• TSRデータインサイト

2014年「倒産企業の平均寿命」調査

 2014年の倒産企業の平均寿命は23.5年。前年より0.1年短縮し、4年ぶりに平均寿命が短くなった。2014年に倒産した業歴30年以上の老舗企業は2,647件で、前年(3,051件)より404件減少した。倒産件数(8,642件)に占める割合は30.6%と、前年より1.0ポイント低下し、4年ぶりに構成比が前年を下回った。一方、業歴10年未満は2,062件(前年2,242件)で、構成比は23.8%と3年ぶりに上昇した。
都道府県別の老舗企業の倒産構成比トップは、徳島県の50.0%だった。前年から19.7ポイント上昇し、初めてトップとなった。次いで、新潟県(構成比48.8%)、山梨県(同48.0%)、長崎県(同47.6%)、長野県(同47.3%)と続く。構成比50%以上は徳島県のみ(前年4県)、同40%以上は18県(同12県)だった。地区別では、四国(同44.3%)が前年より5.4ポイント上昇し、2012年以来、2年ぶりにトップとなった。
2014年の企業倒産件数は、6年連続で前年を下回り、24年ぶりに1万件を割った。しかし、円安の進行、原材料・仕入価格の高騰、人手不足など中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい。このため、業歴10年未満で事業を断念せざるを得なくなるケースも見られ、平均寿命を押し下げる格好となった。


  • 本調査は、東京商工リサーチの集計した2014年の企業倒産、9,731件(負債1,000万円以上)のうち、詳細な創業年月が判明しない個人企業を除く、8,642件(構成比88.8%)を対象に分析した。本文では業歴30年以上を『老舗』企業と定義した。業歴対象は、法人企業が設立年月、個人企業は創業年月。

業歴別 企業倒産件数構成比推移

老舗企業の倒産構成比30.6%、4年ぶりに低下

 2014年に倒産した企業で業歴が判明した8,642件のうち、業歴30年以上の老舗企業は2,647件(構成比30.6%)だった。構成比は前年より1.0ポイント低下し、2010年以来、4年ぶりに前年を下回った。
倒産件数に占める老舗企業の構成比が依然として30%台が続いている背景には、倒産した老舗企業はバブル経済以前に設立されたことが1つの要因にあげられる。バブル期に不動産や証券、設備などに投資した企業も多く、バブル崩壊で多額の借入金が財務を圧迫し、経営改善の遅れから業績低迷が続き、近年も業績を回復できないまま倒産に至っているとみられる。
一方、業歴10年未満は2,062件(構成比23.8%)で、前年より0.6ポイント上昇し、構成比はここ15年間で2000年に次ぐ高さとなった。

平均寿命は4年ぶりに短縮

 2014年の倒産企業の平均寿命は23.5年で、内訳は法人(8,276件)の平均寿命は23.2年、個人企業(366件)が30.0年だった。前年に比べ0.1年短くなり、4年ぶりに平均寿命は前年を下回った。中小企業金融円滑化法やセーフティネット保証(5号)などの政策支援で中小企業の資金繰りは一時的に緩和し、倒産が抑制されている。2009年12月に中小企業金融円滑化法が施行されて、以降は倒産企業の平均寿命は3年連続で延び、政策効果が企業の延命となって表れた。しかし、2014年は円安による原材料・仕入価格の高騰で、業歴10年未満の企業で事業を断念せざるを得なくなったケースもあり、平均寿命を押し下げた。

倒産企業の平均寿命推移

産業別 製造業倒産では老舗企業が約5割

 2014年に倒産した企業のうち老舗企業の構成比を産業別でみると、製造業が46.3%(前年45.2%)で最も高かった。次いで、農・林・漁・鉱業が41.3%(同30.2%)、卸売業37.9%(同37.0%)、不動産業34.3%(同33.8%)、運輸業32.3%(同32.9%)、建設業30.1%(同32.1%)の順だった。
一方、業歴10年未満の構成比は、金融・保険業が41.8%(前年56.5%)で最も高かった。次いで、サービス業他35.7%(同34.3%)、情報通信業33.3%(同34.7%)の順で、上位3産業が30.0%以上だった。老舗企業の構成比で最高だった製造業は12.4%(同12.1%)にとどまり、業歴10年未満の構成比では最も低かった。業歴10年未満で構成比がトップだった金融・保険業は、日本振興銀行が主導する中小企業振興ネットワークに加盟していた企業の倒産が多かった。また、リーマン・ショックの影響で深刻な業績不振から脱却できなかった投資(資産)運用業なども散見された。

地区別 老舗企業倒産の構成比トップは2年ぶりに四国

 2014年の地区別の老舗企業倒産の構成比は、トップは四国で構成比44.3%(前年38.9%)で、2012年以来、2年ぶりのトップ。以下、北陸42.7%(同37.4%)、中国42.1%(同42.9%)の順。構成比が最も低かったのは、関東の27.4%(同28.0%)だった。
四国は、都道府県別の老舗企業倒産の構成比が、上位10位内に徳島県(1位、構成比50.0%)、高知県(7位、同46.5%)の2県が入り、香川県を除く3県で構成比が前年を上回った。一方、構成比が最も低い関東は下位10位に4都県(東京都、神奈川県、埼玉県、群馬県)が入った。

都道府県別 老舗企業倒産の構成比トップは徳島県

 2014年の都道府県別の老舗企業倒産の構成比は、徳島県が50.0%(前年30.3%、36位)と、唯一50.0%を上回った。農・林・漁・鉱業(構成比100.0%)、卸売業(同83.3%)、建設業(同62.5%)の構成比の高さが際立った。次いで、新潟県が48.8%(同60.0%、1位)、山梨県が48.0%(同32.5%、31位)、長崎県が47.6%(同44.4%、10位)、長野県が47.3%(同42.8%、12位)と続く。全国平均30.6%以上は32府県(同31.6%、31都道県)だった。沖縄県は17.9%(同17.9%、47位)で、15年以上連続で老舗企業倒産の構成比が最も低かった。一方、業歴10年未満の構成比が最も高かったのは宮城県の45.1%(同27.5%)で、(株)DIOジャパンの関連会社が2件、東日本大震災関連倒産が6件発生した。
老舗企業の構成比が前年より上昇したのは18県(前年25道府県)。徳島県が前年比19.7ポイント上昇と最も高かった。次いで、山梨県が同15.5ポイント上昇、島根県が同14.3ポイント上昇、石川県が同8.3ポイント上昇、鹿児島県が同7.6ポイント上昇と続き、全体では西日本(13県)での上昇が目立った。


 2014年の老舗企業の負債上位をみると、エヌ・エス・アール(株)や(株)インターナショナルイーシー、(株)笠屋町不動産など、バブル期に不動産やゴルフ場開発を行い、バブル崩壊で行き詰まり、その債務整理が一巡したことで倒産したケースが目立つ。安定した財務基盤やブランド力、他社との差別化が確立できない老舗企業は、業歴の年数だけで生き残ることが難しい。常に新たな発想、柔軟な経営方針など、新興企業の利点を取り入れることも必要となっている。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

次世代電池のAPB、経営騒動の舞台裏 ~ APB・大島麿礼社長 単独インタビュー ~

次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発や製造を手がける技術系ベンチャーのAPB(株)が注目を集めている。大島麿礼社長が東京商工リサーチの単独取材に応じた(取材日は4月10日)。

3

  • TSRデータインサイト

コロナ禍で急拡大の「マッチングアプリ」市場 新規参入のテンポ鈍化、“安全“投資で差別化

20代、30代の若者を中心に、恋活や婚活、恋愛の真面目な出会いを求めるマッチングアプリの利用が広がっている。マッチングアプリの運営会社はコロナ禍を境に急増し、社数は6年間で5.6倍になった。2019年3月末の5社から、2025年3月末は28社と6年間で大幅に増えた。

4

  • TSRデータインサイト

丸住製紙(株)~ 倒産した地元の“名門”製紙会社の微妙な立ち位置 ~

2月28日に新聞用紙の国内4位の丸住製紙(株)(四国中央市)と関連2社が東京地裁に民事再生法の適用を申請してから2週間が経過した。負債総額は約590億円、債権者数は1,000名以上に及ぶ。愛媛県では過去2番目の大型倒産で、地元の取引先や雇用への影響が懸念されている。

5

  • TSRデータインサイト

介護離職者 休業や休暇制度の未利用54.7% 規模で格差、「改正育児・介護休業法」の周知と理解が重要

団塊世代が75歳以上になり、介護離職問題が深刻さが増している。ことし4月、改正育児・介護休業法が施行されたが、事業規模で意識の違いが大きいことがわかった。

TOPへ