AI時代に問われるのは「データ量」ではなく「データ品質」 ~AI Ready Dataを支えるマスターデータの重要性~
「AIを導入したものの、期待した成果が得られない。」
生成AIやAIエージェントの活用が急速に広がる中、このような声を耳にする機会が増えています。多くの企業がAI活用に向けた取り組みを進めていますが、その一方で見落とされがちな重要な要素があります。それが「データ品質」です。AIの世界には古くから知られる有名な言葉があります。
「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない)」
どれほど優れたAIであっても、入力されるデータの品質が低ければ、得られる結果の品質も低下します。AI活用の成果を左右するのは、AIモデルの性能だけではありません。AIが信頼して利用できるデータが整備されているかどうかも、極めて重要な要素なのです。
データ量だけでは価値は生まれない
近年、企業が保有するデータ量は飛躍的に増加しています。しかし、「データが多いこと」と「データが活用できること」は必ずしも同義ではありません。
もちろん、AI活用においてデータ量やデータの多様性は重要な要素です。しかし、それだけでAI活用の成果が保証されるわけではありません。
例えば、同じ顧客や取引先が複数登録されている、商品情報の表記ルールが統一されていない、更新されていない情報が残っているといった状況は、多くの企業で見受けられます。
こうした不整合を含んだデータをAIに利用させれば、分析結果や予測精度だけでなく、業務効率や意思決定の質にも影響を及ぼします。
AI活用を成功させるために重要なのは、データの量そのものではなく、AIが信頼して利用できる状態に整備されていることです。
注目される「AI Ready Data」
こうした背景から、近年注目されているのが「AI Ready Data」という考え方です。
AI Ready Dataとは、AIが効率的かつ効果的に活用できる状態に整備されたデータのことです。対象となるデータは企業によってさまざまです。顧客情報、商品情報、サプライヤー情報、契約情報など、AIが活用するデータは多岐にわたります。しかし、どのようなデータであっても共通して求められる要件があります。それは、データが正確であり、一貫性があり、継続的に管理・更新されていることです。
AIが価値ある結果を生み出すためには、まず利用するデータが信頼できるものでなければなりません。AI Ready Dataとは、そうした土台づくりの取り組みともいえるでしょう。
AI Ready Dataを支えるマスターデータ
そのAI Ready Dataを支える土台となるのがマスターデータです。
顧客、商品、取引先など、企業活動の基盤となる共通情報は、多くのシステムや業務プロセスで利用されています。こうした情報が適切に管理されていなければ、システムごとに異なる情報が登録され、重複や不整合が発生します。
その結果、分析やレポーティングだけでなく、AIや自動化施策が十分な成果を発揮できなくなる可能性があります。
AI活用を推進する企業にとって、マスターデータの整備は単なるデータ管理の問題ではありません。AI Ready Dataを実現するための重要な基盤といえるでしょう。
企業情報を扱う場合に求められる視点
では、企業情報を扱う場合はどうでしょうか。
営業活動やマーケティング、サプライチェーン管理、コンプライアンス対応、リスク管理など、多くの業務で企業情報が利用されています。しかし企業情報は、人名や商品コードとは異なり、企業名の表記ゆれや社名変更、組織再編などによって変化する可能性があります。また、親会社・子会社を含む企業グループ全体を把握する必要があるケースも少なくありません。
そのため、企業名だけを頼りにデータを管理していると、同一企業が複数の企業として登録されたり、グループ企業の関係性を正しく把握できなかったりする問題が発生します。企業情報をAI活用の対象とする場合にも、こうした課題への対応は欠かせません。
AI時代だからこそ高まる企業識別子の価値
企業情報の品質を維持し、社内外のデータを正確に連携するために重要な役割を果たすのが企業識別子です。
The Dun and Bradstreet Corporation(D&B)が発行するD-U-N-S® Numberは、世界中の企業を一意に識別するためのグローバルな企業識別子として広く活用されています。
D-U-N-S® Numberの発番ポリシー
D-U-N-S® Numberは9桁の重複のない番号で、D&Bにより個人事業主、企業、パートナーシップ、非営利団体、政府機関など、あらゆるタイプの事業組織に事業所レベルで割り当てています。
存在が確認できた組織に対し事業所ごとに発番

企業名や所在地が変更された場合でも同一企業を継続して管理できるため、データ統合や企業グループの把握を支援します。
また、AI活用が進む中では、複数のシステムやデータソースに存在する情報を横断的に活用するケースが増えています。その際、同一企業を正確に識別できなければ、分析結果や意思決定の信頼性にも影響を与える可能性があります。企業識別子は、企業情報の品質を維持し、AI Ready Dataを支える重要な基盤のひとつといえるでしょう。
まとめ
AI活用の議論では、最新のAIモデルや新しい機能に注目が集まりがちです。しかし、その成果を支えるのはAIが利用するデータです。AI時代だからこそ、データ量だけでなくデータ品質に目を向けることが重要です。
そして、その品質を支えるマスターデータの整備は、AI Ready Dataを実現するための重要な第一歩となります。企業情報を活用する領域においては、企業識別子を活用したデータ管理が、より信頼性の高いAI活用につながるのではないでしょうか。
※東京商工リサーチは、Dun & Bradstreet Worldwide Network(WWN)のメンバーとして、日本企業に関する企業情報とインサイトを提供しています。