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破綻の構図 あそかライフサービス(株)~信用失墜とオーナーの不正経理に翻弄された結末は・・・

 訪問介護サービスと福祉用具レンタルのあそかライフサービス(株)(TSR企業コード:295749270、江東区、田中ヨウ子社長)が3月22日、東京地裁に準自己破産を申請し3月28日、破産開始決定を受けた。負債は3億5,852万円だった。
2014年6月、当時の親会社だった(社福)あそか会(TSR企業コード:292367481、江東区)の元常務理事で当社オーナーの不正が報道され、社会問題に発展した。その後、役員刷新などで再建を図ったが、信用低下と2016年以降の業績悪化で従業員の退職が相次いでいた。2018年に入ると深刻な経営不振に陥ったが、オーナーや役員が破産に反対。社長が採った最後の手段は、取締役会決議なしの準自己破産の申請だった。

 あそかライフサービスは1995年9月、有料老人ホーム運営の「あそか会」の関連会社として設立された。あそか会が運営する住宅型有料老人ホーム「六華園」(江東区)の入居者への訪問介護サービス提供と福祉用具のレンタルを手掛けていた。
長年にわたる実績で利用者からのサービスへの評価は高く、事業は順調に推移していた。だが、2014年6月、当社を巻き込んだあそか会の不正が大きく報道された。これが坂道を転げ落ちる契機となった。

あそかライフサービスの本社

あそかライフサービスの本社

全国紙1面トップで不正報道

 2014年6月2日付の朝日新聞。1面トップの見出しは「社福、親族企業に利益」だった。
あそか会の元常務理事(2014年5月退任)で当社のオーナーが、あそか会から当社を経由し、自身の親族が経営する複数の企業に高い業務委託料を支払うなどして十数億円の公金を流用した。
あそか会は社会福祉法人だ。社会福祉法人には自治体などから多額の税金が補助金として交付されている。オーナーの公私混同で、当社もその不正の一端に加担する形となった。不正発覚後に対応を協議し、当社はあそか会に約3億円を返還することを決定。この3億円はオーナーが連帯保証することで決着した。
当社は役員一新で、再出発を目指すはずだった。ところが、今度は当社の帳簿にオーナーが代表を兼務する複数の企業に多額の貸付金(2016年8月期3億3,938万円)や未収入金(同1億5,926万円)が計上されていることが発覚。事実上、回収不能な資金の存在が浮かび上がった。

従業員に広がる不安の渦

 破産申立書によると、2015年11月頃には「ヘルパーの退職や登録ヘルパーが来ないのは、今回の不正が関係しているのではないか」といった疑問に加え、昇給や退職金など給与面への影響を心配する声が上がっていたという。
2015年12月4日、15時30分から係長以上を対象に社長(当時)から状況説明と従業員の質問に答える臨時会議が開催された。その席上、社長から不明金やオーナーが運営する企業との関係、当社への影響、今後の方向性などが語られた。
不正指摘から約1年後の2015年4月以降、本来であれば「六華園」の入居者の一時金はあそか会の口座に入金されるはずが、当社口座に振込まれ、その資金がオーナーの運営する企業に流出していた。あそか会が仕入れた調剤薬も、あそか会と業者の間に当社が入り、手数料を上乗せしてあそか会から支払いを受けていた。その資金もオーナー運営の企業に流出しており、不透明な資金の流れが一気に表面化した。

相次ぐ人員流出で事業縮小

 2016年8月31日、現社長の田中ヨウ子氏が社長に就任した。同年8月期決算は売上高4億9,323万円に対し、28万円の当期純損失を計上した。先行きは不透明で業績悪化が続くと従業員の士気は下がり、退職した従業員が立ち上げた介護事業に従業員の流出が相次いだ。介護事業にとって人員不足は事業運営に直結する。人員が足りない当社は、ほどなく事業規模を縮小せざるを得ない状況に直面した。田中社長が再建を図る中、2018年1月にあそか会から仮差押決定通知が届いた。

オーナーらによる破産申請への妨害

 過去の不正に関連するあそか会への債務は、オーナーが対応すると語っていたため、すべてをオーナーに一任していた。そのため、あそか会からの仮差押決定通知書は当社にとり寝耳に水の出来事だった。人員流出に歯止めが掛からない中、あそか会からの仮差押決定通知書は、事業継続が困難なことを社長だけでなく他の役員も認識せざるを得なかった。
こうした状況の中、オーナーは社長に「廃業は仕方ないが破産は許さない」、「自分も金を出すので、お前も家を売りそのお金を会社に入れなさい」などと繰り返し詰め寄った。また、オーナーの取り巻き役員が破産申請に反対すると、他の役員も「会社を破産にした責任を取りたくない」と言いだし、話し合いを拒絶した。
杜撰な資金流用にまみれ、破産しか残されていないが取締役会を開催できない。窮地に追い詰められた田中社長がオーナーの呪縛から逃れるため最後に選んだ手段は、取締役会決議なしの準自己破産の申請だった。


 会社は株主のものか、役員、従業員のものか。常に語られる永遠のテーマだ。
当社はオーナーによる会社の私物化で、否応なしに不正の舞台に足を踏み入れた。会社の実権を掌握する人にすり寄り、保身を図る人はどこの世界にもいる。
東京商工リサーチの調査では、2017年の上場企業のコンプライアンス(法令順守)違反は64社で過去最多を記録した。企業規模を問わず、コンプライアンスが当然の時代になっている。そして、誤った経営判断や不正は、早急な是正と対応が必要になる。資金の私的流用という究極の不正で会社が存亡の危機に立った時、それでも責任逃れで陰に陽に蠢動(しゅんどう)する役員が負う責任は重い。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年4月27日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)

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