• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

ジャパンディスプレイの取引先が気を揉む「二つの不安」

 経営再建中の(株)ジャパンディスプレイ(TSR企業コード:294505385、以下JDI)への問い合わせが増加している。
JDIの2019年3月期第2四半期(7-9月)の連結売上高は1,110億円(前年同期比40.1%減)と大幅な減収だった。第2四半期中の売上計上を見込んでいた主力取引先向け製品の納入が第3四半期以降にずれ込んだのが減収要因だ。一方、利益面は2018年3月期に実施した構造改革が奏功し、赤字幅は縮小した。しかし、売上高総利益(粗利)率は6.6%と、まだ安定的な収益体質にはなっていない。
また、2019年3月期(通期)の売上高予想は従来の前年度比10-20%増から5-15%増に下方修正している。

筆頭株主の騒動が飛び火

 東京商工リサーチにJDIに関する問い合わせが増えている背景は、JDIの業績がこれまでのアナウンスより悪化したこと以外にもう一つある。
筆頭株主である(株)INCJ(TSR企業コード:033865507)の親会社、(株)産業革新投資機構(TSR企業コード:298011956)を巡る一連の騒動だ。今年9月、(株)産業革新機構は会社分割の形態でINCJを設立し、産業革新投資機構(JIC)へ商号を変更。経営不安企業の「救済機構」と揶揄された投資姿勢を改め、金融・投資のプロによる迅速かつ柔軟な投資判断でリスクマネーの供給を加速させる予定だった。しかし、田中正明社長らJIC経営陣と経済産業省の対立が解けず12月10日、JICは田中社長を含む大半の取締役の辞任を発表。JICは事実上、活動休止に追い込まれた。

コミットメントラインの行方

 INCJはJDIの筆頭株主であると同時に、JDIが金融機関と締結している1,070億円のコミットメントラインの連帯保証人でもある。現在のコミットメントライン契約は、2018年8月8日~2019年8月7日まで。JDIの取引先の一部は、JICを巡る騒動が契約更改に悪影響を与えることを心配している。
これに対し、JDIの担当者は「(JDIの)株式、保証契約などは全てINCJに引き継がれた。次年度以降の契約更改に関する交渉もINCJが引き継ぐことになる」と話す。
一方、INCJの担当者は、「旧・産業競争力強化法で、産業革新機構の活動は2025年3月までと定められていた。(JDIを含め)既存の投資案件はこの時期までに何かしらの形でイグジットを予定していた」という。その上で「今回のJICの件がINCJの既存案件への支援体制に影響を与えることはない。また、INCJからJICへのイグジットは想定していない」と話す。
12月11日、INCJはJICの一連騒動を受けて「(JIC田中社長らの)辞任意向表明は、 INCJ の経営に影響を与えるものではない」との声明を発表。14日にはJDIが「(JICを巡る一連の騒動が)INCJ の当社に対する支援姿勢へ影響を与えるものではない」旨をリリースしている。
中国企業との資本提携に向けた交渉も一部で報じられるが、JDIはこれまでも「グローバルパートナー」との提携について言及し、果たされてこなかった。2019年8月のコミットメントラインの更改も含め、JDIの取引先は見守るだけの日々が続きそうだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年12月20日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ