全国企業倒産状況

2024年1月の全国企業倒産701件

企業倒産、22カ月連続で前年同月を上回り、「突然死」の倒産が増加


 2024年1月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が701件(前年同月比22.9%増)、負債総額は791億2,300万円(同39.9%増)だった。
 件数は、2022年4月から22カ月連続で前年同月を上回った。1月としては2年連続で前年同月を上回り、2020年(773件)以来、4年ぶりに700件台に乗せた。
 負債総額は、2カ月連続で前年同月を上回った。1月としては2019年以来、5年ぶりに前年を上回った。2カ月ぶりに負債50億円以上の発生がなく、同1億円未満が522件(構成比74.4%)と、小・零細企業を主体に推移している。
 「新型コロナウイルス」関連倒産は207件(前年同月比12.6%減)で、2020年2月に集計を開始して以降、初めて前年同月を下回った。
 産業別は、7産業で増加した。最多が、飲食業(51→77件)や宿泊業(4→5件)を含むサービス業他の241件(前年同月比32.4%増)で、17カ月連続で前年同月を上回った。

 債務整理を弁護士に一任するケースも目立ち始めている。こうした企業はコロナ禍前から業績が厳しく、コロナ関連支援で資金繰りを維持したが、支援の縮小・終了で窮状が顕在化した格好だ。本業で借入返済や運転資金の捻出が難しい企業には、さらに難題が待ち受けている。なかでも返済が難しい企業には税金や社会保険料などの納付も重く、金融機関に相談やリスケを要請しないまま行き詰まる「突然死」の倒産が増えている。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が627件。法的倒産の構成比は95.5%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが27都道府県、減少13県、同数7府県
・負債別件数:負債1億円未満の構成比74.4%、100億円以上は3カ月連続で発生なし
・業種別件数:繊維・衣服等卸売業、飲食料品製造業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比89.0%、8カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)は2カ月ぶりに100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、7産業で前年同月を上回る

 2024年1月の産業別件数は、10産業のうち、7産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の241件(前年同月比32.4%増)で、17カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は34.3%(前年同月31.9%)だった。
 次いで、人手不足だけでなく、資材価格の高止まりが続く建設業が137件(前年同月比33.0%増)で13カ月連続、製造業が81件(同9.4%増)で18カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
 このほか、卸売業が79件(同46.2%増)で4カ月連続、情報通信業が28件(同21.7%増)で16カ月連続、運輸業が33件(同22.2%増)で2カ月連続、農・林・漁・鉱業が8件(同100.0%増)で3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、小売業が70件(同7.8%減)で9カ月ぶり、不動産業が22件(同12.0%減)で2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。金融・保険業は、前年同月と同件数の2件。

2024年1月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、6地区で前年同月を上回る

 2024年1月の地区別件数は、9地区のうち、中部、北陸、四国を除く6地区で前年同月を上回った。関東269件(前年同月比34.5%増)が、21カ月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿188件(同22.8%増)が14カ月連続、中国31件(同19.2%増)が9カ月連続、北海道19件(同35.7%増)が4カ月連続、東北31件(同40.9%増)と九州56件(同36.5%増)が3カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。一方、中部が87件(同3.3%減)で9カ月ぶり、四国が10件(同28.5%減)で10カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
 北陸は、前年同月と同件数の10件だった。

2024年1月 都道府県別倒産


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)ジャパンマルチメディア放送/東京都/i-dio放送事業/49億1,900万円/特別清算
2.(株)信州伊那國際ゴルフクラブ/東京都/ゴルフ場経営/33億500万円/民事再生法
3.(株)A.L.I.Technologies/東京都/空中移動用バイク開発ほか/21億円/破産
4.(株)オカベイ/福岡県/米穀・特定米穀販売/19億円/破産
5.(株)ST商店/宮城県/食肉、精肉加工販売/12億1,600万円/特別清算

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ