全国企業倒産状況

2024年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,095件

2024年度上半期の倒産 10年ぶり5,000件台、全9地区が2年連続で増加


 2024年度上半期(4-9月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が5,095件(前年同期比17.8%増)、負債総額は1兆3,754億100万円(同13.8%減)だった。
 件数は、年度上半期では3年連続で前年同期を上回り、2014年度同期(5,049件)以来、10年ぶりに5,000件台に乗せた。
 負債総額は、3年連続で1兆円を超えたが、2022年度同期をピークに2年連続で前年同期を下回った。これは負債1,000億円以上1件(前年同期2件)を含む同100億円以上が4件(同10件)に減少したため。一方で、同5億円以上10億円未満は140件(前年同期比8.5%増)、1億円以上5億円未満は1,006件(同12.9%増)と、やや中堅規模に広がりをみせた。
 産業別は、金融・保険業を除く9産業で前年同期を上回った。

 集計対象外の負債1,000万円未満の倒産は、1-9月累計が415件(前年同期比19.5%増)。2年連続で前年同期を上回り、小・零細企業の窮境局面も鮮明になっている。
 また、負債1,000万円以上の倒産は、2024年1-9月累計が7,414件(前年同期比18.0%増、前年同期6,280件)に達した。現状の増加率を維持すると、年間件数は2013年以来、11年ぶりに1万件を超える可能性が出てきた。
 これから年末に向け、企業の資金需要が活発になる時期を迎える。業績回復が遅れた企業だけでなく、売上増に新たな資金調達が追いつかない企業は黒字倒産が現実味を帯びてくる。企業倒産は急増要因は少ないが、息切れ倒産が押し上げながら漸増をたどるとみられる。

企業倒産上半期推移


・「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は309件(前年同期335件)で小康状態に入った
・上場企業倒産は2年連続で発生なし
・形態別:法的倒産の構成比95.7%、年度上半期では8年連続で90%超
・都道府県別件数:前年同期より増加38都道府県、減少8県、同数1県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比75.1%、年度上半期では12年連続で70%台
・業種別件数:輸送用機械器具製造業、老人福祉・介護事業などが増加
・中小企業倒産件数(中小企業基本法に基づく)は年度上半期では5年ぶりに100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、9産業で前年同期を上回る

 2024年度上半期の産業別件数は、10産業のうち、金融・保険業を除く9産業で前年同期を上回った。
 最多はサービス業他の1,693件(前年同期比15.3%増、構成比33.2%)で、年度上半期としては3年連続で前年同期を上回った。また、1995年度以降の30年間で最多となった。
 次いで、建設業の964件(前年同期比13.1%増)が3年連続で前年同期を上回った。コロナ禍前から続く職人不足に加え、円安などによる資材価格の高騰などの影響を受けた。
 このほか、農・林・漁・鉱業58件(同26.0%増)と製造業585件(同26.3%増)、運輸業223件(同5.6%増)、情報通信業225件(同27.8%増)が3年連続、卸売業639件(同31.4%増)と小売業552件(同19.4%増)、不動産業143件(同0.7%増)が2年連続で、それぞれ前年同期を上回った。
 一方、金融・保険業は13件(同27.7%減)で、3年ぶりに前年同期を下回った。

2024年度上半期(4-9月) 産業別倒産状況
主要産業倒産件数 上半期推移

地区別 倒産件数、2年連続で9地区すべてで前年同期を上回る

 2024年度上半期の地区別件数は、2年連続で9地区すべてで前年同期を上回った。年度上半期で2年連続で全9地区が前年同期を上回るのは、1997年度-1998年度以来、26年ぶり。
 北海道150件(前年同期比21.9%増)と東北279件(同24.5%増)、関東1,878件(同15.2%増)、中部613件(同15.4%増)、近畿1,287件(同19.1%増)、中国249件(同31.0%増)、九州464件(同22.4%増)が、年度上半期としてはそれぞれ3年連続で前年同期を上回った。このほか、北陸83件(同1.2%増)と四国92件(同8.2%増)が、それぞれ2年連続で前年同期を上回った。

2024年度上半期(4-9月) 都道府県別倒産状況


※地区の範囲は以下に定義している。

東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


上半期の主な倒産

[負債額上位5社]
1.MSJ資産管理(株)/愛知県/航空機開発製造/6,413億円/特別清算
2.(株)環境経営総合研究所/東京都/新素材紙パウダー製造ほか/246億1,000万円/会社更生法
3.(株)ホクシンメディカル/兵庫県/医療機器販売、医療情報システムサービスほか/112億4,300万円/取引停止処分
4.(株)クレサービス/広島県/船舶製造、修繕業/109億6,100万円/特別清算
5.アサヒフードクリエイト(株)/東京都/飲食店経営/89億9,700万円/特別清算

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ