全国企業倒産状況

2016年7月の全国企業倒産712件

2016年7月の倒産

倒産件数が712件 5カ月連続で前年同月を下回る

 2016年(平成28年)7月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が712件、負債総額は1,240億1,900万円だった。
倒産件数は、前年同月比9.5%減(75件減)。5カ月連続で前年同月を下回り、直近から遡ると7月度では1991年以降の26年間で最少だった。金融機関が中小企業のリスケ要請等に柔軟に応じていることや、大手企業を中心とした業績拡大による景気の底上げなども影響して、依然として低水準な推移が続いている。
これに対して負債総額は、前年同月比3.2%増(39億5,100万円増)で5カ月ぶりに前年同月を上回った。ただし、7月度の水準としては、過去20年間で2015年(1,200億6,800万円)に次いで2番目に少ない金額だった。負債10億円以上の大型倒産が今年最少の15件にとどまったのに対し、負債1億円未満が515件(構成比72.3%)と全体の7割を占めるなど小規模な倒産が多い状況に変化はない。

企業倒産月次推移


  • 原因別件数:「事業上の失敗」が6カ月連続で前年同月を上回る
  • 従業員被害者数が4,933人、5カ月ぶりに前年同月を上回る
  • 形態別件数:民事再生法が2カ月連続で前年同月を上回る
  • 負債10億円以上の大型倒産が今年最少の15件
  • 「熊本地震」関連倒産が4件発生
  • 「チャイナリスク」関連倒産が6件、2カ月連続の1桁台
  • 「円安」関連倒産が今年最少の3件
  • 業種別:酒類販売(3→5件)、老人福祉・介護事業(8→10件)などで増加
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)が、5カ月連続で前年同月を下回る

産業別 10産業のうち5産業で件数増加

 2016年7月の産業別倒産件数は、10産業のうち5産業で前年同月を上回った。
小売業は100件(前年同月比9.8%増)で2カ月連続で前年同月を上回った。内訳では、コンビニエンスストアなどを含む、その他の飲食料品小売業(5→10件)や男子服小売(1→4件)、酒小売(1→4件)などで増加した。また、不動産業19件(前年同月比11.7%増)と運輸業23件(同4.5%増)が2カ月連続、農・林・漁・鉱業は11件(前年同月5件)ながら、3カ月連続で前年同月を上回った。金融・保険業は2件(前年同月1件)だった。
一方、卸売業が112件(前年同月比7.4%減)で6カ月連続、製造業99件(同13.1%減)で5カ月連続で前年同月を下回った。建設業130件(同13.3%減)と情報通信業30件(同36.1%減)はともに2カ月連続で前年同月を下回り、飲食業や広告業などを含むサービス業他は186件(同15.0%減)で、4カ月ぶりに減少に転じた。

2016年7月の産業別倒産

産業別倒産月次推移

地区別 9地区のうち5地区で前年同月上回る

 2016年7月の地区別件数は、9地区のうち5地区で前年同月を上回った。
こうしたなか、中国36件(前年同月比9.0%増)と北海道30件(同3.4%増)がともに3カ月連続の増加。中部が97件(同3.1%増)で2カ月連続の増加、九州は64件(同10.3%増)で8カ月ぶりに増加に転じ、東北は26件(同13.0%増)で2カ月ぶりに前年同月を上回った。各地区の産業別では、中国が建設業(8→11件)、北海道が小売業(4→10件)、中部が卸売業(5→13件)、東北は建設業(2→7件)と小売業(2→7件)、九州は小売業(2→14件)などで件数を押し上げた。
一方、近畿154件(前年同月比24.1%減)と関東280件(同11.1%減)は、それぞれ5カ月連続で前年同月を下回った。また、四国が11件(同21.4%減)で3カ月連続で前年同月より減少し、北陸は14件(同22.2%減)で2カ月ぶりに前年同月を下回った。

2016年7月の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. 公益財団法人山梨県林業公社/山梨県/森林整備、分収造林事業/261億2,000万円/民事再生法
  2. 埼玉県厚生農業(協組連)/埼玉県/総合病院経営/64億6,800万円/破産
  3. (株)シンエイ/東京都/婦人靴卸/63億400万円/民事再生法
  4. 寺島整理(株)/静岡県/プラスチック成型加工/34億6,000万円/特別清算
  5. 新興製靴工業(株)/東京都/婦人靴製造/21億6,700万円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ