企業リスクは“止まる”と“違反する”の二層で捉える ―取引先リスク管理の新しい視点―
見えないリスクを可視化する
企業リスクは、財務データだけでは把握しきれない時代です。取引先の財務状況や信用情報など、目に見える情報を確認するだけでは、サプライチェーンやブランドに潜むリスクを見落とす恐れがあります。
取引先の企業が制裁リストに掲載されていたり、法令違反などを犯すことで自社にもその影響が及ぶコンプライアンスリスクは、制裁対象企業と直接取引がなくても、間接的な支配関係によって影響を受けることがあり、表面的な取引関係のチェックだけでは見逃してしまう可能性もあります。貴社の対策は万全でしょうか?
「50%ルール」が及ぼす思わぬリスク
制裁リスクの管理で必ず注意しなければいけない点に、米国OFAC(米国財務省外国資産管理室)の制裁規制における50%ルールがあります。制裁対象企業が50%以上出資している企業は、実質的に制裁対象として扱われる場合があるという考え方です。
たとえば、企業Aが制裁対象企業Bに50%以上出資されている場合、企業A自体は制裁リストに載っていなくても、資金の流通制限や取引停止の影響を受ける可能性があります。
これにより、海外サプライヤーへの支払い停止や契約更新の保留、製品納入の遅れなどの具体的影響が生じることがあります。
このような取引先の実態把握や制裁リストなどへの掲載の有無をワンストップでおこなえるのが D&B Risk Analytics – コンプライアンス・インテリジェンス(以下RACI)です。こうした出資構造の複雑さや潜在的影響範囲を事前に可視化し、適切なリスク対応策の検討に直結させることができます。
リスクは二層で考える
企業が直面するリスクは、大きく二つの性質に分けて考えると理解しやすくなります。
- 止まるリスク:倒産や操業停止、財務悪化など、サプライヤーの供給継続性に直結するリスク
- 違反するリスク:制裁違反、贈収賄、人権・ESG問題など、法規制や社会的責任に関わるリスク
「止まるリスク」の管理では、取引先の財務状況や支払い能力を分析することが重要です。
- 安定した供給が継続可能な取引先かどうかを評価
- サプライチェーン全体でリスクが集中する箇所を特定し、潜在的な問題の早期発見や対策検討に役立てる
「違反するリスク」の管理では、制裁違反や贈収賄、人権・ESGなどのリスクを早期に把握することが重要です。
- 契約更新前にリスクを確認し、潜在的な違反が見つかった場合には契約条件の見直しを行う
- 株主構造を把握することで、OFAC制裁規制上の50%ルールへの該当有無を確認し、取引判断を行う
- 取引先のESG上の問題も把握し、ブランド毀損リスクを未然に防止
こういった判断の場面においてRACIを活用することで、潜在リスクを早期に明らかにし、経営判断に直結させることが可能です。
現場で直面する課題
情報は部門ごとに分かれて管理されることが多く、潜在リスクの把握が遅れがちです。財務データだけでは制裁やESG、贈収賄といったリスクを十分に把握できない場合もあります。さらに、海外企業の情報は入手や更新にタイムラグが生じることもあり、迅速な経営判断の妨げになることがあります。
RACIを活用することで、こうした課題に対応し、リスクを多面的に可視化して、実務で活用可能な情報として戦略的に役立てることができます。
経営判断の新しい視点
企業リスクを「止まるリスク」と「違反するリスク」の二層で捉えることは、潜在リスクを早期に把握し、経営判断に直結させるために重要です。RACIを活用することで、二層のリスクを立体的に把握し、サプライチェーンの安定性や法規制・ブランドリスクを同時に管理できます。こうした二層管理のアプローチにより、企業は潜在的な問題を見落とすことなく、戦略的かつ迅速な意思決定を行うことが可能です。
複雑化する企業活動の中では、リスクも多層化しています。潜在的なリスクを早期に把握し、「止まるリスク」と「違反するリスク」の両面から全体像を捉えることで、迅速かつ戦略的な意思決定につなげることができます。
二層の視点を意識することが、企業にとってより安全で確実な経営判断を支える基盤となるのです。