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主な東証1部、2部上場メーカー66社 「第4四半期 想定為替レート」調査(2013年3月期決算) ~ 1ドル=85円 1ユーロ=115円が最多 ~

外国為替市場の円相場は、昨年11月から円安に振れている。これを反映して東証1部、2部に上場するメーカーでは、2013年1月以降の想定為替レートを1ドル=85円に変更する企業が多く、円高修正が相次いでいる。また、期初時点では欧州債務危機の先行きが懸念されたユーロも、2013年1月以降の想定為替レートを1ユーロ=115円とする企業が最も多く、期初より大きく変動した。

  • 本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー(3月本決算企業)のうち、2013年3月期決算の業績見通しで2013年1月以降の第4四半期想定為替レートが判明した66社を抽出した。資料は決算短信、業績予想等に基づく。

東京外国為替市場の円相場は、2012年は対ドル相場で、9月に1ドル=77円前半を記録した。また、対ユーロ相場も、欧州債務問題などが影響して7月には、オセアニア外国為替市場で1ユーロ=94円89銭を記録するなど、歴史的な円高、ドル安、ユーロ安傾向が続いた。しかし、11月中旬以降は円安傾向に振れ、12月28日には1ドル=86円前後、1ユーロ=113円前後となった。
さらに安倍政権が大胆な金融緩和を含むアベノミクスを表明したことで、円安が進行し、2013年3月7日には、一時1ドル=94円10銭台をつけ、1ユーロ=122円前後で推移した。

第4四半期の対ドル相場 1ドル=85円の想定が最多

東京証券取引所1部、2部に上場する主なメーカー66社(3月本決算企業)のうち、2013年3月期決算の第4四半期(2013年1月-3月)の業績見通しでは、対ドル相場を1ドル=85円に想定する企業が27社(構成比40.9%)で最も多かった。次に90円が13社、88円が9社、87円が4社だった。

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期初との比較 1ドル=80円から85円への変更が最多

対象66社は、期初において対ドル相場を1ドル=80円とした企業が36社(構成比54.5%)で、全体の5割を占めていた。2013年3月期決算企業の期初と第4四半期の想定為替レートを比較すると、想定レートを80円→85円に変更した企業が18社で最も多かった。次に、80円→90円の変更が6社、80円→88円の変更が6社、75円→90円の変更が3社、75円→85円が3社と続く。

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第4四半期の対ユーロ相場 1ユーロ=115円の想定が最多

ユーロの想定為替レートでは、66社のうち55社で第4四半期の想定レートが判明した。想定為替レートで最も多かったのは、1ユーロ=115円の23社(構成比41.8%)だった。次に120円が10社、110円が9社と続き、最安値は125円だった。

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期初との比較 1ユーロ=105円から115円への変更が最多

対象55社は、期初において対ユーロ相場を1ユーロ=105円とした企業が33社(構成比60.0%)で最も多く、次に100円が7社だった。2013年3月期決算の期初と第4四半期の想定為替レートを比較すると、想定レートを105円→115円の変更が13社で最も多かった。次に、105円→120円の変更が7社、105円→110円の変更が5社と続き、期初時点と比べて大きく変更する企業が多かった。


昨年11月以降の円安傾向から、海外売上高の比重が高い輸出企業を中心に輸出採算が改善している。これに伴ない上場企業では収益計画の前提となる想定為替レートの見直しが相次いでいる。しかし、これまでの歴史的な円高や欧州債務危機などの先行き懸念も残り、想定為替レートを実際の市場の動きより高めに設定するところが目立つ。これは、外国為替相場の変動に揺れ動かされてきた企業サイドの慎重な姿勢をうかがわせた。円安は、輸出企業などに業績の上方修正をもたらす一方で、輸入燃料に依存する運輸業や電力、輸入商品を扱う流通関連では、急激な円安がコスト高に跳ね返り、収益悪化につながる懸念がある。また、製造業でも急激な円安は間接コストの上昇に波及する面もあるため楽観はできない。当面、輸出入に関連する企業では、円相場の動きから目を離せない状況が続く。

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