名も役員に就任し、役員2名体制での経営がスタートして1カ月が経過した。


 KKベストセラーズで知られる同社は1967年の創業。江本孟紀氏の「プロ野球を10倍楽しく見る方法」(1982年)やワニ文庫、最近では細木数子氏の「六星占術シリーズ」、「本当は恐ろしいグリム童話」、長友佑都氏の「体幹トレーニング20」などジャンルにとらわれないヒット作を生んだ。
 100名以上の従業員を抱え、総合出版社として知名度も高い。だが、最近は東京商工リサーチ(TSR)の調査取材に業績を開示しない状況だった。1999年10月期は約135億円だった売上高も、出版不況の影響で最近は100億円を割り込んでいたようだ。ただ、豊島区の本社不動産は現在も無担保で温存され、同社の信用背景になってきた。
 1月31日まで社長を務めた栗原武夫氏は2013年に社長に就任し経営を引き継いだ。その後も父親で先代の栗原幹夫氏は会長、社長の実兄の栗原慎典氏も常務として経営に携わり栗原家によるオーナー経営が続いてきた。
 誰もが今後もオーナー経営が続くと思っていたところに、1月31日をもって新社長への株式譲渡が実行された。同社社員で組織される労働組合は、一連の役員交代・株主変更が突如発表され、「全従業員にとって青天の霹靂」と驚きをブログで綴っていた。
 塚原新社長は公認会計士の資格を持ち、2017年4月に経営代行、廃業支援、M&A仲介などを目的としたクロサポ・ハンズオン・コンサルティング合同会社(TSR企業コード:024442925、新宿区)を設立した。
 1月11日には同所に塚原新社長を代表とする持株会社、(株)ベストセラーズ・ホールディングス(TSR企業コード: 026958600)を設立したことも明らかになっている。

事業譲渡か清算か 再建の行方は?

 ベストセラーズに一連の経緯や今後の展開の取材を求めると、「(その件には)一切、応じていない」と拒んだ。しかし、「通常通りの営業、出版事業は続けている。今後の方策は検討中で、アナウンスはない。新社長は毎日出社し、社員と適宜コミュニケーションをとっている」(総務担当者)とコメントした。
 一方、塚原新社長は今後について、新スポンサーへの事業譲渡を前提に再建を模索していると言われる。関係先では、「ベストセラーズは4期連続の赤字を計上するなど経営悪化が深刻で、旧オーナーの方から塚原新社長に買収を打診した。今後、スポンサーが現れれば事業譲渡か、難しければ将来的には廃業も視野に入れる意向」との見方を示した。
 取引先への未払いはなく、資金繰り上の懸念も少ない。だが、会社の存続を新スポンサーに委ねるベストセラーズ。資産売却による清算も取り沙汰されるが、新社長がどのような方向性を打ち出すか、目が離せない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年3月2日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ