• TSRデータインサイト

東芝、2018年3月期の営業利益は「ゼロ」を予想

 2月14日、経営再建中の(株)東芝(TSR企業コード:350323097、東京都、東証2部)は、2018年3月期の連結業績予想を発表した。これまで売上高は4兆9,700億円、営業利益は4,300億円と予想していたが、それぞれ3兆9,000億円、ゼロへ修正した。
 株主に帰属する当期純利益(以下、当期純利益)は1,100億円の赤字から5,200億円の黒字へ修正した。期末時点での債務超過は解消し、上場は維持される見通し。

東芝会見

会見する平田専務(中央)

半導体メモリ事業が非継続事業に

 東芝の代表執行役の平田政善専務らが14日、都内で会見し明らかにした。
 東芝は、2017年9月に半導体メモリ子会社の東芝メモリ(株)(TSR企業コード:023477687、東京都)の株式を投資ファンドのBain Capital Private Equity, LP (DUNS: 612549915、アメリカ、以下べインキャピタル)を中心に組成される(株)Pangea(TSR企業コード:024937533、東京都)へ譲渡する契約を締結。その後、半導体メモリの生産を協業するWestern Digital Corporation(DUNS: 051983567、アメリカ)が株式の売却差し止めを求め係争に発展していたが、12月までに和解した。このため、半導体メモリ事業を非継続事業へ変更し、売上高で1兆900億円、営業利益で4,400億円のマイナスの影響が発生した。
 東芝メモリのPangeaへの売却は完了しておらず、中国の独占禁止法の審査が長引いている関係で2018年3月末までに売却できるかは不透明だ。ただ、平田専務は「米国会計基準の要件で12月31日以降、1年以内売却の蓋然性が高い場合は非継続事業となる」と述べた。
 当期純利益は従来予想の1,100億円の赤字から5,200億円の黒字へ修正した。2018年1月に、Westinghouse Electric Company LLC(DUNS:062661272、アメリカ)などWHグループ関連債権を売却したことで、1,700億円の売却益や2,400億円の税効果など、合計4,100億円の当期純利益の押し上げ要因が発生した。
 さらに、半導体メモリ売却の蓋然性が高まったことや2017年12月の6,000億円の増資で財務体質への懸念が解消。継続企業の前提に関する重要事象等も解消し、繰延税金資産1,100億円の計上で当期純利益の押し上げにつながった。
 これに伴い2018年3月末の連結株主資本は4,600億円程度のプラスとなり、債務超過は解消する見通し。

課題は利益率の改善

 2018年3月期で債務超過は解消の見通しだが、営業利益は「ゼロ」を予想し、半導体メモリなき東芝の収益性低下は避けられない。この点について平田専務は、「(2018年3月期は)構造改革に600億円を使う。また、テレビ・パソコンのロス(赤字)が継続している。こういったものは来年度以降は大きく減っていく。単純に1,000億円くらいの数字(営業黒字)になる」との見通しを示した上で、「1,000億円程度では株主が納得するような投資リターンにはならない。投資利益率10%程度を中期的には目指したい」と述べた。

主な質疑応答

 会見での主な質疑応答は以下の通り。
Q.半導体メモリの来期(2018年3月期)以降の計上方法は?
A.一般的にメモリ社(東芝メモリ)の純利益から優先配当を除いた分の40%(東芝のPangeaの持分)が入ると思うが、最終的にはベインキャピタルと東芝の関わり方のフォーメーションによる。持分法投資損益になるとは決まっていない。(東芝メモリが)連結化されることはない。持分法会社か一般会社になる。一般会社になる可能性は低いと思うが。

Q.今後のリスクは?フリーポート(液化天然ガス事業)については?その他、訴訟のリスクは?
A.LNG(液化天然ガス)は220万トン毎年売却をしていく。ポテンシャルの客は220万トン以上いる。正式契約はまだ結んでいない。中長期の契約はお互いのリスクになる。スポット市場でも売却できる量だ。販売が余ることはない。年間100億円強のリスクがあるのかなと思う。訴訟は、会計的には十分な引当を取っている。ただ、これからどういう訴訟が提起されるかは予想しがたい。

Q.平田さん(財務責任者)として現状認識と感想を。
A.株主資本がプラスになるであろうとのことで上場維持が見込める。ただ、財務的にはまだまだ弱い。NAND(東芝メモリ)が売却されれば、キャッシュも入ってくる。個人的にはまだまだ安心しているところではない。

Q.春闘のシーズンだが、ベースアップへの対応は?
A.組合から要求の提示はまだない。ただ、優秀な従業員とともに会社を発展させていくことが重要だと思う。

Q.原子力の位置付けは?半導体と並んで原子力を柱にしていた。今後、成長のために原子力をテコ入れ?それとも売却?
A.海外はプラントはやらないが機器の輸出は採算をみてやる。中期経営計画を詰めているところだ。

Q.追加の構造改革の予定は?人員削減は?
A.NANDの売却が見えていない中では弱いが、売却できればそれ相応に改善できる。社会インフラの収益性の強化が本質論だ。これができるように構造改革する。さらに踏み込んで行う。パソコンについては、世の中にとって非常に有益な事業で発展させていくが赤字は困る。

東芝会見

会見する東芝幹部
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年2月16日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。