2016年度 注目業種の倒産動向
出版業の倒産 前年度比2.8%増
2016年度の出版業の倒産は36件(前年度比2.8%増)で、年度では2年ぶりに前年を上回った。業界の調査研究機関である出版科学研究所「2016年の出版物発行・販売概況」によれば、書籍と雑誌を合わせた推定販売金額は前年比3.4%減の1兆4,709億円で、12年連続で前年を下回った。市場縮小に歯止めがかからない中で、中小の出版業者は厳しい経営を強いられている。
老人福祉・介護事業の倒産 調査開始以来で最多の107件
2016年度の老人福祉・介護事業の倒産は、107件(前年度比67.1%増)で、2000年度に調査を開始以来、最多を記録した。要因としては、(1)同業他社との競争激化、(2)介護報酬の実質マイナス改定による収益悪化、(3)介護職員不足で離職を防ぐための人件費上昇、などが挙げられる。介護業界の人手不足は深刻で、好況期では賃金の高い他業種へ人材が流出するなど、景気と逆向きの傾向がみられるため人材流動への歯止め策が急がれる。
広告制作業の倒産 前年度比26.4%増
2016年度の広告制作業(広告業は含まず)の倒産は43件(前年度比26.4%増)で、年度では3年ぶりに前年件数を上回った。原因別では販売不振が38件(前年度比52.0%増、前年度25件)と前年度より1.5倍に増えた。広告費の増減は景気循環の上昇、低下局面と連動しているといわれるが、媒体別ではインターネット広告が伸びる一方、雑誌、新聞などの低下が目立っている。景気が緩やかな回復基調をたどるなかで、紙媒体が主体の広告制作会社の経営環境は厳しさを増している。
学習塾の倒産 過去20年間で2番目に多い34件
2016年度の学習塾の倒産は34件(前年度比61.9%増)で、年度では2年ぶりに前年を上回った。過去20年間では2009年度(35件)に次いで、2番目に多かった。学習塾は「ゆとり教育」による学力低下の不安等を背景に拡大したが、人口減少に歯止めがかからず、最近は市場も縮小に転じている。このため進学実績や教育方法など独自の付加価値アップ策が求められ、同業他社との生徒獲得競争はさらに激化が見込まれる。