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雇用調整助成金の不正受給公表企業は570社

「雇用調整助成金」の不正受給で厚生労働省が社名を公表した企業は、公表開始の2011年2月から2013年10月までの2年8カ月で全国で570社、不正受給累計額は107億円にのぼることがわかった。570社のうち、業績が判明した381社の売上規模は年商10億円未満の中小零細企業が9割以上を占めた。また、業種別では派遣型の情報通信業のほか、製造業、サービス業が突出、業種間の偏りが目立った。
※本調査は、厚労省が公表した不正受給企業570社を対象に、TSR企業データベースを基に調査・分析した。調査は今回が初めて。


「雇用調整助成金」は、企業の雇用維持を図る際に支払う休業手当などの一部を国が助成する制度。2008年12月、リーマン・ショック後から順次、支給要件が緩和された。しかし、不正受給が後を絶たないことから2010年9月、厚労省は同年11月の申請分から不正受給企業を公表する事を発表した。2012年度は32万9,575事業所に対し、1,134億2,249万5,000円が支給されたが、本調査では同年度の不正受給額が51億3,203万8,000円(構成比4.5%、公表日ベース)に達した。

不正受給額 5千万円未満が9割、最高は1社で5億円超

公表開始の2011年2月から2013年10月までに雇用調整助成金を不正受給したとし公表された企業は570社だった。不正受給額は総額107億678万円で、不正受給額別では1千万円未満が最多の282社(構成比49.4%)、1千万円以上5千万円未満が189社(同33.1%)、5千万円以上1億円未満が41社(同7.1%)と、5千万円未満が9割を占めた。1億円以上の不正受給額は13社(同2.2%)あり、最多は(株)ヤマテコーポレーション(相模原市、自動車部品製造)の5億1,532万円。次いで、(株)ビジービー東日本(大阪市中央区)の3億574万円、(株)ビジービー(同) 2億8,970万円だった。また、支給前に判明したことで実質的な被害はなかったが、不正請求を行ったとして社名を公表された企業(未然防止)が、570社のうち45社あった。

公表社数の年度推移(公表日ベース)では2011年度(183社、29億3,962万円)、2012年度(273社、51億3,203万円)と社数、金額ともに大きく増加した。2013年度は4月-10月で102社、25億5,539万円と、社数は前年同期(148社)の約7割にとどまっている。しかし、金額ベースでは前年度とほぼ同水準で推移している。月次ベースの最多は2013年2月の34社だった。

地区別不正受給 関東が5割で最多 7県は不正受給ゼロ

地区別では、関東の272社(構成比47.7%)をトップに、近畿77社(同13.5%)、中国68社(同11.9%)、中部67社(同11.7%)、九州50社(同8.7%)と続く。最多だった関東地区では約7割(183社)を東京都が占めた。事業者数の多い大都市が上位になる傾向だが、北海道(3社、構成比0.5%)、四国(3社、同0.5%)、北陸(12社、同2.1%)、東北(18社、同3.1%)での少なさが顕著だった。一方、東名阪の3大都市圏以外では、広島県(39社)、山口県(28社)を抱える中国地区の多さが目立った。
都道府県別ではトップの東京都に続き、広島県(39社、同6.8%)、大阪府(38社、同6.6%)、神奈川県・山口県(各28社、同4.9%)、愛知県(27社、同4.7%)、福岡県・埼玉県(各25社、同4.3%)と大都市圏で企業数も多い県が上位を占めた。一方、不正受給公表企業がゼロだったのは山形県、福井県、和歌山県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県の7県だった。

売上高別不正受給 年商10億円未満の中小・零細企業が9割

不正受給が公表された企業のうち、決算数値が判明した381社の売上高別は、年商1億円以上10億円未満が229社(構成比60.1%)で、6割を占めた。次いで、同1億円未満が118社(同30.9%)で、同10億円未満の中小・零細企業が全体の9割を占めた。一方、同30億円以上の中堅企業は8社(同2.1%)で、このうち同100億円以上はアトム運輸(株)(金沢市、運輸業、不正受給額2億8,760万2,000円)の1社だった。不正受給が公表された企業は、圧倒的に財務面がぜい弱な中小・零細企業が多かった。

産業別不正受給 情報通信業が最多、派遣型の業態で目立つ

産業分類が判明した不正受給公表の481社のうち、最も多かったのは情報通信業で、112社(構成比23.2%)だった。システムエンジニアなどを請負先の企業に派遣する業態で、実態が見えにくく、実際は勤務していたが休業と偽り不正受給するケースが多かった。次いで、製造業の111社(同23.0%)だった。工場ラインを通常稼働させていたにも関わらず、休業や教育訓練を実施していたとして不正受給するケースが多い。このほか、サービス業他98社(同20.3%)、建設業77社(同16.0%)と続く。サービス業他の内訳は、各種コンサルティング業(12社)、人材派遣業(11社)などで、いずれも実態が把握しにくい派遣型業種で多かった。

不正受給企業の22社が倒産 このうち公表後の倒産は13社

不正受給の公表後に破産や民事再生などの法的整理や銀行取引停止処分などで倒産に至ったのは13社だった。このほか、公表時点ですでに倒産していた企業が9社あった。
今年10月、破産準備に入った(株)REジャパン(旧商号:(株)東北医療器械、仙台市、エステサロン経営)は、7月に前社長と取締役が雇用調整助成金824万円を不正受給したとして逮捕、所得税法違反容疑でも再逮捕された。事件後、商号変更や代表交代などで企業イメージの払拭を図ったが、信用低下から脱却できず業績が急速に悪化した。


リーマン・ショック後の景気悪化で雇用調整助成金制度は要件を緩和され、助成内容の大幅拡充などで、政府の景気対策の一翼を担った。しかし、不正受給の多発や財源となる雇用保険の財政悪化で2012年10月以降、要件の厳格化など、絞り込みが進んできた。今年12月1日からは教育訓練費として助成される金額をリーマン・ショック前の水準に戻すなど、6項目で支給要件が見直される。

今回の調査で、2012年度は支給実績額1,134億円に対し、不正受給額は51億3,203万8,000円(公表日ベース)と、占める割合が4.5%に達した。
安倍政権ではこれまでの「行き過ぎた雇用維持」から「労働移動支援型」への転換を促進している。次年度以降、雇用調整助成金は大幅に縮小され、代わって労働移動助成金へシフトが進むとみられる。こうした政策転換という背景はあるが、モラルに欠ける一部の企業の不正行為が、要件の厳格化や規模縮小を招いた側面も否めない。 
また、不正受給が発覚すれば返還義務が生じるばかりか、悪質なケースは刑事告訴の対象となる。社名が公表されると、取引先など関係先にも不正受給の事実を知られ、コンプライアンス(法令順守)軽視のレッテルが貼られる。これは中小企業ほど信用低下や、経営悪化に直結する。中小企業の支援策として幅広く救済効果をみせたことから、「第二の金融円滑化法」とも言われた雇用調整助成金だが、安易な助成金制度の不正利用を社会や取引先は許さず、多大なリスクとなってはね返りつつある。不正受給を申請した企業の大半は年商10億円未満の中小・零細企業が占めている。雇用調整助成金に限らず、中小企業の支援制度の悪用は、国内の中小企業に大きなシワ寄せをもたらすことも認識すべきである。

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