• TSRデータインサイト

「チャイナリスク」関連倒産(2月)

 2月の「チャイナリスク」関連倒産は1件(前年同月比83.3%減)にとどまった。1月は2017年4月以来、9カ月ぶりに前年同月を上回ったが、一転して大幅に減少した。負債総額は5億円(同91.2%減)で、件数の減少に伴い負債額も大幅に縮小した。
 なお、倒産に集計されない事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は、2月の発生はなかった(前年同月は1件)。


  • 「チャイナリスク」関連の集計基準
    「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の8項目のどれかに該当するものを集計している。
    1. コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)
    2. 品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)
    3. 労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)
    4. 売掛金回収難(サイト延長含む)
    5. 中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)
    6. 反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)
    7. 価格競争(中国の在庫調整に伴う相場下落、安価製品との競合など)
    8. その他

チャイナリスク関連倒産月次推移

 2018年(1-2月)にチャイナリスク関連で倒産した8件を業種別でみると、繊維工業と機械器具卸売業がともに2件(構成比25.0%)で最多だった。また、繊維・衣服等卸売業も1件(同12.5%)発生し、チャイナリスクがアパレル関連業種に大きな影響を与えているようだ。ただ、それ以外の業種でも電子部品製造、建築資材卸など、幅広く発生している。
 形態別では、8件のうち、消滅型の破産と特別清算が合計7件(同87.5%)に達した。また、銀行取引停止の1件も今後、破産へ移行する見込みで、2018年1-2月にチャイナリスク関連で倒産した企業はすべて消滅することになる。
 これはコスト削減を前面に打ち出して中国へ進出したり、中国からの安価な商品調達を目指した企業の生き残りが難しいことを示している。安価で豊富な労働力、「中国=低価格」とする図式はすでに過去のものになろうとしている。中国での取引を目指した日系企業は、価格メリットからの戦略転換も選択肢として迫られていることを認識すべきだろう。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人材派遣業」倒産、1-3月は過去最多の29件 ~ 「円高」、「トランプ関税」でさらに増加も ~

人手不足で人材の獲得競争が厳しさを増すなか、人材派遣会社(労働者派遣業)の倒産が急増している。

2

  • TSRデータインサイト

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多 ~ コメ作りの「あきらめ」、さらに増加も ~

コメ価格の高騰が止まらない。農水省が18日に発表した3月の米価格(相対取引価格)は2万5,876円で、1年前の約2倍の高値だ。 政府は備蓄米を放出したが、小売業者にはなかなか届かず、韓国産やアメリカ産の輸入拡大も検討されている。

3

  • TSRデータインサイト

大型連休は「博物館・美術館」がオススメ? ~ 物価高でも魅力的な入館料が追い風、業績も回復 ~

コロナ禍で打撃を受けた博物館・美術館が物価高のなかで健闘している。体験型やデジタル対応など新しい取り組みや、比較的安価な入館料で集客力を高めている。

4

  • TSRデータインサイト

次世代電池のAPB、経営騒動の舞台裏 ~ APB・大島麿礼社長 単独インタビュー ~

次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発や製造を手がける技術系ベンチャーのAPB(株)が注目を集めている。大島麿礼社長が東京商工リサーチの単独取材に応じた(取材日は4月10日)。

5

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

TOPへ