全国企業倒産状況

2024年3月の全国企業倒産906件

3月の倒産 11年ぶり900件台、月次は2022年4月から前年同月を上回る


 2024年3月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が906件(前年同月比11.9%増)、負債総額は1,422億5,200万円(同3.5%減)だった。
 件数は、2022年4月から24カ月連続で前年同月を上回り、2014年4月(914件)以来、9年11カ月ぶりの900件台。3月の900件は、2013年(929件)以来、11年ぶり。
 負債総額は、4カ月ぶりに前年同月を下回った。前年同月は有機ELディスプレイパネル製造の(株)JOLED(東京・民事再生法、負債337億4,100万円)があり、その反動減となった。負債1億円以上5億円未満が191件(前年同月160件)、同5億円以上10億円未満が39件(同24件)と増加した。同1億円未満は657件(同604件)で、全体の72.5%を占めた。
 産業別は、5産業で増加した。「2024年問題」を控えた運輸業53件(前年同月比70.9%増)、建設業180件(同19.2%増)と大幅に増加した。

 3月19日、日本銀行がマイナス金利解除を決定した。金融機関の貸出金利がすぐに上昇することは考えにくいが、すでに一部では金利は上昇局面に入っている。一方で、預金金利を引き上げる金融機関も増えており、低金利の時代は夏以降、終焉を迎える可能性も出てきた。
 10年以上に及ぶ低金利で、中小企業の収益モデルは築かれてきた。物価高や人件費アップで収益が悪化した企業にとって、金利上昇は根本的なビジネスモデルの見直しを意味する。こうした状況を背景に、企業倒産は夏場を境に一段と増勢をたどる可能性が強まっている。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が810件。法的倒産の構成比は95.4%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが26都府県、減少15道県、同数6県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比72.5%、100億円以上が2カ月連続で発生
・業種別件数:機械器具卸売業、飲食料品小売業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比86.8%、10カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比99.8%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、5産業で前年同月を上回る

 2024年3月の産業別件数は、10産業のうち、5産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の283件(前年同月比0.3%増)で、19カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は31.2%(前年同月34.8%)だった。
 このほか、建設業180件(前年同月比19.2%増)が15カ月連続、卸売業119件(同41.6%増)が6カ月連続、小売業108件(同27.0%増)が2カ月連続、運輸業53件(同70.9%増)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、製造業93件(同7.0%減)が20カ月ぶり、金融・保険業1件(同80.0%減)と情報通信業30件(同6.2%減)が2カ月連続で、それぞれ前年同月を下回った。
 また、農・林・漁・鉱業11件と不動産業28件が、それぞれ前年同月と同件数だった。
 円安による原材料や資材の価格上昇だけでなく、賃上げ機運が高まるなかでの人件費負担の増加など、企業の資金負担に重く圧し掛かっている。


2024年3月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、7地区で前年同月を上回る

 2024年3月の地区別件数は、9地区のうち、北海道、中部を除く7地区で前年同月を上回った。関東313件(前年同月比1.9%増)が、23カ月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿236件(同25.5%増)が16カ月連続、中国42件(同5.0%増)が11カ月連続、東北64件(同72.9%増)と九州77件(同26.2%増)が5カ月連続、北陸18件(同12.5%増)が2カ月連続、四国26件(同188.8%増)が4カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、中部102件(同13.5%減)が3カ月連続、北海道28件(同15.1%減)が6カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2024年3月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)テックコーポレーション/広島県/環境機器開発販売/191億9,400万円/破産
2.茨木高槻交通(株)/大阪府/タクシー業/62億円/民事再生法
3.(株)日本ヒューマンサポート/埼玉県/有料老人ホーム経営ほか/62億円/民事再生法
4.(株)スピンドル/東京都/古紙回収袋販売/52億6,400万円/破産
5.(株)アール・エー/滋賀県/建築工事/25億円/特別清算


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

不動産業から見た全国の「活気のある街」 活性度トップは東京都中央区、福岡など地方都市も健闘

東京商工リサーチが保有する企業データベースや行政の発表する統計資料から6つの項目に基づいて、エリア別の不動産業「活性度ポイント」を算出した。その結果、再び都心回帰の動きが出てきた一方で、地方の穴場でも活性化に向かう地域があることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

3

  • TSRデータインサイト

ミュゼ破産で浮き彫り、勝者なき脱毛サロンの消耗戦 ~ 整備されぬ「利用者・従業員保護の枠組み」 ~

脱毛サロン最大手の「ミュゼプラチナム」を運営していたMPH(株)が8月18日、東京地裁から破産開始決定を受けた。MPHの破産は負債総額約260億円、被害者(契約者)は120万人を超え、社会問題化している。

4

  • TSRデータインサイト

破産開始決定のMPH、「抗告など対抗せず」

8月18日に東京地裁より破産開始決定を受けたMPH(株)(TSRコード:036547190)の幹部は20日、東京商工リサーチの取材に応じ、「破産開始決定に対しての抗告などはしない予定」とコメントした。

5

  • TSRデータインサイト

『生成AI』 活用は企業の25%にとどまる  「業務効率化」が9割超、専門人材不足がネック

幅広いビジネスシーンで注目される生成AIだが、その活用を推進している企業は25.2%(6,645社中、1,679社)にとどまることがわかった。

TOPへ