• TSRデータインサイト

「円安」関連倒産 2014年度は前年度比42.0%増、41都道府県に広がる

 外国為替市場では、日銀の追加金融緩和の決定以降は円安に拍車がかかり、一時1ドル=121円台まで円安が進んだ。2015年に入って急速な進行は見られないものの円安基調は続いている。
円安は輸出企業の収益を押し上げる要因になる一方で、海外からの輸入に頼るエネルギー、資源、食料品など幅広い分野の物価を押し上げ、中小企業の体力を消耗させる恐れがある。
3月の「円安」関連倒産は17件(前年同月15件)だった。原油価格下落による燃料、石油化学製品の値下がり、製鉄原料下落による鉄鋼製品の価格低下など経営環境が変化するなかで、3カ月ぶりに前年同月を上回った。

円安関連倒産月次推移

2014年度は260件 前年度より4割増

 2014年度(2014年4月-2015年3月)の「円安」関連倒産は260件(前年度比42.0%増、前年度183件)に達し、前年度より4割増になった。四半期別では、2014年4-6月が前年同期比132.3%増(34→79件)、7-9月が同108.8%増(34→71件)と倍増で推移し、年度前半の円相場の急激な為替変動が中小企業の経営を直撃したことを示した。
こうしたなか、原油価格の下落などを背景に10-12月は同34.0%増(50→67件)と増加幅が縮小し、2015年1-3月は同33.8%減(65→43件)と落ち着いた動きに変わっている。ただし、今後の円相場の推移次第では、倒産が増加する懸念がある。

年度地域別 41都道府県で関連倒産が発生

 2014年度の地域別では、長野、京都、徳島、高知、大分、沖縄を除く41都道府県で「円安」関連倒産が発生した。地区別では、関東94件を筆頭に、中部51件、近畿29件、九州24件、東北15件、北陸13件、北海道12件、中国と四国が各11件と全国に広がっている。
産業別では、最多が運輸業の85件(前年度比7.5%増、前年度79件)。人件費上昇などで体力が弱体化したところに年度前半の燃料価格の高止まりが影響した。次いで、製造業が56件(同21.7%増、同46件)、卸売業54件(同157.1%増、同21件)、サービス業他23件、小売業18件と続く。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ