• TSRデータインサイト

データ流出のブロードリンク、経営の影響は「経験がなく、わからない」

 神奈川県庁の行政文書など個人情報が含まれるハードディスク(HDD)がインターネットオークションで転売され、高橋雄一容疑者が逮捕された事件で、容疑者の元勤務先の(株)ブロードリンク(TSR企業コード:571560431、東京都中央区)が12月9日、都内で会見した。
榊彰一社長は、「心より深くお詫び申し上げます」と管理体制の不備を謝罪、新規営業の1カ月自粛と再発防止策の構築後、速やかに社長を辞任する意向を明らかにした。
元社員の高橋容疑者がHDDなどをインターネットオークションに出品し、7,844個が落札されていた。榊社長は経営への影響について、「1カ月の活動自粛をしたことがなく、影響は初めてでわからない」と沈んだ表情で答えた。

 ブロードリンクが保管していたHDDなどの記憶領域のある媒体や、ケーブル、イヤホンなどの電子機器がネットオークションサイト「ヤフオク!」や「メルカリ」で転売されていた。外部からの情報提供後の社内調査で、高橋容疑者を特定し、警察に通報したという。
ブロードリンクの独自調査によると、高橋容疑者が2016年2月以降、ネットオークションで出品し、落札された総個数は7,844個に及ぶ。このうち、記憶領域のある商品が3,904個だった。
内訳は、「HDD」が1,286個、「SSD」が1,224個、「USBメモリ」が742個、「SDカード類」が558個、「スマートフォン」が75個、「タブレット」が19個。記憶領域のない商品では、ケーブルやイヤホンも外部に持ち出しており、ブロードリンクの甘い管理体制が浮き彫りになった。
高橋容疑者が入社後にブロードリンクが扱った記憶領域のある商品のうち、不正が疑われるものは22万8,832個という。そのうち、高橋容疑者がネットオークションに出品、落札された3,904個をシリアル番号などの突き合せ作業を進めていく。
ブロードリンクは対策本部を立ち上げ、流出したHDDなどの元の所有者特定を急ぐが、調査完了の時期は「わからない」と答えた。

会見する榊社長(12月10日撮影)

会見する榊社長(12月10日撮影)

 ブロードリンクは再発防止策として、従来は要望に応じてHDDなどの破壊後の写真を撮影していたが、今後はすべて写真撮影することや金属探知機での身体確認の強化などをあげた。
しかし、顧客の「命」ともいえる「データ」を預かり、消去する業務の根底は『信頼』がすべてだ。そこをないがしろにして長年、商品流出に気付かなかった責任は重い。
顧客の信頼を失った影響は想定以上に広がるだろう。12月9日、防衛省はブロードリンクを9カ月間の指名停止にした。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年12月11日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多 ~ コメ作りの「あきらめ」、さらに増加も ~

コメ価格の高騰が止まらない。農水省が18日に発表した3月の米価格(相対取引価格)は2万5,876円で、1年前の約2倍の高値だ。 政府は備蓄米を放出したが、小売業者にはなかなか届かず、韓国産やアメリカ産の輸入拡大も検討されている。

2

  • TSRデータインサイト

パン屋の倒産が急減、コメ高騰でパンに注目 ~ 高級パンブームや小麦高騰の影響も一巡 ~

コメ価格の高騰が食卓と倒産に変化を及ぼしている。高級パンブームが崩壊したことに加え、小麦粉の価格上昇でパン屋さんの倒産が増加していたが、ここにきて急激に減少していることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

2025年4月「人手不足」倒産 最多の36件 人材の流動化が進み、「求人難」「従業員退職」が急増

2025年4月の「人手不足」が一因の倒産は、36件(前年同月比44.0%増)で、4月としては2013年以降では過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

パナソニックHDの早期希望退職募集 2012年以降の国内募集で最大規模、13年ぶり募集5,000人台

パナソニックホールディングス(株)(TSRコード:570191092)は5月9日、国内外で1万人規模の人員削減を発表した。国内は5,000人規模の見込み。

5

  • TSRデータインサイト

「人材派遣業」倒産、1-3月は過去最多の29件 ~ 「円高」、「トランプ関税」でさらに増加も ~

人手不足で人材の獲得競争が厳しさを増すなか、人材派遣会社(労働者派遣業)の倒産が急増している。

TOPへ