全国企業倒産状況

2024年上半期(1-6月)の全国企業倒産4,931件

2024年上半期の倒産 3年連続で増加、「人手不足」関連が2.1倍に増加


 2024年上半期(1-6月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が4,931件(前年同期比21.9%増)、負債総額は7,210億4,200万円(同22.8%減)だった。
 件数は、3年連続で前年同期を上回り、2年連続で4,000件台に乗せた。
 負債総額は、負債1億円以上5億円未満が989件(前年同期824件)、同5億円以上10億円未満が173件(同115件)と、中堅規模での増勢が目立つ。ただ、前年同期は純粋持株会社のユニゾホールディングス(株)(負債1,261億9,800万円、4月)など、同100億円以上が8件発生したが、2024年上半期は4件に半減し、2年連続で前年同期を下回った。
 産業別は、卸売業が626件(前年同期比37.5%増)、運輸業が244件(同29.7%増)と、円安による仕入コストの上昇や燃料高などで増加率が大きい。

 円安に伴う物価高、人件費の上昇などのコストアップが中小企業の収益を苦しめている。政府の資金繰り支援策は、経営改善や事業再生にシフトしており、コロナ禍で過剰債務に陥った企業、業績回復が遅れた企業は自立を迫られている。資金需要が活発になる秋口以降、資金調達が困難な企業を中心に、倒産を押し上げる動きが強まってくるとみられる。

企業倒産上半期推移



・「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は327件(前年同期325件)で、前年同期と同水準
・「人手不足」関連倒産は求人難58件(前年同期27件)、人件費高騰47件(同24件)、従業員退職40件(同16件)。「後継者難」倒産は254件(同210件)
・形態別:破産の構成比90.08%で過去最高
・都道府県別件数:前年同期より増加が35都道府県、減少は10県、同数が2県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比74.4%、2年連続で前年同期を上回る
・業種別件数:プラスチック製造業、建築材料,鉱物・金属材料等卸売業などが増加
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は99.97%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 金融・保険業を除く、9産業で前年同期を上回る

 2024年上半期の産業別件数は、金融・保険業を除く、9産業で前年同期を上回った。
 最多はサービス業他の1,619件(前年同期比19.8%増)で、上半期としては2年連続で前年同期を上回った。上半期倒産に占める構成比は32.8%(前年同期33.4%)だった。
 次いで、建築資材の高騰や人手不足が顕著となっている建設業が947件(前年同期比20.6%増)で、3年連続で前年同期を上回った。また、円安などによる仕入れコスト上昇が続く卸売業が626件(同37.5%増)で、2年連続で前年同期を上回った。
 4月から時間外労働の上限が制限された運輸業は244件(同29.7%増)で、4年連続で前年同期を上回った。
 このほか、農・林・漁・鉱業56件(同30.2%増)と情報通信業189件(同17.3%増)が3年連続、製造業555件(同20.9%増)と小売業536件(同23.5%増)、不動産業143件(同0.7%増)が2年月連続で、それぞれ前年同期を上回った。

2024年上半期(1-6月) 産業別倒産状況

主要産業倒産件数 上半期推移

地区別 倒産件数、2年連続で9地区すべてで前年同期を上回る

 2024年上半期の地区別件数は、2年連続で9地区すべてで前年同期を上回った。2年連続で9地区すべてが前年同期を上回るのは、1991年および1992年同期以来、32年ぶり。
 北海道140件(前年同期比12.9%増)と東北294件(同42.7%増)、九州452件(同31.0%増)が、上半期としてはそれぞれ3年連続で前年同期を上回った。
 このほか、関東1,808件(同21.4%増)と中部553件(同3.1%増)、北陸91件(同19.7%増)、近畿1,264件(同25.0%増)、中国236件(同36.4%増)、四国93件(同13.4%増)が、上半期ではそれぞれ2年連続で前年同期を上回った。

2024年上半期(1-6月) 都道府県別倒産状況


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


上半期の主な倒産

[負債額上位5社]
1.シニアコネクテッドテクノロジーズ(株)/神奈川県/情報処理サービス業/279億円/破産
2.(株)テックコーポレーション/広島県/環境機器開発販売/191億9,400万円/破産
3.WeWork Japan合同会社/東京都/シェアオフィス事業/157億2,100万円/民事再生法
4.(株)ホクシンメディカル/兵庫県/医療機器販売、医療情報システムサービスほか/112億4,300万円/取引停止処分
5.(株)インテックス/静岡県/不動産賃貸・管理/84億4,500万円/特別清算

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

事業投融資のエクシア、投資家とトラブル多発

個人投資家などから合同会社の社員権の出資を受け、累計出資者数1万1,974名、累計出資金額723億円(11月4日時点)と喧伝している投融資業のエクシア合同会社(TSR企業コード:014686724、東京都港区、代表社員:菊地翔氏)。そのエク

2

  • TSRデータインサイト

みずほ銀行がメインの企業が増加、都内シェア拡大と地方での力量発揮が課題

みずほ銀行をメインバンクとする企業数は8万773社で前年から0.4%増加した(「2024年企業のメインバンク」調査、8月21日号掲載)。4位のりそな銀行(3万9,777社)との差は4万996社で、3位維持は盤石だが、トップの三菱UFJ銀行(12万6,642社)、2位の三井住友銀行(10万442社)との差は広がっている。

3

  • TSRデータインサイト

ゾンビ企業との「取引あり」は12.1% 回収に「問題なし」約7割、適切な支援で成長を秘める

 「ゾンビ企業」に明確な定義はない。世界決済銀行(BIS)などの定義はあるが、「健全な経営状態ではないにもかかわらず、融資や補助・助成金などにより倒産や廃業を免れている企業」との認識は広がっている。

4

  • TSRデータインサイト

中国の日本人駐在員、8割超の企業が「注意喚起」 企業の約3%、大企業の14%が日本人従業員を駐在

9月、中国・深センで日本人学校に通う男児が襲われ、死亡した事件が日本企業に波紋を広げている。東京商工リサーチ(TSR)が10月上旬に実施した企業向けアンケート調査で、企業の約3%が中国に日本人従業員を駐在させており、そのうちの8割超が駐在員に注意喚起したと回答した。

5

  • TSRデータインサイト

約束手形の決済期限を60日以内に短縮へ 支払いはマイナス影響 約4割、回収では 5割超がプラス影響

これまで120日だった約束手形の決済期限を、60日に短縮する方向で下請法の指導基準が見直される。約60年続く商慣習の変更は、中小企業の資金繰りに大きな転換を迫る。 4月1~8日に企業アンケートを実施し、手形・電子記録債権(でんさい)のサイト短縮の影響を調査した。

TOPへ