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社長の平均年齢 過去最高の63.76歳 最高は高知県65.96歳、最年少は広島県62.67歳

~ 2023年「全国社長の年齢」調査 ~


 人口減少と少子高齢化が進むなか、社長の平均年齢は2023年に63.76歳(前年63.02歳)に伸びた。前年を0.74歳上回り、調査を開始した2009年以降で最高を更新した。また、70代以上の社長の構成比が35.49%と年代別で最も多く、事業承継の遅れも浮き彫りになった。

 社長の年代別では、増収企業は70代以上(構成比45.5%)の割合が最も低い一方で、赤字企業(同25.9%)は最も高かった。高齢の社長は、長期的展望に立った設備投資や経営改善に消極的になりがちで、生産性向上を阻害し業績低迷につながりかねない。

 後継者の不在を一因とする「後継者難」倒産は、2023年に429件(前年比0.9%増)発生し、4年連続で最多を更新した。また、2023年の「休廃業・解散」4万9,788件では、70代以上の社長が7割(構成比66.6%)に迫り、倒産や休廃業・解散に社長の高齢化が影響している可能性もある。

 東京商工リサーチが2023年11月に実施した「後継者不在率」調査では、後継者のいない企業の割合が61.0%と初めて60%を超えた。高い技術力を持つ企業や、雇用や地域経済に欠かせない企業の事業継続は重みを増しており、国や自治体、金融機関の支援が待ったなしになっている。

※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)から2023年12月時点の代表者の年齢データを抽出、分析した。前回の調査は2023年1月。「社長」は、代表取締役社長のほか、個人事業主や理事長などを含む。


年齢分布 70代以上が初の35%台

 2023年の社長の年齢分布は、70代以上が35.4%(前年33.3%)と、初めて30%台後半に達した。このほか、60代、50代、40代、30代以下はすべて前年より低下し、70代以上だけが上昇した。

社長の平均年齢推移

社長の年齢と業績が逆相関に

 社長の年代別の企業業績は、直近決算で「増収」は30代以下が62.0%で最も高く、唯一の60%超え。一方、70代以上は45.5%と唯一50%を割り込み、最低だった。社長が高齢化するほど業績が伸び悩む傾向にある。
 収益面では、70代以上は「赤字」や「連続赤字」の構成比が他の年代より高く、社長の年齢に伴い逆相関がみられた。

社長年齢別 業績状況

「休廃業・解散」の社長年齢は平均72歳、4年連続で70歳超

 2023年に「休廃業・解散」した企業は過去最多の4万9,788件を記録した。社長年齢は平均72.00歳(前年71.63歳)で、4年連続で70代に乗せた。
 一方、生存企業の社長の平均年齢は63.76 歳(前年63.02歳)で、差は8.24 歳(同8.61歳)と、前年よりも年齢差が若干縮小した。

 「休廃業・解散」した企業の社長の年齢別分布は、70代以上が66.6%(同65.2%)で、2019年(56.0%)からの4年間で10.6ポイント上昇した。
 一方、30代以下は0.77%(前年0.76%)と微増で、その他の年代は軒並み前年より低下した。
 「70歳」が、事業継続の可否を判断する境目となっているようだ。

社長の平均年齢推移(休廃業・解散、生存企業)

産業別 平均年齢の最高 不動産業の65.64歳で唯一の60歳代後半

 産業別の平均年齢は、最高が不動産業の65.64歳(前年64.80歳)で唯一、60歳代後半に達した。以下、小売業64.72歳(同63.83歳)、卸売業64.64歳(同63.86歳)の順。
 社長の平均年齢が最も低いのは、ベンチャー企業が多い情報通信業の57.90歳(同57.75歳)で、唯一、60歳を下回った。
 平均年齢が最も高い不動産業は70代以上の構成比が40.8%で唯一、40%超と突出した。
 一方、平均年齢が最も低い情報通信業は、30代以下(6.4%)と40代(19.9%)では、10産業で最も構成比が高かった。一方、70代以上は17.3%と唯一、20%を下回った。

業種別 学校教育、アパレル小売で平均年齢高く、インターネット関連業種で低い

 業種別の平均年齢は、幼稚園から大学、専修学校まで含む「学校教育」の68.19歳(前年67.85歳)で最も高い。次いで、「織物・衣服・身の回り品小売業」68.18歳(同67.12歳)、農協や漁協などの「協同組合」67.90歳(同67.53歳)が続く。
 一方、平均年齢が最も低いのは、「インターネット附随サービス業」の48.66歳(同48.28歳)で、唯一40代だった。次いで、インターネット通販を含む「無店舗小売業」54.61歳(同54.28歳)が続き、インターネットを活用した業種は経営者は若い年代が多くなっている。

 年代別では、70代以上の社長が占める割合は、「織物・衣服・身の回り品小売業」が50.43%で最も高く、「学校教育」が僅差の50.41%で続く。この2業種は、経営者の過半数が70代以上ということになる。
 60代は「銀行業」が62.0%と最も高い。「協同組織金融業」60.1%、「鉄道業」50.9%、「放送業」47.5%、「ガス業」39.7%が続き、金融関連やインフラ事業で中心を占める。
 一方、30代以下と40代は、平均年齢が低い「インターネット附随サービス業」や「無店舗小売業」、「通信業」などインターネットや通信関連で構成比が高い。また、開業のハードルが低い「持ち帰り・配達飲食サービス業」や「飲食店」でも若い経営者の構成比が高い傾向をみせた。

都道府県別 平均年齢の最高は高知県の65.96歳

 都道府県別では、社長の平均年齢の最高は高知県の65.96歳。前年の64.94歳から1.02歳上昇し、2020年以来、3年ぶりのトップ。以下、前年まで2年連続でトップだった秋田県65.70歳(前年65.33歳)、前年6位だった富山県65.40歳(同64.35歳)が続き、上位3県は65歳を超えた。このほか、岐阜県64.98歳(前年19位)と奈良県64.95歳(同12位)が大きく順位を上げ、5位までに入った。
 一方、最年少は広島県の62.67歳(同61.83歳)。2021年以来、2年ぶりに最年少になった。

 総務省統計局の人口推計(2022年10月1日現在)から算出した「65歳以上人口比率」をみると、平均年齢が高い高知県で36.09%(全国2位)、秋田県で38.64%(同1位)と高い。一方、平均年齢が低い広島県で29.92%(同35位)、東京都で22.80%(同47位)だった。人口構成と社長年齢には相関関係がみられた。

都道府県別 社長の平均年齢



 ■参考■

社長の平均年齢推移(2009-2023年)

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