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2014年上半期「上場企業の不動産取得」調査 前年同期より1.5倍で推移

 アベノミクス効果による景気の先行き期待から、企業が事業拡大に備え不動産を取得する傾向が強まっている。2014年上半期に、国内不動産取得や工場・社屋の新設などを公表した上場企業は27社にのぼり、前年同期より1.5倍のペースで推移している。こうした上場企業の不動産取得の動きは、前向きな設備投資マインドの改善ぶりを反映した。

  • 本調査は、上場企業(不動産投資法人を除く)を対象に、2014年上半期に国内不動産(固定資産)の取得(建物の新設等を含む)を決議、公表した企業を調べた。資料は『会社情報に関する適時開示資料』に基づく。

上場企業不動産取得状況

2014年上半期27社 前年同期より1.5倍

 会社情報の適時開示ベースで2014年上半期に国内不動産(固定資産)の取得、工場や社屋などの建設を決議、公表した上場企業数は27社(前年同期比50.0%増、前年同期18件)にのぼった。このペースで推移すると、2008年の調査開始以来で最多を更新する可能性がある。
ちなみに過去の年間推移は、2008年の56社をピークに、09年28社、10年41社、11年36社、12年22社と減少傾向をたどったが、2013年は56社と一気に増加に転じた。2014年はその流れを引き継ぎ増勢をみせている。

取得した土地総面積 公表分で10万5,906平方メートル

 2014年上半期の不動産取得では、取得した土地の面積を公表した15社で、合計10万5,906平方メートルにのぼった。非公表の会社もあり単純比較できないが、参考に前年同期が18社で10万726平方メートルだったのと比べて前年同期を上回り、設備投資の活性化を映し出した。

取得土地面積トップ 物流基地用地を取得の大東港運

 公表取得土地面積のトップは、コンテナを一時保管するためのコンテナ・インランドデポ(内陸通関物流基地)を建設するため、主要荷主の物流拠点隣接地を取得した大東港運の2万9,270平方メートル。
次いで、首都圏でのオフィスビル賃貸事業の拡充などのため東京都府中市にあるオフィスビルの信託受益権を取得した京阪神ビルディングの1万8,460平方メートル。生産力増強のため群馬県に新工場用地を取得した第一化成の1万2,504平方メートルと続く。

取得(投資)総額 25社合計で2,091億円

 取得(投資)額の総額は、公表した25社合計で2,091億200万円にのぼった。なお参考に前年同期が公表18社で1,547億7,300万円だった。
投資額のトップは、東武鉄道の1,030億円。東武のターミナル駅と百貨店が共存する池袋・船橋地区の拠点性向上を図るため、店舗改装などの店舗運営における自由度を高める必要から、池袋駅ビルと船橋駅ビルの信託受益権を特別目的会社から取得した。
次いで、トーモクの150億円。関西地区における段ボール需要に対する生産、物流能力の逼迫を解消するため、大阪工場に次ぐ2つ目の生産拠点として兵庫県神戸市に新工場を建設する。
第一工業製薬は、グローバル化が進む中、保有技術の応用や、新規事業のための設備投資が必要と判断し、約120億円を投じて三重県四日市第3コンビナート内に新工場を建設する。
髙島屋は、地代家賃の圧縮を図るため、立川タカシマヤが入居する「立川TMビル」の土地・建物の共有持分(信託受益権)を119億9,000万円で追加取得した。

取得理由 「事業拡大」型が最多

 取得理由では、新工場や新社屋の用地取得や建設、新規事業進出などの「事業拡大」型が15社で最も多かった。次いで、賃貸用ビル、土地建物などを取得する「事業用収益物件の取得」型が10社、賃貸物件を自社所有にするなどの「経営安定」型が2社だった。

業種別 不動産が最多の7社

 業種別社数では、不動産が7社で最も多かった。次いで、サービス業4社、卸売・化学・小売・情報通信が各2社と続く。
取得(投資)金額では、最多が東武鉄道の取得金額が影響した陸運の1,030億円。次に不動産の286億7,200万円と続き、銀行貸出の業種別で、不動産業向け貸出が堅調に推移していることを反映した。このほか、サービス業が178億8,300万円、小売が161億8,100万円、パルプ・紙が150億円、化学が135億円と続く。

 2014年上半期の上場企業の不動産取得は、前年同期を上回って推移している。背景には、アベノミクス効果による、景気の先行き期待の高まりが挙げられる。
これまで公共事業が景気をけん引してきたが、事業拡大に備え、前向きな設備投資に動く企業が増えることは、民間主導による景気拡大への転換が期待できる。
ただし、人手不足など新たな経営課題も浮上してきて、今後も腰折れなく、旺盛な設備投資を持続できるかは予断を許さない。

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