• TSR速報

船井電機(株)

船井電機の本社

船井電機の本社

~「FUNAI」ブランドでAV機器を展開~

 AV機器メーカーの船井電機(株)(大阪府大東市)は10月24日、東京地裁より破産開始決定を受けた。破産管財人には、片山英二弁護士(阿部・井窪・片山法律事務所、東京都千代田区丸の内1-9-2)が選任された。
 負債総額は461億5900万円(2024年3月期決算時点)。家電メーカー(情報通信機械器具製造業)としては、平成以降で4番目。

 「FUNAI」ブランドでリーズナブルな価格帯の液晶テレビなどを供給するAV機器メーカー。1951年に船井哲良氏がミシンの部品や完成品の卸問屋として船井ミシン商会を創業。また、同年1月に東南商事(株)(大東市)が設立される。1959年、船井ミシン商会はトランジスタラジオの生産を開始。1976年、東南商事が船井ミシン商会を源流とする企業を吸収し、船井電機(株)へ商号変更。1980年代からは映像関連や生活家電の製造にも参入し、1990年代には米ウォルマート社との取引を開始して業容を拡大した。2000年3月には東証1部(当時)に上場した。


 特に北米での高いシェアを誇り、「世界のFUNAI」と呼ばれ、2005年3月期には単体売上高3535億9200万円をあげた。しかし、その後は中国・台湾などのメーカーとの競合激化もあって業績は低迷。これに対し、2016年に大手家電量販の(株)ヤマダ電機(現:(株)ヤマダホールディング、群馬県高崎市)への独占供給を柱とする業務提携を締結。その後の直接供給先は(株)ヤマダデンキ(群馬県高崎市)となったものの、引き続き主要取引先として供給した。
 この間、2017年に創業者の船井哲良氏が死去。事業承継を模索するなかで2021年5月、(株)秀和システムホールディングス(江東区)が株式公開買付を実施して、同社の完全子会社となり、2021年8月26日に上場を廃止した。その後、秀和システムホールディングスの親会社である(株)秀和システム(江東区)の傘下となり、2023年3月末に当社へ事業を移管し、船井電機は船井電機・ホールディングス(以下、船井電機HD)へ商号変更し、中間持株会社となった。さらに同年4月、船井電機HDは脱毛サロン運営の(株)ミュゼプラチナム(東京都港区)を買収した。
 しかし、2024年3月に、本社と東京支店の不動産(いずれも船井電機HD名義)に対して、創業家より100億円を超える根抵当権の仮登記が設定されていることが判明。また5月に役員構成が入れ替わるなかで、当社より明確な説明がなされず、信用不安が高まった。さらに、ミュゼプラチナムはネット広告企業に対する債務約22億円の支払いが滞る事態も発生。債務を連帯保証していた船井電機HDが保有する当社株式に対する株式仮差押が申し立てられ、5月2日に仮差押決定の発令を受けた。
 10月3日に経営体制の刷新が発表されたものの、支払遅延が発生するなかで材料仕入なども困難となり、今回の事態となった。

※船井電機(株)(TSR企業コード:697425274、法人番号:3122001036719、大東市中垣内7-7-1、設立2023(令和5)年2月、資本金313億1260万7960円)
※船井電機・ホールディングス(株)(TSR企業コード:570182948、法人番号:2122001015871、大東市)
※(株)ヤマダ電機(現:(株)ヤマダホールディングス、TSR企業コード:270114270、法人番号:4070001011201、群馬県高崎市)
※(株)ヤマダデンキ(TSR企業コード:134237650、法人番号:2070001036729、群馬県高崎市)
※(株)秀和システムホールディングス(TSR企業コード:136862659、法人番号:2010601058062、江東区)
※(株)秀和システム(TSR企業コード:292007680、法人番号:1010401013986、江東区)
※(株)ミュゼプラチナム(現:(株)MIT、TSR企業コード:300036639、法人番号:3011001092832、大田区)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ