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全国「ブライダル関連企業」業績調査

 全国の結婚式場など主なブライダル関連198社の2020年決算(20年1-12月期)は、売上高合計が5,908億5,000万円(前期比11.4%減)で、前期より765億9,100万円減少した。利益金合計も前期の312億1,000万円の黒字から、119億2,800万円の赤字に転落した。
 2020年は三密回避による挙式・披露宴の中止や延期が相次ぎ、コロナ禍がブライダル業界を直撃。関連業界の苦境が決算数字となって顕在化した。
 4都府県に3度目の緊急事態宣言が発令され、感染拡大が深刻な地域では「まん延防止等重点措置」が適用、コロナ収束の糸口を見いだせない状況が続いている。
 業界でもコロナ禍に対応し、オンライン利用の挙式や披露宴、写真撮影に特化したフォトウェディングなど「ウィズコロナ」の新たなブライダルサービスを生み出している。ただ、市場の規模縮小は避けられず、需要がコロナ前の水準に回復するには相当な時間を要するだろう。
 大規模な集客施設の結婚式場は、従来型のビジネスモデルからの転換を迫られている。感染防止対策と新たなサービス展開という二重の難題を突き付けられ、コロナ禍に振り回されるブライダル業界はしばらく厳しい環境が続きそうだ。

  • TSR企業データベース390万社から、日本標準産業分類の業種細分類「結婚式場業」、「結婚相談業,結婚式場紹介業」、「冠婚葬祭互助会」をブライダル関連企業と定義し対象企業を抽出、分析した。
  • 売上高、当期純利益が3期【2020年(1-12月期)、2019年(1-12月期)、2018年(1-12月期)】連続で比較可能な198社が対象。各企業の単体決算を集計。

前期は「令和婚」追い風も 2020年は減収減益

 ブライダル関連の主要198社の2020年決算(20年1-12月期)の売上高合計は、5,908億5,000万円(前期比11.4%減、同765億9,100万円減)、純利益の合計は119億2,800万円(前期は312億1,000万円の黒字)の赤字に転落、減収減益となった。
 ブライダル業界は、これまでも少子化や婚姻数の減少、式の簡素化などで市場の縮小傾向が続いていた。ただ、2019年は改元に伴う「令和婚」ブームも後押しして売上高は前期比0.05%増と微増ながら増収、利益面でも同7.6%増と増益を達成し、歯止めがかかった。
 だが、2020年は年初からコロナ禍に見舞われ、事業環境が一変。挙式や披露宴のキャンセルが相次ぎ、売上確保がままならず、利益も低迷した。

ブライダル

約7割が減収

 売上高の前期比較では、2020年決算は増収企業が46社(構成比23.2%)に対し、減収企業は138社(同69.6%)で、減収企業が全体の約7割を占めた。
 2019年の減収企業は、前期103社(同52.0%)だったが、2020年は35社増え、減収企業率は17.6ポイントも高まった。

ブライダル

前期比10%以上の売上落ち込みが4割

 主要198社の売上高伸長率は、最多が前期比▲10%未満の83社(構成比41.9%)で、全体の4割を占めた。コロナ禍で、深刻な需要喪失に見舞われている実態が浮き彫りとなった。また、このうち前期比30%を上回る落ち込みは25社にのぼった。
 次いで、前期比0~5%未満が33社(構成比16.6%)、▲5%~0%が29社(同14.6%)、▲10%~▲5%が26社(同13.1%)と続き、減収企業の多さが際立つ結果となった。

ブライダル

 主要198社の年間売上高の構成比は、最多は1億円未満で52社(構成比26.2%)だった。次いで、多いのは10億円~50億円未満の51社(同25.7%)で、それぞれ全体の4分の1を占めた。
 このほか、売上高50億円~100億円未満が20社(同10.1%)、100億円以上が12社(同6.0%)で、売上高10億円以上は83社(同41.9%)にのぼり、中堅規模以上が約4割に達する。豪華な設備と大規模集客が可能な結婚式場の運営会社などが目立つ。
 施設保有の結婚式場は装置型産業で集客力が見込める反面、設備維持費、人件費など労働集約型産業の部分も併せ持つ。早急な業態転換なども難しいため、固定費削減で希望退職の募集に踏み切る大手のほか、各種の助成金、コロナ関連融資などの資金繰り支援策頼みで経営を維持する企業も多い。

ブライダル

赤字企業が30社増加

 2020年決算の損益別では、黒字企業が127社(構成比64.1%)、赤字企業は71社(同35.8%)だった。
 赤字企業は2018年39社(同19.6%)、2019年41社(同20.7%)と、2割前後で推移していたが、2020年は前期から30社増えた。
 売上減少に伴い、固定費用が負担となり赤字計上を余儀なくされた企業が多かった。


 ブライダル業界は、ハイシーズンのGW(ゴールデンウィーク)を目前に控えている。だが、2020年に続き、コロナ禍で都市圏を中心に、緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の適用が業界に暗い影を落としている。
 業界大手のワタベウェディング(株)(TSR企業コード:641093977、京都市、東証1部)の2020年12月期決算は主力の海外挙式を催行できず、減収と大幅赤字で連結ベースで債務超過に転落。3月19日に事業再生ADRを申請し、金融支援を受けながら再建を目指すことになった。
 また、今回の集計対象外だが、ホテルやレストラン、貸衣装や旅行業に至るまで、ブライダル産業は多岐にわたる業界で成り立っており、需要減による影響は関わる企業の体力疲弊につながる。
 2020年度(20年4月‐21年3月)の結婚式場の倒産は、2年連続で前年度を上回る9件発生した。このうち、7件が新型コロナの影響による。大型施設を保有する中堅規模以上ほど、業態転換が難しいジレンマを抱えている。生活様式の変化で、新たなニーズをどれだけ汲み取ることができるか、厳しい経営環境が続くなかで、ブライダル関連企業は大きな岐路に立たされている。

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