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2015年上半期「希望・早期退職者募集状況」調査

 2015年上半期に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業数は、前年同期比3件減の18社だった。アベノミクス効果による円安の進行に伴い、輸出企業を中心に企業業績が改善し、希望・早期退職募集などの人員削減に動いた上場企業は調査を開始した2000年以降で最少ペースで推移している。


  • 本調査は、2015年1月以降、希望・早期退職者募集の実施を情報開示、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出した。希望・早期退職者の募集予定を発表したものの実施に至らない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除いた。資料は、原則として『会社情報に関する適時開示資料』(2015年6月30日公表分まで)に基づく。

調査概要

希望・早期退職者募集実施の上場企業は上半期18社

 2015年上半期(1-6月)に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は18社(前年同期21社)で前年水準を下回り推移している。しかし、募集人数はシャープの大規模な募集が影響して6,598人(同3,395人)にのぼっている。

募集および応募人数100人以上は9社

 募集または応募人数の最多は、シャープ(グループ会社を含む)の募集3,500人。次いで、横河電機(グループ会社を含む)の応募1,105人、サニックスの募集600人、電通の募集300人、タカギセイコーの募集230人、丸順の募集200人と続く。募集または応募人数が100人以上は9社(前年同期9社)だった。

業種別 最多は電気機器の4社

 業種別で最も多かったのは、シャープ、ソニーなど電気機器の4社だった。次いで、情報通信業の3社と続く。このほか、鶏肉問題や異物混入などが経営に影響した日本マクドナルドホールディングスが早期退職者を募集するほか、大手広告代理店の電通が業績は好調でも従業員の転身を後押しする形で早期退職者募集に踏み切った。

まとめ

 2015年上半期に希望・早期退職者を募集した上場企業数は、調査開始で最少だった2014年を下回り、人員削減の動きは沈静化している。
 ただし、工業計器最大手の横河電機が主力の石油化学プラント向け機器の国内市場縮小をにらんで希望退職者募集を実施したように、業績が好調な上場企業であっても事業の市場縮小やグローバルな競争に適応するため、事業規模の適正化や経営資源の効率化の一環として人員削減に踏み切る企業が今後出てくる可能性が高いことから、2015年下半期の動向が注目される。

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