• TSRデータインサイト

上場企業「新型コロナウイルス影響」調査(3月19日現在)

 「新型コロナウイルス」の感染者数が世界で約20万人に迫る勢いで拡大するなか、世界経済への悪影響が深刻化している。感染拡大を受けて、世界の株式市場は歴史的な値下がり幅を記録し、リーマン・ショック級の不況の足音も聞こえ始めた。
 上場企業各社は「決算短信」や「業績予想の修正」「お知らせ」などで、新型コロナウイルスに関する業績への影響や対応策などを情報開示している。
 新型コロナウイルスの感染拡大で中国・武漢市で事実上の封鎖が始まった1月23日から3月19日15時までに、新型コロナウイルス関連で情報開示した上場企業は657社に達した。また、自主的な開示はないが、東京商工リサーチの独自調査で工場や事業所、店舗の稼働休止など何らかの影響が判明した上場企業は20社あった。合計677社の上場企業が、新型コロナウイルスの対応を明らかにした。
 このうち、新型コロナウイルスにより売上、利益面などの業績面でマイナスの影響を受けた企業は151社を数える。151社のなかで業績予想の修正や、従来予想と実績値との差異を公表した企業は104社で、売上高の減少額は6,436億円、利益の減少額は1,620億円に達する。

657社のうち、数値が判明した104社で売上高合計6,436億円の下方修正

 情報開示した上場企業657社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで、新型コロナウイルスの影響を言及したのは422社にのぼった。422社のうち、151社(構成比35.7%)が、売上高や利益の減少など、業績などへのマイナス要因、業績予想の修正要因として新型コロナウイルスの影響を挙げた。
 このほか、271社(同64.2%)が「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響を確定することは困難として織り込んでいない」とした。終息が依然として見通せず、上場企業の大半は影響額の確定に相当な時間を要するとみられる。
 また、マイナス影響を公表した151社のうち、業績予想の修正分や従来業績予想と実績値とのマイナス分が判明した104社の合計は、売上高が6,436億円減、最終利益は1,620億円減の下方修正にのぼった。
 売上高の下方修正額の最大は(株)エイチ・アイ・エス(TSR企業コード:292203993)で1,250億円。以下、住友化学(株)(TSR企業コード:570098572)が800億円、三菱ロジスネクスト(株)(TSR企業コード:641025076)が400億円、J.フロントリテイリング(株)(TSR企業コード:297152963)が334億円と続く。

新型コロナウイルス 主な影響・対応

J.フロントリテイリング、ゼビオHDは暖冬影響に、新型コロナウイルスが追い打ち

 大丸、松坂屋を運営するJ.フロントリテイリング(株)は3月16日、消費増税後の低迷、暖冬による衣料品の苦戦に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で訪日外国人消費、国内消費ともに大きく落ち込み、2020年2月期の売上高を前回予想の1兆1,670億円から、334億円(増減率▲2.9%)下方修正した。
 また、スポーツ用品大手のゼビオホールディングス(TSR企業コード:150009887)は3月17日、通期業績予想の修正を発表。暖冬の影響によるウインター関連用品の低迷に加え、2月中旬頃からの来店客数減少で2020年3月期の売上高を前回予想の2,384億円から、116億4,000万円(増減率▲4.9%)の下方修正した。

新型コロナウイルス 影響・対応の業種別

56社が従業員等の感染を公表

 従業員などに感染者が出たことを公表した企業は56社。国内の感染者数の増加に伴い、公表者数も増えている。
 (株)日立製作所(TSR企業コード:291054757)は3月17日、水戸事業所で勤務する従業員1名の感染を公表、茨城県内での第1号感染者となった。当該従業員と濃厚接触の可能性のある従業員のほか、同じ建屋の就業者(約1,000名)全員に対して自宅待機(在宅勤務、各種休暇等)を指示したと発表した。
 この他、自社商品・サービスの案内などが77社、感染防止のために在宅勤務などのテレワークや時差出勤の実施など、従業員の働き方の変更を公表した企業が44社あった。

業種別 製造業、サービス業、小売業で7割

 677社の業種別では、製造業が最も多く284社(構成比41.9%)を占めた。サプライチェーンの寸断により部材調達などに苦慮する企業も増え、TOTO(株)(TSR企業コード:880000600)は、トイレなど一部の商品で協力会社からの部品供給が遅延し、生産や納期遅れの発生を発表。建築現場などでの工事の進捗や引き渡しなど、他業種にも影響が出ている。
 このほか、サービス業と小売業が96社(同14.1%)と消費関連の業種が続き、上位3業種で約7割を占めた。次いで、多かったのが情報通信業84社(同12.4%)だったが、新型コロナウイルスの感染拡大による業績へのマイナス影響は半数以下の29社にとどまり、テレワーク支援などのサービス提供や案内が35社、時差出勤の公表などが10社、その他25社(重複あり)などだった。


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ