• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

「情報サービス業」が好調 利益は5年間で1.8倍 DX・AI需要で業績が過去最高、大手寡占が進む

2026年「情報サービス業」業績動向

 DX需要や生成AIの普及を背景に、情報サービス業の2025年度業績がコロナ禍後の5年間で最高となったことがわかった。ただ、従業員300人以上の大手が、売上高、利益のそれぞれ8割超を占め、大手寡占の構造が年々強まっている。

 マーケットの成長が大手に集中するなか、小・零細企業は投資や人材確保にネックとなり倒産も増加している。規模による優劣が二極化し、今後はAI活用と高付加価値化が競争力を左右するステージを迎えている。

 情報サービス業4,417社の2025年度の業績は、売上高が32兆6,569億円(前年度比7.7%増)、当期利益は3兆2,755億円(同28.9%増)で、いずれも過去5年間で最高を記録した。

 ただ、業績への恩恵は業界全体に均等に広がらず、売上高と当期利益を従業員300人以上の大手が8割以上占める構造は、過去5年間で変わっていない。このため、2026年度上半期の情報サービス業の倒産は174件(前年同期比41.4%増)で2017年度以降の10年間で最多を更新した。

 規模による格差拡大の背景は、技術力、投資力、人材確保、受注案件などの違いが考えられる。大手・中堅企業は、待遇改善で高度なIT人材を確保し、大型案件や専門性の高い案件を受注している。一方、小・零細企業はAI人材の採用が難しく、さらに下請け案件で十分な利益を確保できない状況が定着している。

 情報サービス業は今後、AIを単なる開発効率化の手段から、顧客業務への知識の深化やセキュリティ対応などと組み合わせ、高付加価値サービス提供の手段とすることが重要になる。特に、中小・零細企業は、特定業界への専門特化、上流工程への進出、人材育成や他社との連携など、価格競争から脱却する独自の取り組みが求められる。

 情報サービス業のマーケットは、DX需要やAIの広がりで拡大途上にあり、当面はAIが情報サービス業全体の生産性を引き上げることが期待される。だが、その先には規模の格差だけでなく、投資力や技術開発力などの差別化が問われるだろう。

本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約450万社)から、日本産業分類(中分類)「情報サービス業」の2025年度(2025年4月期~2026年3月期)を最新期とし、5期連続で売上高・当期利益が比較可能な4,417社を抽出、分析した。


 情報サービス業4,417社の2025年度の業績は、売上高が32兆6,569億円(前年度比7.7%増)、当期利益は3兆2,755億円(同28.9%増)だった。

 2021年度と比較すると、売上高は32.4%増に対し、当期利益は81.8%増で、利益の伸びが売上高を大幅に上回った。

 利益が大幅に伸びた背景は、旺盛なDX需要や生成AIの普及で、付加価値が上昇したとみられる。2022年11月、OpenAIのChatGPTの公開以降、生成AIが急速に進化し、ソフトウェア開発やテスト、ドキュメント作成など幅広い業務で、情報サービス業のニーズが高まっている。さらに、近年はAIエージェントの実用化も進み、複数作業を連続処理し開発期間の短縮や作業工数の削減も期待されている。

売上高・当期利益の過去5年間推移

売上高・利益ともに大企業に集中、利益の成長力に大きな差

 情報サービス業の当期利益は、2021年度から2025年度に大幅に増加した。だが、その伸びには企業規模による差がみられた。

 従業員300人以上の企業は、2025年度の当期利益が2021年度から82.0%増加した一方、49人以下の企業は33.5%増にとどまった。いずれの規模も利益は増加したが、伸びは大企業が小・零細企業を大きく上回り、成長力の差が鮮明となった。

 2025年度の当期利益合計は、従業員300人以上の企業が86.3%を占めた。一方、49人以下の企業は1.0%にすぎない。売上高も、300人以上の企業が全体の83.6%と8割を超える。

 企業数では49人以下の企業が2,448社と5割以上を占めるが、マーケットの拡大は大手がけん引している構造は変化していない。

 小・零細企業を取り巻く厳しい事業環境は、倒産動向にも表れている。2026年度上半期の情報サービス業の倒産は174件に達し、2017年度以降の過去10年間で最多だった。倒産のうち従業員5人未満は143件で、全体の82.1%を占めた。業績格差が拡大し、小・零細企業の淘汰が加速している。

従業員数別当期利益

損益別でも規模格差が鮮明、赤字企業率は大手の5倍以上

 2021年度から2025年度までの損益は、従業員数300人以上の大手では赤字企業率が4%前後で推移し、2025年度は4.2%だった。一方、同49人以下の中小・零細企業は20%以上で推移し、2025年度は21.7%と同300人以上の5倍以上だった。大手・中堅企業は、賃金などの待遇改善で高度なIT人材を確保し、大型案件や専門性の高い案件を受注することで収益向上につなげている。これに対し、小・零細企業は、AI関連への投資や人材採用、賃上げへの対応が難しく、さらに下請け依存から十分な利益を確保できていない。

従業員数別赤字企業率

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ