2015年9月中間決算 上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査
2015年9月中間決算を発表した上場企業2,449社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)が付いた企業は22社だった。前年度本決算(2015年3月期、27社)より5社減少、2014年9月期中間決算(28社)より6社減少した。
また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載される「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は37社で、前年度本決算(42社)より5社減少した。GC注記と重要事象の合計数は2015年3月期決算は69社に達し、リーマン・ショック直後の2009年3月期以来、6年ぶりに増加に転じた。今中間期は合計59社と再び減少したものの、GC注記企業が上場廃止に至るケースも多く、好業績が続く大手とは対照的に、業績改善が困難な新興・中堅を中心とした上場企業の二極化が鮮明となった。
- ※本調査は、3月期決算で東証から新興市場までの全証券取引所に株式上場する企業を対象に、2015年9月中間期決算短信で「GC注記」及び「重要事象」が記載された企業の内容、業種を分析した。(12月7日までの決算短信発表分)
GC注記企業 1社倒産 4社が上場廃止
2015年9月中間決算でGC注記が付いた企業は22社で、前年度本決算(27社)から5社減少した。前年度本決算に比べてGC注記企業の総数は減少した。しかし、業績回復で注記が解消した企業はゼロで、第一中央汽船(株)(元東証1部、東京都)が9月29日、東京地裁に民事再生法の適用を申請して倒産。本業面での赤字が続いていたグローバルアジアホールディングス(株)(元JASDAQ、東京都)、(株)メッツ(元マザーズ、東京都)、スターホールディングス(株)(元JASDAQ、福岡県)、(株)オプトロム(元名証セ、宮城県)の4社が上場廃止となったほか、(株)SJI(JASDAQ、東京都)は決算期が変更したため決算発表には至っていない。
前年度本決算になかったが、今中間期で新たにGC注記が付いたのは首都圏中心に介護事業を展開する(株)やまねメディカル(JASDAQ、東京都)の1社だけだった。
重要事象の記載があった上場企業は37社で、前年度本決算(42社)より5社減少した。前年度本決算で記載がなかったが、当中間決算で記載があったのは5社だった。前年度本決算に引き続き大幅な赤字決算を計上し、再建の行方が注目されるシャープ(株)(東証1部、大阪府)のほか、介護事業子会社の売却を発表し、介護事業からの撤退を決議したワタミ(株)(東証1部、東京都)も営業利益段階から赤字を計上。「取引銀行からの金融支援が必要な状況」として引き続き、重要事象が記載された。
GC注記企業 本業不振が8割以上
GC注記22社のうち、19社(構成比86.3%)が「重要・継続的な売上減」、「損失計上」、「営業キャッシュ・フローのマイナス」など、本業不振を理由としている。次いで、「資金繰り懸念・資金調達難」4社(同18.1%)、「再建計画遂行中・その他」3社(同13.6%)、「金融機関や取引先などへの支払条件変更・遅延」2社(同9.0%)と続く。売上減や赤字計上など本業悪化を理由としたものが8割以上を占め、業績不振の上場企業に継続してGC注記が付くケースが中心だった。債務超過企業はやまねメディカルの1社(同4.5%)。債務超過は1年内に解消できなければ原則、上場廃止となり、業績回復による利益確保か新たな資本増強策を求められる。
- ※注記理由は重複記載のため構成比合計は100%を超える。
業種別では製造業が約5割 新興市場と中堅規模が中心
GC注記企業22社の業種別では、製造業が11社(構成比50.0%)と半分を占めた。中堅規模が多く大手メーカーの下請け企業が中心。上場区分別では、新興市場が11社(同50.0%)を占めた。東証2部8社(同36.3%)、名証2部2社(同9.0%)で、東証1部はクボテック(株)(大阪府)の1社のみ。業績悪化から浮上できない新興・中堅企業と大手との格差がはっきりした。
まとめ
上場企業の倒産はリーマン・ショック時の2008年の33社をピークに減少に転じ、2014年は1990年以来、24年ぶりに発生ゼロだった。倒産の減少に伴いGC注記と重要事象の記載企業の合計は減少している。ただ、2015年は11月末で3社の上場企業が倒産しており、前年度本決算ではGC注記企業と重要事象の合計は6年ぶりに増加に転じている。
当中間決算ではGC注記・重要事象ともに社数は減少したが、上場廃止で市場から退場を余儀なくされたケースが多かったことも要因のひとつにあげられる。上場企業でも大手と中堅以下の格差が拡大しており、引き続きGC注記や重要事象の記載企業の動向が注目される。