全国企業倒産状況

2019年度(令和1年度)の全国企業倒産8,631件

2019年度の倒産

年度件数は11年ぶりに増加、負債総額は30年で最低、新型コロナ倒産は13件発生

 2019年度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が8,631件(前年度比6.4%増)、負債総額が1兆2,647億3,200万円(同21.8%減)だった。
件数は年度第2四半期(7-9月期)から増加に転じ、年度では2008年度以来、11年ぶりに前年度を上回った。ただ、1990年度以降の30年間では2016年度(8,381件)に次ぎ、5番目に低い水準にとどまった。
負債総額は2年連続で前年度を下回った。負債5億円以上10億円未満257件(前年度265件)、同10億円以上50億円未満161件(同173件)、同50億円以上100億円未満13件(同16件)、同100億円以上11件(同12件)と、いずれも前年度を下回った。
一方、同1億円未満は6,490件(同6,015件)と全体の75.1%を占め、過去30年間の構成比では最も高く、小・零細規模を中心に推移したことを裏付けた。

企業倒産年度推移


  • 上場企業倒産:3年ぶりに発生なし
  • 「新型コロナウイルス」関連倒産:13件発生
  • 「人手不足」関連倒産:年度では初の400件台、「従業員退職」型が2倍増
  • 形態別:法的倒産が8,087件で構成比が93.6%
  • 都道府県別件数:前年度より増加が31都府県、減少が15道府県、同数が1県
  • 負債別:1億円未満の構成比が75.1%、過去30年間で最高
  • 従業員数別:10人未満の構成比が87.7%
  • 原因別件数:『不況型』倒産の構成比が83.0%、過去30年間で最高
  • 業種別:飲食料品、アパレル関連で増加が目立つ
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)が、年度としては11年ぶりに前年を上回る

産業別 10産業のうち8産業で前年度を上回る

 2019年度の産業別件数は、10産業のうち、8産業で前年度を上回った。
最多は、人手不足や「新型コロナ」感染拡大の影響が懸念される飲食業などを含むサービス業他2,667件(前年度比6.7%増、構成比30.9%)で、4年連続で前年度を上回った。
人手不足が懸念されている運輸業は250件(前年度比1.2%増)で、2年連続で増加。
建設業1,488件(同5.9%増)や製造業1,059件(同7.6%増)、2019年10月の消費税率引き上げ後の影響などが懸念されている小売業は1,236件(同10.4%増)は、それぞれ11年ぶりに前年度を上回った。
そのほか、卸売業1,217件(同3.7%増)が7年ぶり、不動産業252件(同4.1%増)が3年ぶり、農・林・漁・鉱業99件(同59.6%増)が2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
一方、情報通信業336件(同4.5%減)が3年ぶり、金融・保険業27件(同3.5%減)が4年連続で、それぞれ前年度を下回った。

2019年度の産業別倒産

主要産業倒産年度推移

地区別 9地区のうち北海道、中部を除く7地区で前年度を上回る

 2019年度の地区別倒産件数は、9地区のうち、北海道と中部を除く、7地区で前年度を上回った。
東北432件(前年度比18.3%増)が4年連続で前年度を上回った。四国199件(同18.4%増)が3年連続、北陸218件(同17.2%増)と九州713件(同8.0%増)がそれぞれ2年連続、近畿2,205件(同6.9%増)が2年ぶり、中国381件(同21.3%増)が8年ぶりに、それぞれ増加。関東は3,207件(同5.4%増)で、11年ぶりに前年度を上回った。
一方、北海道207件(同7.5%減)が3年連続、中部1,069件(同2.0%減)が2年連続で、前年度を下回った。
増加率が最も高い中国では、10産業のうち、7産業で増加。飲食業を含むサービス業他(79→104件)、建設業(61→84件)、小売業(61→73件)などが件数を押し上げた。また、四国は製造業(26→38件)、建設業(22→33件)など、7産業で前年度を上回った。

2019年度の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当年度の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. (株)AWH/静岡県/ホテル経営/400億円/破産
  2. 上海国際(株)/東京都/貿易仲介/200億円/民事再生法
  3. (株)AIコーポレーション/東京都/生保・損保代理業ほか/194億6,300万円/民事再生法
  4. (株)ワイ・ケイ・ジャパン/東京都/ゴルフ場経営/162億4,200万円/民事再生法
  5. (株)日本オーナーズクラブ/東京都/ホテル運営/145億4,000万円/民事再生法

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