人口減少に負けない地域経済と、選ばれる長崎県を目指して ~長崎県・平田研知事インタビュー 2026/10/20
今回は平田研(ひらた けん)長崎県知事への特別インタビュー。平田知事は、国土交通省出身で長崎県副知事も務めた実務家として手腕が注目されている。就任から約5ヶ月が経過し、地域経済、人口減少対策、社会資本や防災・減災、スポーツと経済をテーマに、「長崎県を前へ」進めるための舵取りについて聞いた。(インタビュー日:2026/8/24)
知事就任から約5ヵ月が経ちました。現在の県政運営をどのように評価されていますか。
自分自身で評価するのは難しいところがありますが、まずは選挙で掲げた七つの公約を一つ一つ着実に実現していくことを重視しています。
公約の中には、新幹線整備のように、実現までに一定の時間を要するものもあります。一方、物価高騰対策など、予算措置を講じることで早期に対応できるものについては、すでにすべて着手することができました。まずは政策を実現するためのスタートは切れたと思っています。
「人口減少に負けない経済」、「地域を残していく」、「未来を担う人材を育てていく」を県政の大きな柱として、県内の産業や暮らしを支えながら、長崎県をさらに前へ進めていきたいと考えています。
長崎経済の状況
現在の長崎県の経済状況をどのように見ていますか。
全体としては緩やかな回復基調にあるといわれています。しかし、県内企業を取り巻く環境は、物価高騰や賃金上昇、人手不足に加え、原油や資材価格の上昇などにより、とりわけ小規模・中小事業者においては、依然として厳しい状況が続いていると認識しています。
一方で、長崎県の将来につながる明るい動きもみられます。これまで基幹産業として発展してきた造船に加え、半導体や航空機関連などの成長分野で投資や企業立地が進んでいます。また、洋上風力をはじめとする海洋エネルギー分野についても、長崎がこれまで培ってきた海洋関連技術を生かした展開が期待されています。そのほか、観光についても国内旅行需要の宿泊客は着実に増加しており、農業・水産業では輸出が伸びるなど、各分野で成長の兆しが見られます。
こうした各産業のいい動きもある一方で、やはり物価高やエネルギー価格の高止まり、人手不足・担い手不足などの課題も抱えていることから、県としても引き続き各産業分野の振興と地域経済の活性化に向けた取組を着実に進めていかなければならないと考えています。
地域経済を前に進める
人口減少が進む中で、成長産業と県民生活を支える産業をどのように両立していきますか。
人口が減少する中では、県内だけを対象にしていると、どうしても市場が縮小してしまいます。そのため、県内需要だけに頼るのではなく、県外や海外から新たな需要を取り込んでいく視点が重要です。
特に、県内企業が持っている技術や商品、サービスを県外・海外に展開していくことは、人口減少の影響を抑え、地域経済を維持・成長させるうえで大きな可能性があります。県としても、こうした企業の挑戦をしっかりと後押ししていきたいと考えています。
一方で、交通、医療、福祉など、県民の生活に欠かせない産業については、人口減少が進んでもサービスを維持していかなければなりません。そこで、先端技術やデジタル技術などを活用し、生産性を高めながら、サービスを維持していくことが必要です。
「人口減少に負けない地域経済」の実現に向け、どのような取り組みを進めていますか。
知事就任以来、物価高騰など県民生活や事業者が直面している喫緊の課題に対応するため、スピード感を持って取り組んできました。
就任直後の3月補正予算では、県内事業者等の賃上げに伴う負担を軽減するための直接支援を行うとともに、人材の確保や定着につながる職場環境の改善も支援しました。
さらに、6月補正予算では、造船、航空機、半導体などの成長産業の振興や企業誘致に加え、中小・小規模事業者の事業承継支援などにも取り組んでいます。目の前の課題への対応だけでなく、中長期視点のもとで、地域経済を支える基盤づくりに向けた施策を行っています。
加えて、国が推進する「地域未来戦略」の動きを的確に捉え、地域内で重点的に支援する産業分野や地場産業に係る「地域産業成長プラン」についても、計画案を取りまとめたところです。
引き続き、県内各地の様々な方々と議論を深めながら、県民の皆様にとって効果的と思われる新たな政策について、前例にとらわれず、スピード感を持って構築し、県民の皆様に具体的な成果を実感していただけるよう、着実に実行してまいります。
今後の社会資本整備や防災・減災対策
社会資本整備や防災・減災対策についてはいかがでしょうか。
長崎県は県土の約7割を離島・半島などの条件不利地域が占めており、そこに県全体の約3分の1にあたる約40万人の方々が暮らしています。また、土砂災害警戒区域も多く、大規模災害が発生すれば甚大な被害となることが懸念されます。
このような中、人口減少に左右されない持続的で強靱な経済基盤をつくり、地域を残していくためには、頻発化・激甚化する自然災害から県民の生命・財産・暮らしを守る県土強靱化、交通ネットワークの充実が重要と考えております。
また、九州新幹線西九州ルートについて、令和4年に開業した長崎~武雄温泉間においても、すでに、速達性や安全性、定時性などの効果のほか、大雨等の災害時にも他の交通機関と比較して影響が少ないなど、リダンダンシー(代替)機能を発揮しているものの、その効果を最大限発揮するためには、一日も早く、全国の新幹線ネットワークへつながることが必要と考えます。
未整備区間である新鳥栖~武雄温泉間については、去る7月17日に、国土交通省の水嶋前事務次官と佐賀県の山口知事の間で、令和9年度から環境影響評価を実施することが合意され、議論の進展を図るうえでの重要な一歩が踏み出されました。本県としても、引き続き、国や佐賀県をはじめ関係者との実践的な協議を重ねながら、全線フル規格による整備の早期実現に向けて全力で取り組んでまいります。
スポーツと経済
プロバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」がリーグ優勝で日本一となりました。地域経済に与える影響をどう考えていますか。
長崎ヴェルカのB1優勝は、経済面での効果にとどまらず、県民の皆さんに大きな感動と誇りをもたらしました。改めて、チーム関係者及びファンの皆様に深く敬意を表します。
プレーオフやオールスターゲームなどの開催を通じた交流人口の増加に伴い、宿泊、飲食、交通など、幅広い分野で消費が拡大したものと考えます。また、全国的に長崎の知名度や話題性が高まることで、更なる観光誘客や地域活性化も期待されます。
加えて、スポンサー企業にとっても、チームを応援することを通じて企業イメージの向上や地域との結びつきの強化につながるなど、プロスポーツを核とした地域経済の好循環を生み出す大きな契機になるものと考えています。
県としても、引き続き長崎ヴェルカの活動を後押しし、スポーツを通じた地域の活性化に取り組んでいきたいと考えています。新シーズンも長崎ヴェルカらしい熱いプレーで県民の皆さんに夢や希望を届け、リーグ連覇を果たされることを期待しています。
最後に
長崎県内の企業、そしてこれから長崎への進出を検討している企業の経営者にメッセージをお願いします。
まず、県内企業の皆さんには、日々の事業活動を通じて地域の雇用を支え、長崎県の経済発展に貢献していただいていることに感謝申し上げます。
また、長崎県への進出を検討している企業の皆様には、長崎は、造船や洋上風力などの海洋関連産業、ITをはじめとする情報関連産業、農林水産業、観光産業など、さまざまな産業が集積していることを知っていただきたいです。特に、高度な技術力やものづくりの基盤、アジアに近い地理的優位性、再生可能エネルギーの大きなポテンシャルなどを有しており、幅広い産業基盤と成長可能性は長崎ならではの大きな魅力であると考えます。
さらに、大学や高等専門学校、工業高校など、優秀な人材を輩出する教育機関もあります。産学官の連携を進めながら、これからの成長産業を担う人材の育成にも力を入れていきます。
長崎には、まだまだ多くの可能性と発展の余地があります。県内企業の皆さん、そして長崎への進出を検討されている企業の皆さんには、それぞれが持つ技術やノウハウ、強みを生かして積極的に事業を展開していただき、そのことが地域経済のさらなる活性化につながることを期待しているところです。県としてもその取組をしっかり支援してまいります。