東証1部・2部上場メーカー130社 2017年3月期決算「想定為替レート」調査
東証1部、2部上場のメーカー130社の過半数が2017年3月期決算の期初想定為替レートを1ドル=110円に設定したことがわかった。今年2月の日銀によるマイナス金利の導入以降、為替相場は円高への振れが強まりをみせている。これに伴い上場企業の想定為替レートは、1年前より円高に設定するケースが目立つ。想定以上に円高が進めば業績を下押しする懸念が出てきた。
- ※本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー(3月本決算企業)のうち、2017年3月期決算の業績見通しで想定為替レートが判明した130社を集計した。資料は2016年3月期の決算短信、業績予想等に基づく。
期初の想定為替レート、1ドル=110円が過半数
東京証券取引所1部、2部に上場するメーカー130社のうち、2017年3月期決算(本決算)の業績見通しにおける、期初の対ドル想定レートでは1ドル=110円が66社(構成比50.7%)で最も多かった。次いで、105円が30社、108円と115円が各10社と続く。想定レートの最安値は120円。
1年前とのレート比較、1ドル=115円から110円に変更が42社
1年前の期初想定為替レートとの比較では、想定レートを「115円から110円」に変更した企業が42社(構成比32.3%)で最も多かった。次いで、「115円から105円」に変更が18社、「120円から110円」に変更が10社、「110円と変わらず」と「115円から108円」に変更および「120円から115円」に変更がそれぞれ6社と続く。
輸出企業では、1円の為替変動でも業績への影響が大きい。こうしたなかで、1年前より円高に想定する企業が多いことは、次期の業績見通しが厳しいことを物語った。
円安と円高の間で揺れ動く為替相場
2016年のドル円相場は、年初は1ドル=120円付近で始まったが、1月20日の外国為替市場で約1年ぶりに一時1ドル=115円台を付け、円高ドル安が進行した。さらに日銀がマイナス金利を導入した2月以降は1ドル=110円割れをうかがう展開になった。5月になると月初に1ドル=105円台をつけるなど一段と円高が進んだが、一転して5月末の東京外国為替市場では約1か月ぶりの円安水準となる1ドル=111円台で取引されるなど、為替相場は円安と円高の間を大きく揺れ動いた。
対ユーロ想定為替レート、1ユーロ=125円が最多
上場メーカー130社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した88社では、2017年3月期決算の業績見通しで期初想定レートの最多が、1ユーロ=125円の39社(構成比44.3%)だった。次いで120円が34社、122円が5社と続く。想定レートの最安値は135円だった。
東証上場の主なメーカーの期初想定レートは、1ドル=110円が最も多かった。1年前は1ドル=115円が最多だったことから、想定為替レートは円高に見直しされた。
これまで第2次安倍内閣発足以来、アベノミクス効果による円安進行で、輸出企業には追い風となり軒並み好業績に沸いてきた。しかし、2016年は年初から為替相場が円高に振れ、経営環境に変化が表れた。輸出企業にとって想定為替レートの円高方向の設定は業績低下に直結し、さらに円高が進めば業績の下振れリスクが高まる。このように景気をけん引してきた輸出企業の業績に陰りが出れば、その影響は関連する中小企業の業績にも波及するため、今後の為替相場の動向から目が離せなくなった。