全国企業倒産状況

2025年9月の全国企業倒産873件

9月の倒産 件数が4年連続で増加、「従業員退職」倒産が3.8倍増


 2025年9月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が873件(前年同月比8.1%増)、負債総額は1,124億7,000万円(同15.2%減)だった。
 件数は、4カ月連続で前年同月を上回り、7月の961件に次いで、ことし2番目の高水準になった。9月では2022年から4年連続で前年同月を上回り、2年連続800件台に乗せた。
 負債総額は、2カ月ぶりに前年同月を下回り、9月としては2年連続で前年を下回った。負債1億円以上5億円未満が176件(前年同月比17.3%増)、同5億円以上10億円未満が21件(同23.5%増)と増加したが、10億円以上が18件(前年同月24件)と減少し、大型倒産の一服で負債を押し下げた。
 
 四半期別は、2025年1-3月期が2,457件(前年同期比5.9%増)、4-6月期が2,533件(同3.0%減)、7-9月期が2,639件(同6.2%増)と増減を繰り返している。だが、2025年1-9月累計は7,629件(同2.8%増)と増勢を持続し、2年連続で年間1万件超えが視野に入ってきた。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産の構成比は89.2%、2カ月ぶりに80%台
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが25道府県、減少15都県、同数7県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比75.3%、100億円以上が3カ月ぶりに発生なし
・業種別件数:飲食料品製造業・販売業、印刷・同関連業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比は89.4%
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比:7カ月連続で100.0%
・「人手不足」関連倒産:従業員退職19件(前年同月5件)、人件費高騰14件(同8件)、求人難13件(同9件)で合計46件(同22件)。2013年の調査開始以来、2025年7月の44件を超え、月間最多
・「物価高」倒産:76件(前年同月44件)で、4カ月連続で前年同月を上回る
・「ゼロゼロ融資」利用後の倒産:44件(同43件)で、16カ月ぶりに前年同月を上回る

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 倒産件数 10産業のうち、9産業で前年同月を上回る

 2025年9月の産業別件数は、情報通信業を除く9産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の290件(前年同月比9.8%増)で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は33.2%(前年同月32.7%)だった。
 このほか、不動産業26件(前年同月比13.0%増)が5カ月連続、小売業98件(同4.2%増)が4カ月連続、建設業182件(同17.4%増)と運輸業32件(同10.3%増)が2カ月連続、農・林・漁・鉱業9件(同28.5%増)が2カ月ぶり、製造業101件(同3.0%増)が3カ月ぶり、卸売業101件(同4.1%増)が7カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 また、金融・保険業4件(前年同月ゼロ)が3カ月ぶりに発生した。
 増加した9産業のうち、建設業と金融・保険業の2産業は今年最多だった。
 一方、情報通信業30件(前年同月比25.0%減)が、4カ月連続で前年同月を下回り、今年最少だった。

2025年9月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移
 

地区別 倒産件数 7地区で前年同月を上回る

 2025年9月の地区別件数は、関東と中国を除く7地区で前年同月を上回った。
 北陸23件(前年同月比91.6%増)が6カ月連続、九州71件(同9.2%増)が3カ月連続、北海道22件(同4.7%増)と中部121件(同21.0%増)、近畿252件(同33.3%増)が2カ月連続、東北50件(同31.5%増)が3カ月ぶり、四国16件(同33.3%増)が5カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、中国27件(同32.5%減)が2カ月ぶり、関東291件(同11.8%減)が4カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2025年9月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)ペンギン/東京都/不動産仲介ほか/88億3,100万円/破産
2.(株)ネクサスエンタープライズ/大阪府/アミューズメント施設運営ほか/65億円/破産
3.ネオクリティケア製薬(株)/神奈川県/注射剤ほか製造販売/44億7,100万円/破産
4.ANA NEO(株)/東京都/バーチャルトラベルアプリ運営/39億8,000万円/特別清算
5.(株)ソーラークリーニング/東京都/太陽光発電パネル販売・メンテナンス/23億9,900万円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ