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「第2のてるみくらぶ」被害をどう防ぐ

 3月27日、東京地裁から破産開始決定を受けた海外旅行業者、(株)てるみくらぶ(TSR企業コード:296263001、渋谷区)の旅行債権者(被害者)の詳細が判明した。
 破産申立書に記載された旅行債権者(被害者)は3万6,046件、会社によると約9万人に及ぶという。消費者が被害者となったケースは、最近では2011年8月に経営破たんした「安愚楽(あぐら)牧場」(栃木県)の約7万3,000人が思い浮かぶ。てるみくらぶはそれをはるかに上回り、ネット予約の普及もあり被害者は全国に拡大していると思われる。

 被害額は10万円以上20万円未満が8,682件(構成比24.0%)と最多だった。「低価格ツアー」にばかり目を奪われがちだが、100万円以上の高額な旅行代金を前払いした被害者も750件(同2.0%)いた。4月23日には、「被害者の会」が都内で集会を開くなど、傍から見る以上に旅行を予定していた被害者への影響は深刻だ。
 被害者に弁済される弁済保証金は日本旅行業協会(JATA)の弁済業務保証金から支払われる。ただ、てるみくらぶの弁済保証額は1億2,000万円のため、弁済率は被害額99億2,352万円の1.2%に過ぎない。


  • てるみくらぶの「破産手続開始申立書(以下、破産申立書)」の債権者を独自集計した。
  • 破産申立書は、1契約で複数人が申し込んだ場合も1件として扱った。

(金額別)てるみくらぶ被害件数

旅行業者の種類

 旅行業者は、業務範囲で第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、旅行業者代理業に登録区分される。第1種旅行業は、国内・海外の募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行、他社募集型企画旅行代理など、すべての旅行を扱うことができる。てるみくらぶは第1種旅行業者だった。

 第2種旅行業は、海外旅行以外はすべての旅行を扱える。第3種旅行業は、海外・国内を問わず自社企画した旅行は募集できないが、出発地、目的地、帰着地などが事業者の営業所のある市町村区域内であれば国内の募集型企画旅行を実施できる。旅行業代理業は、他社の旅行商品を代理販売する。

 旅行業者の登録は、登録行政庁(第1種旅行業は観光庁、それ以外は都道府県)で新規、または5年ごとに更新手続きを行う。
 登録時には基準資産額の記載が求められ、「資産合計-負債合計-営業保証金または弁済業務保証金の額」、つまり純資産額が問われる。第1種旅行業者は3,000万円以上、第2種は700万以上、第3種は300万以上だ。同時に、登録や更新手続には貸借対照表や損益計算書などの決算書の提出も義務づけられている。

閲覧出来ない決算書

 4月7日、石井国土交通相は旅行代金の弁済制度見直しなどに言及した。今後は観光庁が有識者会議を開き、議論していく。

 今回のてるみくらぶの倒産で、旅行会社をどのようにチェックすれば良いか話題になっている。登録行政庁は、旅行会社の商号や所在地、代表者名、登録区分、登録日、協会加盟の有無など「旅行業者登録簿」に記載された内容照会には応じている。だが、業者の貸借対照表や損益計算書などの決算書は公開していない。

 建設業の「建設業許可申請書」、不動産業の「免許申請書」は申請すると第三者も決算書を閲覧できる。例えば、自宅を新築する時に個人でも事前に建築業者の経営内容の概略がわかり、契約するかどうかの判断材料にできる。

 「第2のてるみくらぶ」被害を防ぐ消費者保護の観点に立てば、旅行業者の財務内容も第三者がチェックできる制度拡充は必要だろう。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報 全国版」2017年4月25日号掲載の「てるみくらぶの倒産で浮かび上がった問題点」より再編加工)

てるみくらぶの本社ポスト(4月19日撮影)

てるみくらぶの本社ポスト(4月19日撮影)

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