全国企業倒産状況

2024年(令和6年)の全国企業倒産1万6件

2024年の企業倒産 11年ぶり1万件を超す、「物価高」・「人手不足」は高水準


 2024年の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)は、件数が1万6件(前年比15.1%増)、負債総額は2兆3,435億3,800万円(同2.4%減)だった。
 件数は、3年連続で前年を上回り、2013年の1万855件以来、11年ぶりに1万件を超えた。8月に29カ月ぶりに減少したことが影響し、増加率は前年(35.1%増)より縮小した。
 負債総額は、3年連続で2兆円台に乗せたが、負債1,000億円以上がMSJ資産管理(株)(旧:三菱航空機(株))の1件(前年2件)にとどまり、3年ぶりに前年を下回った。
 負債1億円以上5億円未満は2,001件(前年比15.3%増)、同5億円以上10億円未満は305件(同21.0%増)、同10億円以上50億円未満は187件(同11.3%増)と、中堅規模の倒産が増加した。ただ、同1億円未満が7,478件(前年比15.1%増)と全体の約7割(74.7%)を占めている。

 2024年の企業倒産は、2013年(1万855件)以来、11年ぶりに1万件を超えた。四半期では、2022年4-6月期から2024年10-12月期まで11四半期連続で前年同期を上回り、企業倒産の増勢が鮮明になった。
 2024年は円安基調に乱高下が続き、物価上昇に歯止めがかからず、人手不足や最低賃金の引き上げなどで人件費も上昇し、幅広い分野でコストアップに見舞われた。また、コロナ禍の資金繰り支援で生じた過剰債務の解消が遅れ、企業収益に負担となって圧し掛かった。

企業倒産年次推移


・「税金関連」倒産は176件で、前年(92件)の1.9倍に増加し2013年以降で最多
・「ゼロゼロ融資」利用後倒産は567件(前年635件)で、年間で初めて減少
・「物価高」倒産は698件(前年646件)で、2022年以降、2年連続で増加
・「人手不足」関連倒産は、求人難114件(前年58件)、人件費高騰104件(同59件)、従業員退職71件(同42件)の計289件(同159件)
・上場企業倒産:東証グロースの日本電解(株)の1件で、3年連続で発生
・形態別:法的倒産件数の構成比95.9%、8年連続で90%台
・都道府県別件数:前年を上回ったのが38都道府県、減少が9県。3年連続で「増加」が「減少」を上回る
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比74.7%、4年連続で1,000億円以上が発生
・業種別件数:プラスチック製品製造業、輸送用機械器具製造業などが増加
・中小企業倒産件数(中小企業基本法に基づく)の構成比は前年と同水準の99.9%


◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、8産業で前年を上回る

 2024年の産業別件数は、10産業のうち、金融・保険業、不動産業を除く8産業で前年を上回った。
 最多は、サービス業他の3,329件(前年比13.2%増)で、3年連続で前年を上回り、1990年以降では、初めて3,000件台に乗せた。
 2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された、いわゆる「2024年問題」に直面した建設業が1,924件(同13.6%増)で3年連続、運輸業が457件(同9.8%増)で4年連続で、それぞれ前年を上回った。
 このほか、製造業1,141件(同16.7%増)と卸売業1,214件(同26.4%増)、情報通信業425件(同21.7%増)が3年連続、小売業1,098件(同16.9%増)が2年連続、それぞれ前年を上回った。一方、金融・保険業25件(同28.5%減)と不動産業280件(同2.7%減)が、それぞれ2年ぶりに前年を下回った。

2024(令和6)年 産業別倒産状況

主要産業倒産件数 年次推移

地区別 2年連続で9地区すべてで前年を上回る

 2024年の地区別件数は、2年連続で9地区すべてで前年を上回った。
 北海道280件(前年比4.0%増)と東北568件(同30.8%増)、関東3,625件(同12.1%増)、近畿2,605件(同18.0%増)、中国450件(同14.7%増)、九州884件(同22.9%増)が3年連続、中部1,186件(同7.0%増)と北陸204件(同27.5%増)、四国204件(同20.7%増)が2年連続で、それぞれ前年を上回った。
 東北は2010年(605件)以来、14年ぶりに500件を超えた。また、北陸は2020年(201件)以来の200件台、中国は2014年(447件)以来の400件台、四国は2012年(273件)以来の200件台、九州は2012年(890件)以来の800件台になった。
 増加率が最も大きい東北は、サービス業他157件(同21.7%増)、建設業135件(同51.6%増)、製造業74件(同32.1%増)など8産業が前年を上回った。また、北陸は、サービス業他74件(同57.4%増)、建設業48件(同41.1%増)など6産業が前年を上回った。

2024(令和6)年 都道府県別倒産状況


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


主な倒産

[負債額上位5社]
1.MSJ資産管理(株)/愛知県/航空機開発製造/6,413億円/特別清算
2.エクシア合同会社/東京都/融資・投資事業/850億円/破産
3.(株)BALM/東京都/中古自動車販売ほか/831億円/民事再生法
4.船井電機(株)/大阪府/AV家電製造販売/469億6,400万円/破産
5.シニアコネクテッドテクノロジーズ(株)/神奈川県/情報処理サービス業/279億円/破産

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