コロナ禍で7割が減収、3分の1が赤字に 「まぐろ関連業界636社」業績動向調査
大トロ、まぐろ丼、赤身…。すしや刺身などで親しまれ、日本だけでなく世界で消費が広がる「まぐろ」だが、新型コロナ感染拡大で状況が一変している。漁船はコロナ感染対策に追われ、すし店は時短営業、酒類提供の自粛が響く。「まぐろ」に関わる水産業、飲食業など636社の最新期の決算で赤字企業が105社増え、3社に1社が赤字だった。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(390万社)で、「まぐろ」に関連する漁業や製造加工、卸、小売、飲食業などを独自に抽出し、分析した。本調査は初めて。
「まぐろ」に関わる業界は新型コロナの影響が直撃し、最新期の売上高は3兆2,146億5,400万円(前期比2.9%減)と減収に転じた。減収は全体の7割の456社(構成比71.6%)に及び、290社(同45.5%)は10%を超える大幅な減収だった。
一方、減益は396社(前期254社)で6割(構成比62.2%)に達し、赤字は228社(前期123社)で前期から105社増加し、全体の35.8%を占めた。
総務省家計調査によると、近年は鮮魚消費量が減少し、「まぐろ」も例外ではない。コロナ禍でさらに消費が落ち込むが、一方で2021年7月の国際会議では2022年のクロマグロ漁獲枠(30キロ以上)は21年比で一律15%増で合意している。漁獲量が増え価格が手ごろになると、消費量の回復も期待されるが、水産業界や飲食業界の前に立ちはだかるコロナ禍の収束次第の状況がしばらく続く。
- ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(390万社)から、営業種目や扱い品に「まぐろ」「すし」の記載がある企業のうち、2020年3月期以降を最新期とし、3期連続で売上高と当期純利益を比較可能な636社を抽出し、分析した。
売上高が大きく低迷、コロナが響く
636社の売上高は、最新期が3兆2,146億5,400万円(前期比2.9%減)と落ち込んだ。前期は同1.7%増で、増収から一転し減収に転じた。
当期純利益は、最新期は153億9,400万円(同58.9%減)と大幅に減少。2年連続の減益となり、落ち込み幅は大幅に膨らんだ。
最新期はコロナ禍による需要減で、売上高、純利益ともに厳しい業績となった。
売上高、前期比マイナス10%未満が4割超
636社のうち、減収は456社(構成比71.6%)、増収・横ばいは180社(同28.3%)で、7割が減収に追い込まれた。
売上高伸長率は、最多が前期から10%超の減収だった「▲10%未満」の290社(同45.5%)。次いで「0~5%未満」の89社(同13.9%)が横ばい、または増収となった。
営業時短、酒類提供の自粛、来店客数の減少、休業要請などで、すし店を含む飲食業が打撃を受け、連鎖的に卸売業にも波及した。さらに、漁業関係でも休船や操業が滞り、コロナ禍の余波が広がった。

最新期は減益が6割で増益を上回る
利益は、前期は増益が265社(構成比41.6%)、減益が254社(同39.9%)と拮抗し、横ばいは117社(同18.3%)だった。
だが、最新期は減益が396社(同62.2%)と、1.5倍に増えた。一方、増益は179社(同28.1%)に減少し、減益と増益が逆転した。
コロナ禍で、「まぐろ」の関連業界は売上高が落ち込み、利益も人件費など固定経費を吸収できず減益に転じた。
最新期は赤字が約100社増加
損益別では、黒字は前々期が516社(構成比81.1%)、前期も513社(同80.6%)と、2期連続で黒字企業が8割を上回った。
だが、最新期では黒字が408社(同64.1%)、赤字が228社(同35.8%)で、赤字が前期から105社増加した。
減収に加え、コストを吸収できず減益となり赤字に転落する企業が目立った。

小・零細規模の企業が大半
資本金別では、「1千万~5千万円未満」が313社(構成比49.2%)と約半数を占める。
次いで、「1百万~1千万円未満」が161社(同25.3%)、「5千万~1億円未満」が83社(同13.0%)で続く。「1億円以上」は40社(同6.2%)で、その他「個人企業他」が33社(同5.1%)、「1百万円未満」が6社(同0.9%)だった。
小・零細規模の企業が大半を占めるが、すし店は「1億円以上」の大手すしチェーンから個人経営の零細規模まで裾野が広い。
コロナ禍で“まぐろ”関連業界の苦しい実態が浮かび上がった。漁業は、もともと燃料高や人手不足などで厳しい事業環境にさらされていた。そこに押し寄せたコロナ禍で、船員の入出国がスムーズに進まず操業延期・休止を余儀なくされた事業者もあり、一層苦戦を強いられた。
また、消費者に直結するすし店などの飲食業の苦境が、卸売業者や水産業者などにも伝播し、まぐろに関連する業界全体でコロナ禍の影響を受けている。
まぐろ漁協関係者は、コロナ禍の影響は「消費が細り、一時的に魚価は下落したが、徐々に回復している。漁船の操業は、船員を派遣する際、検査や隔離措置でなかなかスムーズにいかないこともあるが、なんとか対応できている」と、回復への足取りを強調する。
まぐろ漁獲は、資源保護のため各地域漁業管理機関(RFMOs)により制限、管理されているが、資源回復などを背景に2022年の太平洋クロマグロの漁獲枠の拡大が現実味を帯びる。クロマグロはまぐろ類の中でも高級品種だ。コロナ禍の収束で消費が回復すると、手ごろな価格相場が「まぐろ」に関わる業界復活の起爆剤になるかもしれない。
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