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「想定為替レート」調査 1ドル=95円 1ユーロ=125円が最多

外国為替市場の円相場は、日銀の異次元の金融緩和を受けて4月以降は円安が急速に進行した。その後、円相場は乱高下を繰り返しており、上場メーカーの2013年7月以降の想定為替レートは様子見機運を反映して期初レベルに据え置く企業が多かった。

  • 本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー(3月本決算企業)のうち、2014年3月期決算の業績見通しで2013年7月以降の第2四半期想定為替レートが判明した56社を抽出した。資料は決算短信、業績予想等に基づく。

2013年度第1四半期(4-6月)の外国為替市場の円相場は、日銀の金融緩和策を受けてドル相場は5月中旬に1ドル=103円台後半まで円安が進行した。しかし、6月中旬には日銀の追加緩和の見送りもあって一時93円台に急騰。その後、ジリ安に転じて月末は一時98円後半まで下落するなど乱高下が目立った。また、ユーロ相場は日銀の金融緩和の決定により、4月中旬に1ユーロ=131円まで円安が進行した。さらに5月には一時133円台まで達したが、世界的な株安の影響から、6月には125円台に戻すなど大きな変動幅で推移した。

第2四半期以降の対ドル想定レート 1ドル=95円が最多

こうした外国為替市場の動きに伴い、東京証券取引所1部、2部に上場する主なメーカー56社(3月本決算企業)のうち、2014年3月期の第2四半期(2013年7-9月)以降の業績見通しは対ドル相場を1ドル=95円に想定する企業が24社(構成比42.8%)と最も多かった。次いで90円が14社だった。

期初との比較 1ドル=95円の据え置きが最多

対象56社の期初と第2四半期以降の想定為替レートの比較では、1ドル=95円の据え置きが最も多い20社(構成比35.7%)だった。次いで、90円で据え置きが14社、90円から95円への変更が3社と続く。変動する円相場に対して、慎重なスタンスの企業が多いことがうかがえる。

第2四半期以降の対ユーロ相場 1ユーロ=125円の想定が最多

ユーロの想定為替レートは、56社のうち47社で第2四半期以降の想定レートが判明した。想定為替レートで最も多かったのは、1ユーロ=125円の18社(構成比38.2%)だった。次に120円が11社、115円が4社と続き、最安値は130円だった。

期初との比較 1ユーロ=125円の据え置きが最多

対ユーロ相場での、期初と第2四半期以降の想定為替レートを比較すると、125円の据え置きが最も多い12社(構成比25.5%)だった。次に、120円の据え置きが9社、115円の据え置きが4社、120円から125円への変更が4社と続き、ドルと同様に想定為替レートの据え置きが目立った。

今年4月の日銀の異次元の金融緩和を受けて、外国為替市場では急速に円高が進行し、海外売上高の比重が高い輸出企業を中心に業績が改善している。しかし、これまでの歴史的な円高や欧州債務危機などの先行き懸念もあって、想定為替レートを実際の市場の動きより堅実に設定する企業が目立つ。外国為替相場の変動に揺れ動かされてきた企業サイドの慎重な姿勢の表われともいえる。円安は輸出企業を中心に収益を押し上げる一方で、輸入燃料に依存する運輸業や電力会社、輸入商材を扱う流通関連、原材料を輸入している食品メーカーなどはコスト高に跳ね返ってくる。当面、輸出入の関連企業は需要拡大が進まない限り、為替相場の変動で業績が左右される状況が続くとみられる。

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