2013年「主な上場企業 希望・早期退職者募集状況」
2013年に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業数は、2年ぶりに前年を下回った。アベノミクスによる円安・株高で景気回復への期待が高まり、人員削減の動きが一服した格好だ。ただ、500人以上の大型募集が5社あり、総募集人数は2年連続で1万人を突破した。
- ※本調査は、2013年1月以降、希望・早期退職者募集の実施を情報開示、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出した。希望・早期退職者の募集予定を発表したものの実施に至らない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除いた。資料は、原則として『会社情報に関する適時開示資料』(2014年1月10日公表分まで)に基づく。
希望・早期退職者募集実施の上場企業は54社
2013年に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は54社で、2年ぶりに前年(63社)を下回った。2013年は年初の1月だけで20社が公表し、先行き懸念が高まったが、4月以降はアベノミクス効果による円安で上場企業の業績が輸出企業を中心に急回復し、一転してブレーキがかかり潮目が変わった。ただ、募集人数は1万782人(前年1万7,705社)で、2年連続で1万人を超えた。
募集人数100人以上が25社
募集人数の最多は、ルネサスエレクトロニクス(グループ会社を含む)の3千数百人(応募2,316人)。次いで、日本通運の800人(同764人)、日本無線の650人(同495人)、パイオニア(グループ会社を含む)の600人(同716人)、NTN(グループ会社を含む)の600人(同406人)、シチズンホールディングス(グループ会社を含む)の400人(同399人)と続く。募集人数が100人以上は25社(前年25社)で、前年と同数だった。
業種別 最多は電気機器の12社
業種別で最も多かったのは、富士通、ルネサスエレクトロニクス、パイオニアなど電気機器の12社だった。次いで、機械6社、非鉄金属・輸送用機器・サービスが各4社、卸売と化学が各3社と続く。
まとめ
2013年の上場企業の希望・早期退職者募集は54社、2年ぶりに実施社数が前年を下回り、人員削減の動きは一服観をみせた。だが、ソニーは国内家電事業の追加リストラ策として国内工場を持つ製造子会社の中堅社員らを対象に早期退職優遇制度の利用募集を開始する。また、パナソニックの子会社、三洋電機は今年2月にも総務・経理などの間接部門を対象に希望退職の募集を予定し、労働組合に申し入れを行なうなど、大手企業はグループ内での事業再編に伴なう人員規模の削減に動いている。
さらに、日本たばこ産業は2013年3月期決算で過去最高益を計上しながら、国内市場縮小の先行きを見据え、海外事業強化から国内工場の閉鎖(予定)を打ち出した。このように業績自体は好調でも国内市場の動向次第で、今後も人員削減に動く企業が出てくる可能性を残している。
コスト削減と不採算事業の見直しは、景気動向に関わらず経営の重要課題である。2013年の動きは上場企業が将来のビジネス展開を見据え、今後も人員削減に取り組む可能性を示唆している。