【中東企業最新動向調査】日本企業と中東企業の“見えないつながり”を探るーー地政学リスクと潜在的な企業ネットワークを読み解くーー

2026年2月28日に発生した、米国とイスラエルによるイラン攻撃から間もなく1カ月。中東情勢は世界経済に少なからぬ影響を及ぼしています。日本では原油や天然資源への依存度の高さから、株価の乱高下やガソリン価格の高騰、製造業の一部停止といった現場レベルの影響も見られました。
東京商工リサーチは、業務提携するThe Dun and Bradstreet Corporation(以下D&B、本社米国)の海外企業データベース「D&B Hoovers」の企業データを活用し、企業のウェブサイト上で「日本」「Japan」と記載している中東企業8,264社を分析。その数字の裏には、目には見えない複雑なネットワークと潜在リスクが隠されていることがわかりました。

ハブとしての中東地域

分析対象の企業を国別でみると、UAEが4,257社(構成比51.5%)で最も多く、次いでイスラエル1,239社(15%)、サウジアラビア844社(10.2%)が続いています。都市別では、ドバイが2,892社(35%)で突出しており、物流・金融・商流が交差するハブとして、日本企業との接点形成に欠かせない存在となっています。便利さの裏にはリスクも潜んでいます。もしドバイ経由の取引が滞れば、日本企業への影響は連鎖的に広がり、思わぬ損失を招く可能性があります。

ウェブサイトに「日本」「Japan」と記載している中東の国・地域別企業数

国/地域 社数 構成比
アラブ首長国連邦(UAE) 4,257 51.5%
イスラエル 1,239 15.0%
サウジアラビア 844 10.2%
カタール 407 4.9%
オマーン 352 4.3%
バーレーン 285 3.4%
クウェート 274 3.3%
レバノン 267 3.2%
ヨルダン 236 2.9%
イラク 68 0.8%
イエメン 35 0.4%
合計 8,624 100%

ウェブサイトに「日本」「Japan」と記載している中東の都市別企業数(一部)

都市名 社数 構成比
ドバイ 2,892 35.0%
アブダビ 757 9.2%
リヤド 347 4.2%
シャルージャ 342 4.1%
ドーハ 286 3.5%
合計 4,624 56%

多層的な業種とリスク

業種別にみると、サービス業2,631社(31.8%)、卸売業2,239社(27.1%)、製造業、運輸・インフラ、金融・不動産業などが続いています。日本との関係は資源やエネルギーに限定されず、流通、サービス、製造、金融と多層的に広がっています。例えば、製造業では部品供給の遅れが生産ラインの停止を招き、サービス業では契約履行や資金協力に影響が及ぶこともあります。こうした多層的な関係は、数字以上に企業間のつながりの「深さ」と「広がり」を示しています。

ウェブサイトに「日本」「Japan」と記載している中東の業種別企業数

業種 社数 構成比
サービス業 2,631 31.8%
卸売業 2,239 27.1%
製造業 848 10.3%
運輸・郵便・電気・ガス・及び衛生サービス 588 7.1%
金融 498 6.0%
小売業 475 5.7%
分類不能の産業 469 5.7%
建設業 300 3.6%
鉱業 137 1.7%
公務 52 0.6%
農業・林業及び漁業 27 0.3%
合計 8,624 100%

見えないリスクの存在

企業のウェブサイト上で「日本」「Japan」と記載している8,264社の企業を見ると、資金協力や合弁事業、製品流通など多様な関係が浮かび上がります。地政学リスクが高まると、ハブを介した連鎖的影響や取引停滞、提携関係の見直しが現実問題として現れることがあります。特に、資本関係を伴う深い結びつきや広範な接点を持つ企業では、影響がさらに拡大しやすいです。数字だけでは見えないこうした潜在リスクを読み解くことが、今後のリスクマネジメントには不可欠といえます。

ネットワークのシグナルを読む

企業のウェブサイト上の「日本」「Japan」の記載は、単なる情報ではなく、企業間ネットワークのシグナルです。地政学リスクが高まる局面では、このシグナルを手がかりに構造的なつながりや潜在的脆弱性を把握することが重要です。数字と現場の関係をつなぎ、見えないリスクに備える視点こそ、日本企業の持続的経営に欠かせません。

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