全国企業倒産状況

2023年9月の全国企業倒産720件

9月の企業倒産 18カ月連続で増加、物価高倒産は前年同月の2.7倍に

 2023年9月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が720件(前年同月比20.2%増)、負債総額は6,919億4,200万円(同377.6%増)だった。
 件数は、2022年4月から18カ月連続で前年同月を上回り、5月から5カ月連続で700件台に乗せた。増加率は7月から50%超が続いたが、9月は今年最低の20.2%増にとどまった。
 負債総額は、2カ月ぶりに前年同月を上回り、9月では13年ぶりに6,000億円を超えた。これは負債10億円以上は21件(前年同月21件)だったが、今年最大の負債5,836億円の大型倒産が発生したため。
 2023年9月の「新型コロナウイルス」関連倒産は234件(前年同月比9.8%増)で、2020年2月からの累計は7,127件。2023年1-9月累計は、2,359件(前年同期比47.3%増)

 2022年4月から18カ月連続で前年同月を上回っている。2023年1-9月は累計6,280件(前年同期比35.1%増)で、10月に前年の年間件数6,428件を抜き、2023年は4年ぶりに8,000件台半ばに増える可能性も出てきた。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が647件。法的倒産の構成比は96.1%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが28都府県、減少15道県、同数4県
・負債別件数:負債1億円未満の構成比75.4%、100億円以上が2カ月ぶりに発生
・業種別件数:宿泊業、道路貨物運送業、繊維工業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比88.7%、4カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)は4カ月連続で100.0%

◇倒産データ分析: https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、7産業で前年同月を上回る

 2023年9月の産業別件数は、7産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の271件(前年同月比34.1%増)で、13カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は37.6%(前年同月33.7%)だった。
 また、資材価格の高止まりが続く建設業が131件(前年同月比0.7%増)で9カ月連続、円安などによる仕入コストの上昇によるコストアップが続く製造業が68件(同17.2%増)で14カ月連続、小売業が85件(同26.8%増)で5カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。このほか、情報通信業が28件(同55.5%増)が12カ月連続、運輸業が36件(同100.0%増)で4カ月連続、不動産業が21件(同50.0%増)で2カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
 農・林・漁・鉱業4件(同66.6%減)が7カ月ぶり、卸売業75件(同3.8%減)が6カ月ぶり、金融・保険業1件(前年同月2件)が4カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2023年9月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況


主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 倒産件数、北海道と北陸を除く7地区で前年同月を上回る

 2023年9月の地区別件数は、北海道と北陸を除く7地区で前年同月を上回った。
 関東258件(前年同月比4.8%増)が、2022年5月より17カ月連続で前年同月を上回った。このほか、九州61件(同24.4%増)が15カ月連続、近畿188件(同37.2%増)が10カ月連続、東北38件(同52.0%増)が6カ月連続、中部109件(同45.3%増)と中国28件(同21.7%増)が5カ月連続、四国10件(同42.8%増)が4カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。一方、北海道15件(同11.7%減)が4カ月ぶり、北陸13件(同35.0%減)が7カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2023年9月 都道府県別倒産


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.パナソニック液晶ディスプレイ(株)/兵庫県/IPS方式液晶ディスプレイ製造/5,836億円/特別清算
2.白井松器械(株)/大阪府/医療用機器卸・製造ほか/86億9,600万円/民事再生法
3.(株)ビューティースリー/東京都/脱毛サロン運営ほか/80億円/破産
4.近畿用品製造(株)/大阪府/日用雑貨品製造/62億円/民事再生法
5.(医)社団友伸會/東京都/歯科医院経営/37億3,000万円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ