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「下期想定為替レート」調査 1ドル=95円 1ユーロ=125円が最多

 東証1部、2部に上場するメーカー99社では、対ドルの下期想定レートを1ドル=95円に設定する企業が過半数を占めた。また対ユーロでは、期初より円安の1ユーロ=125円の想定する企業が最も多く、円安の進行が輸出企業の収益を押し上げている。

  • 本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー(3月本決算企業)のうち、2014年3月期決算の業績見通しで第3四半期以降(10月以降)の下期想定為替レートが判明した99社を抽出した。資料は決算短信、業績予想等に基づく。

下期想定為替レート 1ドル=95円が過半数を占める

 東京証券取引所1部、2部に上場する主なメーカー99社(3月本決算企業)のうち、2014年3月期決算の下期(第3四半期以降)業績見通しで、対ドル相場を1ドル=95円に想定した企業が50社(構成比50.5%)と過半数を占めた。
このほか、97円が18社、96円と90円が各8社、次いで、100円が6社、98円が5社、93円が2社と続く。想定レートの最安値は102円だった。

期初と下期の想定レート比較 1ドル=90円から95円への変更が最多24社

 対象99社は、期初時点において対ドル相場を1ドル=90円とした企業が46社(構成比46.4%)と全体の約5割を占めていた。
下期想定レートの期初比較では、「90円から95円」に変更が24社(構成比24.2%)で最も多かった。次いで、期初の「95円」と変わらず20社(同20.2%)、「95円から97円」変更が8社、期初の「90円」と変わらず7社、「90円から97円」に変更が6社と続く。
外国為替市場のドル円相場は、2013年9月上旬に約1カ月ぶりに1ドル=100円台を突破した。これは、シリアでの軍事懸念の後退 、米国の景気指標の改善、2020年の東京五輪開催決定などのリスク緩和を背景とし、下期の想定為替レートの変更にも影響を与えた。

対ユーロ想定為替レート 1ユーロ=125円が最多

 上場メーカー99社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した76社をみると、下期の対ユーロ想定レートで最も多かったのは、1ユーロ=125円の34社(構成比44.7%)だった。次いで、最安値の130円が23社と続く。なお、期初時点では1ユーロ=120円で想定する企業が多かった。
外国為替市場のユーロ円相場は、シリアでの軍事懸念の後退 、ユーロ圏での景気指標の改善、米国の量的金融緩和策の縮小見送りなどを背景とし、2013年9月には約3年8カ月ぶりに1ユーロ=134円台まで円安が進行した。

◇        ◇        ◇
東証上場の主なメーカーでは、想定する円安水準と実勢レートの差が広がり、輸出企業を中心に業績の上振れ期待が高まっている。輸出企業では、業績見通しの前提となる想定為替レートが、より円安に変動すれば増益要因になる。
この一方で、急激な円安の進行は、原材料を輸入する企業には大きくデメリットに働く。また、想定レートと実勢との差が拡大することで、為替予約などリスクヘッジしている輸出企業が恩恵を受けにくくなる。急激な円安による収益押し上げで、業績を上方修正する企業が多くなるなか、今後は海外から原材料を輸入するメーカーや、関連する中小企業のコスト増による企業体力の消耗が懸念される。

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