• TSRデータインサイト

日産自動車、ユーザーや下請から対応に不満の声

 完成車の不正検査が発覚した日産自動車(株)(TSR企業コード:350103569、横浜市、東証1部、以下日産)。9月18日に国土交通省から指摘を受けた後も無資格の従業員が検査に関わっていた。10月19日、国内6工場の出荷停止を発表したが、コンプライアンス意識の希薄さは否定できない。すでに20日までに国内向け出荷を停止している。停止期間は2週間の見通しだが、不祥事の影響は日産にとどまらず日産の取引先、下請企業にも波及している。
 日産本社のある神奈川県内で、不正検査問題の影響を東京商工リサーチ(TSR)横浜支店情報部が取材した。


日産自動車グローバル本社

日産自動車グローバル本社

鈍い販売現場の対応

 日産は10月6日、116万台のリコールを国交省に届け出たが、販売店(ディーラー)の対応は鈍く、ユーザーには不満も出ている。神奈川県内に住む日産車ユーザーは「報道で不正検査問題は知っているが販売店からアナウンスがなく、自分からディーラーに問い合わせた」という。販売店の担当者は「対応について上から明確な指示がない」と話す。
 販売店も想定外の不祥事に混乱しており、ユーザーの不満、不安の解消には時間がかかりそうだ。

下請企業の動揺

 神奈川県内に本社を置く部品メーカーは、「出荷停止に伴う一時的な対応には耐えられるが、今後、販売台数に影響が出て生産計画などの見直しに繋がることが一番怖い」と不安を漏らす。
 現在、受注に影響は出ていないが、日頃から下請に品質面などで厳しい日産担当者が本件をまったく口にしないという。日産の「他人に厳しく、自分に甘い体質」とも受け取れる反応は理解しにくいようだ。

一方で冷静な声も

 資材販売業者は、TSRの取材に対し「無資格の従業員が検査に関わっていたことは問題だが、品質自体に問題はない。この点が周知されると新車販売への影響も最小限に留まるだろう」と楽観的な見方を示す。
 その上で、「これから迎える年末や年度末の時期に新車販売よりもリコール対応などに人員、時間を割けば、販売が計画を下回り生産調整などが起こることはやむを得ない」と話す。日産と取引する企業は、今後の受注減をある程度覚悟しているようだ。


 日産は今回の不祥事で各工場への指示系統を改め、ものづくりの責任者であるチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)による直接の管理体制を採るという。
 TSRの調査では、日産(グループ含む)と直接取引のある企業は神奈川県内に延べ898社ある。取引先への影響を最小限にとどめるには、早急な再発防止への取り組みが必要だ。
 今回の不祥事で、日産は自社製品への過信と甘えを露呈した。世界をリードする自動車メーカーとして、真摯な対応が問われている。


 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年10月25日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「マレリグループ」国内取引先調査 ~国内の取引先2,942社、影響懸念~

経営不振が続いたマレリグループの持株会社マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064、さいたま市北区)が6月11日(日本時間)、米国でチャプター11を申請した。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースからマレリグループの取引先数(重複除く)は国内2,942社あることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「労働者派遣業」倒産53件 人材派遣が人手不足で年間最多ペースの可能性

深刻な人手不足が続くなか、 「労働者派遣業」の倒産がハイペースをたどっている。2025年5月の「労働者派遣業」倒産は、3月に並び今年最多の15件(前年同月比400.0%増)発生した。

3

  • TSRデータインサイト

「日産ショック」とマレリ、部品サプライチェーンの再編含み

マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064)と主要子会社は6月11日(日本時間)、チャプター11(連邦破産法第11条)を申請した。東京商工リサーチのデータベースによると、マレリグループの国内取引先は全国2,942社に及ぶ。

4

  • TSRデータインサイト

事前調整に明け暮れたマレリHDが再度破たん ~支援プレイヤーの場外乱闘の果て~

マレリHDを巡っては、準則型私的整理の一種である事業再生ADRでの再建を目指したが、海外金融機関の反対でとん挫し、前年の産業競争力強化法の改正で規定された民事再生の一部手続きを省略する簡易再生へ移行した。

5

  • TSRデータインサイト

(株)ピーエスフードサービス 保育園への食材納品がストップ=納入業者の資金繰り悪化で

保育園などに食材を販売している(株)ピーエスフードサービス(TSRコード:352395583、さいたま市見沼区)は納品が困難になっていることを自社ホームページで公表した。

TOPへ