2015年3月期決算「上場企業2,305社の平均年間給与」調査
上場企業2,305社の2015年3月期決算の平均年間給与は616万5,000円(前年比10万9,000円増、1.8%増)だった。上場企業の平均年間給与は4年連続で増加し、2011年3月期より26万円上昇した。前年からの伸び率も過去4年で最大となり、上場企業の給与アップが鮮明となった。
業種別では10業種中、電気・ガス業を除く9業種で増加。公共事業の前倒し発注や東京五輪の需要を見越した再開発など、活況を呈する建設業が前年比3.3%増と増加率が最も高かった。一方、原発停止の影響等を受けて電気・ガス業の平均年間給与は下げ止まらず、同0.5%減と唯一減少した。平均給与額のトップ50社では、テレビ局などメディア関連10社を含む運輸・情報通信業が15社で最多。以下、製造業(10社)、金融・保険業(9社)、大手商社主体の卸売業(7社)と続き、上位4業種(41社)で8割以上を占めた。
景気拡大による好業績と、賃金アップを求める政府要請を背景にベースアップに踏み切る上場企業が相次ぎ、年間平均給与は順調な伸びをみせた。今後は給与水準の上昇が中小企業にも波及するか注目が集まる。一方、人手不足による人件費高騰が企業収益の新たなコストアップ要因として浮上しつつあり、上場企業も難しいかじ取りを迫られることになりそうだ。
- ※本調査は、2015年3月期決算の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書から平均年間給与を抽出。2011年3月期決算から比較可能な企業を対象とし、変則決算企業は除く。業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。
「増加企業」は1,588社、前年より142社増加
上場企業2,305社のうち、平均年間給与が前年より増えたのは1,588社(構成比68.8%、前年1,446社)、減少が699社(同30.3%、同849社)、横ばいが18社(同0.7%、同10社)だった。
平均年間給与が「増加」した企業は前年より142社増加し、構成比は約7割に達した。このうち2012年3月期以降、4年連続で平均年間給与が増えたのは327社(同14.1%)だった。一方、平均年間給与が前年より減少した699社のうち、368社(構成比52.6%)は従業員を増加させた。人材採用を積極的に行ったことで、平均年間給与が下がったともみることができる。
増減率 0~10%未満の増加が6割を超える
上場企業2,305社の平均年間給与の増減率分布では、増加率0%以上10.0%未満が1,481社(構成比64.2%、前年1,346社)で最多。次いで、減少率0%以上10%未満が665社(同28.8%、同788社)で、全体の93.1%が前年比±10%未満に収まった。ただし、増加率10%以上が125社(同5.4%)に対し減少率10%以上は34社(同1.4%)にとどまり、業績好転に伴い平均年間給与を大幅に増加させた企業が増え、全体を牽引した。
建設業の伸び率が最大、電気・ガス業のみ減少
業種別で平均年間給与が最も高かったのは水産・農林・鉱業の716万7,000円で、10業種中唯一700万円を上回った。母数が10社と少ない事もあるが、10社全てが前年を上回り特に資源関連企業の高水準ぶりが目立つ。最も低かったのは小売業の503万4,000円で、業種別では5年連続で最低水準だった。ただし、小売業の平均年間給与は4年連続で増加し2011年3月期以降、初めて500万円を突破するなど、一定の明るさもみられた。
増減率では、建設業が前年より3.3%増と最も高かった。受注好調で好決算が相次いだ上場ゼネコンなどが牽引した。一方、電気・ガス業が前年比0.5%減と唯一、前年を下回った。安定業種の代表格でもあった電気・ガス業は4年連続で前年を下回り、平均年間給与は2011年3月期と比べて過去4年で80万8,000円減少した。電気・ガス料金の値上げに踏み切る一方で、リストラに着手し従業員の給与削減にも継続して取り組む企業が目立った。
1,000万円以上が47社、500~700万円に半数以上が集中
平均年間給与の上位は、トップが産業機器大手のキーエンスの1,648万5,000円で、前年(1,440万1,000円、6位)から大幅に増加した。2位が証券最大手の野村証券の持株会社、野村ホールディングスで1,579万3,000円。3位が関西地盤の民放テレビ局、朝日放送の1,518万5,000円と続く。例年同様にテレビ局、総合商社、大手金融機関などが上位50社にランクインした。上位50社のうち、前年も50位以内にランクインした企業は45社と9割にのぼり、高水準給与企業の常連化が特徴的だった。
前年比で増加率が最も高かったのは、2014年6月に新経営体制となり、eコマース事業などを手がけるパスの43.2%増(471万3,000円→675万円)だった。また、2位には半導体大手のルネサスエレクトロ二クスが40.6%増(617万2,000円→868万2,000円)でランクインした。同社は合理化、企業再編の一環で一部の生産工場を本体から切り離した事や、ここ数年続けてきた給与カットを緩和した事などが寄与し、従業員の年間平均給与の底上げに繋がった。
平均年間給与の金額別では、1,000万円以上は47社(構成比2.0%)だった。最も多かったのは500万円以上600万円未満で692社(同30.0%)にのぼり、500万円以上700万円未満のレンジに1,307社(同56.7%)と、半数以上が集中した。