• TSRデータインサイト

2016年3月期決算「想定為替レート」調査

 東証1部、2部上場のメーカー143社の約6割が2016年3月期決算の期初想定為替レートを1ドル=115円に設定したことがわかった。6月2日の東京外国為替市場の円相場は、2002年12月以来12年半ぶりに一時、1ドル=125円台をつけるなど、実勢レートが想定為替レートよりも円安水準で推移し、輸出企業を中心に業績の上振れが期待される。

  • 本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー(3月本決算企業)のうち、2016年3月期決算の業績見通しで想定為替レートが判明した143社を集計した。資料は2015年3月期の決算短信、業績予想等に基づく。

期初の想定為替レート、1ドル=115円が約6割

 東京証券取引所1部、2部に上場するメーカー143社のうち、2016年3月期決算(本決算)の業績見通しで、期初の対ドル想定レートでは1ドル=115円が83社(構成比58.0%)と最も多かった。次いで、120円が24社、118円が13社、110円が11社、117円が7社と続く。想定レートの最安値は125円だった。

期初ドル想定為替レート分布

1年前とのレート比較、1ドル=100円から115円に変更が65社

 1年前の期初想定為替レートと比較すると、想定レートを「100円から115円」に変更した企業が65社(構成比45.4%)で最も多かった。次いで、「100円から120円」に変更が16社、「100円から110円」に変更が8社、「98円から115円」に変更が6社と続く。
輸出企業では、1円の為替変動でも業績への影響が大きいなかで、1年前より15円も円安に想定する企業が最も多いことは、業績面への恩恵が大きいことを裏打ちした。

前年同期変更状況

円安が加速

 2015年の円相場は、1ドル=120円台で始まったが、4月は119円台での一進一退が続いた。5月以降は、米国の一部経済指標の改善や年内利上げ観測を背景に、一段と円安が加速した。
しかし、依然として米国景気の先行きに不透明感が残り、利上げの先送り観測が再燃した場合は、一時的に円高方向に揺れ戻す可能性もある。

対ユーロ想定為替レート、1ユーロ=125円と135円が最多

 上場メーカー143社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した97社では、2016年3月期決算の業績見通しで期初想定レートの最多が、1ユーロ=125円と130円の各40社(構成比41.2%)だった。次いで135円が4社、128円が3社と続く。想定レートの最安値は143円だった。

期初ユーロ想定為替レート分布

 東証上場の主なメーカーの期初想定レートは、1ドル=115円が最も多かった。3年前(2013年3月期の業績見通し)の最多は1ドル=80円で、当時より想定為替レートは35円の円安に振れた。アベノミクス効果による円安の進行で、輸出企業には追い風となり軒並み好業績に沸いている。
この一方で、円安が進行すると燃料や食料品など輸入物価の上昇に影響する。過度の円安は原材料価格の上昇につながり、国内の製造現場や個人消費への悪影響が懸念されている。
輸出産業を中心に円安メリットだけがクローズアップされるが、円安のデメリットも今後、様々な業種に波及してくるとみられる。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ