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GC注記26社 減少傾向続く

 2013年9月期中間決算を発表した上場企業2,483社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)が付いた企業は26社だった。前年度本決算(2013年3月期、33社)より7社減少した。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は41社で、前年度本決算(40社)より1社増加した。
上場企業の中間決算は円安や国内外の需要回復を受け、好決算や業績改善した企業が続出し、景気回復の期待感が強まっている。GC注記企業の一部は業績不振から脱却し、新たに注記が付けられた企業はゼロと上場企業の好決算を反映した。

  • 本調査は、3月期決算で東証から新興市場までの全証券取引所に株式上場する企業を対象に、2013年9月期中間決算短信で「GC注記」及び「重要事象」が付いた企業の内容、業種を分析した(12月5日までの決算短信発表分)。

GC注記 重要事象の付記企業は合計67社 ピークから半減

 GC注記に関するルールは、2009年3月期からGC注記と重要事象の2段階に分けて開示するよう変更された。これによりGC注記企業は減少したが、重要事象を記載した企業との合計は2009年3月期で過去最多の145社となった。その後、GC注記、重要事象とも減少傾向をたどり、2013年9月中間期は合計67社(GC注記26社、重要事象41社、前年同期比19.2%減)と、ピークからほぼ半減し、リーマン・ショック前の水準を下回った。

 2013年9月中間期決算でGC注記が付いた上場企業は26社で、前年度本決算時(2013年3月期)の33社から7社減少した。前年度本決算から5社のGC注記が解消した。このうち、アキナジスタ(元札証アンビシャス)、ひまわりホールディングス(元JASDAQ)の2社は上場廃止となった。また、今中間決算で新しくGC注記が付いた上場企業はゼロだった。
東証1部上場で唯一GC注記が付いていた中堅海運業者の第一中央汽船は、市況低迷による赤字に加えて訴訟損失引当も嵩んで赤字幅が拡大、前年度本決算に引き続きGC注記が付いた。
また、名古屋市で老舗劇場「御園座」を運営する御園座(名証2部)は4月26日付けで事業再生ADR手続が成立、同手続に基づく事業再生計画に取り組んでいるが、中間決算でも損失が発生しGC注記が付いた。

GC・重要事象件数推移

GC注記企業 約8割が本業不振

 GC注記26社のうち、22社(構成比84.6%)が「重要・継続的な売上減」、「損失計上」、「営業キャッシュ・フローのマイナス」など、本業不振が理由だった。次いで、「金融機関や取引先などに債務の支払延滞、返済条件変更やその可能性がある」が5社(同19.2%)、「再建計画の遂行中・その他」5社(同19.2%)と続く。売上減や赤字計上など、本業悪化を理由にした注記が約8割を超えた。
また、債務超過企業は3社(構成比11.5%)だった。債務超過は上場廃止基準に抵触し、1年内に解消できなければ原則上場廃止となるため、早急な業績回復・資本増強策が求められている。

  • 注記理由は重複記載のため構成比合計は100%を超える

理由別GC注記

産業別では製造業が最多 新興市場と中堅規模が中心

 GC注記の26社を産業別にみると、製造業が10社(構成比38.5%)で最多。次いで、情報・通信業5社(同19.2%)、サービス業4社(同15.4%)と続く。上場区分別では、26社のうち新興市場が15社(同57.6%)で、小規模で業歴の浅い企業が中心だった。また、各証券取引所の2部上場で、老舗でも中堅規模で経営体力に乏しい企業が多いことも特徴となっている。

業種別・市場別GC注記

 上場企業の倒産は2008年の33社をピークに、2009年20社、2010年10社、2011年4社、2012年6社と減少し、2013年1-11月は3社にとどまった。倒産の減少に伴い、GC注記と重要事象の記載企業は減少している。ただ、2013年1-11月に倒産した上場企業3社のうち、東京カソード研究所(東京都・JASDAQ)は直近決算で重要事象が記載され、インデックス(東京都、JASDAQ)、ワールド・ロジ(大阪府、JASDAQ)にはそれぞれGC注記が付いていた。輸出関連の大手企業を中心に好決算や業績回復に転じた企業は多いが、不振から浮上できない中堅規模の上場企業も存在するなど上場企業でも格差が鮮明になってきた。

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