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2021年度「賃上げアンケート」調査

 コロナ禍が2年目に入った。厳しい業績が続くが、2021年度に賃上げを実施する企業は66.0%で、前年度を8.5ポイント上回ったことがわかった。前年度(2020年度)は、コロナ禍の影響を大きく受け、2016年に定期的な調査を開始以降、最低の57.5%を記録した。ただ、「官製春闘」で賃上げ実施率が80%を超えたコロナ前の水準からすると、10ポイント以上低い結果となった。
 規模別では、「実施する」は大企業が74.1%に対し、中小企業は64.8%だった。実施する企業のうち、上げ幅の中央値は大企業で2.0%、中小企業で2.3%で、中小企業の中でも賃上げ余力の差が生じている。
 産業別では、宿泊業や旅行業、飲食業などが含まれるサービス業他の「実施する」は、大企業が65.6%に対し、中小企業は58.4%にとどまり、規模間の格差が目立った。
 新たな感染拡大で「まん延防止等重点措置」の対象地域が広がっている。コロナ禍の収束まで長引くと、冬の賞与(一時金)や来春の賃上げにも悪影響が及びかねない。中小企業の業績回復が遅れるなか、可処分所得の下落で消費マインドが冷え込み、小売業や卸売業、製造業の業績悪化を誘発する負のスパイラルに陥りかねない。中小企業は、業績と賃上げの狭間で苦悩が続く。

  • ※2021年4月1日~12日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答8,235社を集計、分析した。
    賃上げの実態を把握するため、「定期昇給」、「ベースアップ」、「賞与(一時金)」、「新卒者の初任給の増額」、「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義した。
    資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義した。

Q1.今年度、賃上げを実施しますか?(択一回答)

「実施する」、前年度比8.5ポイント改善
 回答企業8,235社のうち、「実施する」は66.0%(5,435社)で、前年度から8.5ポイント回復した。前年度は、定期的な集計を開始した2016年以降で最低だった。
 規模別では、「実施する」は大企業が74.1%(1,040社中、771社)に対し、中小企業は64.8%(7,195社中、4,664社)で、10ポイント近い差がついた。

賃上げ

産業別 製造業の「実施する」が7割超
 Q1の結果を産業別で集計した。「実施する」の割合が最も高かったのは、製造業で71.9%(2,471社中、1,778社)だった。以下、建設業67.4%(1,028社中、693社)、卸売業66.9%(1,799社中、1,204社)と続く。最低は、不動産業の46.2%(175社中、81社)。
 規模別では、大企業は建設業、製造業、卸売業、運輸業で「実施する」が70%を超えた。一方、中小企業で70%を超えたのは製造業だけだった。
 宿泊業や旅行業、飲食業などが含まれるサービス業他の「実施する」は、大企業が65.6%(163社中、107社)に対し、中小企業は58.4%(1,228社中、718社)だった。また、金融・保険業は、大企業で61.2%(31社中、19社)、中小企業で36.3%(33社中、12社)だった。

賃上げ

Q2. Q1で「賃上げを実施する」と回答した方にお聞きします。内容は何ですか?(複数回答)

「ベースアップ」は28.7%にとどまる
 Q1で「実施する」と回答した企業に賃上げ内容について聞いたところ、5,402社から回答を得た。
 最多は、「定期昇給」の83.6%(4,520社)だった。以下、「ベースアップ」の28.7%(1,553社)、「賞与(一時金)の増額」の22.4%(1,214社)など。
 2021年4月から中小企業にも「同一賃金同一労働」が適用となったが、「再雇用者の賃金の増額」は、大企業で5.9%(769社中、46社)、中小企業で4.1%(4,633社中、194社)。2020年度実績は、大企業が5.3%、中小企業が3.3%だった。

賃上げ

Q3.賃上げ率(%)はどの程度ですか?年収換算ベース(100までの数値)でご回答ください。

最多は「2%以上3%未満
 Q1で賃上げを「実施する」と回答した企業に賃上げ率を聞いた。2,818社から回答を得た。
 1%区切りでは、最多は「2%以上3%未満」の26.6%(751社)。次いで、「1%以上2%未満」の24.0%(678社)だった。
 「50%以上」は8.2%(232社)だったが、2020年度実績は0.7%だった。この差は、コロナ禍で賞与(一時金)などの賃金を大幅に削減した企業が、支給水準を戻した結果とみられる。
 中央値は、全企業で2.1%、大企業で2.0%、中小企業で2.3%だった。


 2021年度に賃上げを「実施する」と回答した企業は66.0%で、2016年以降で最低だった2020年度(57.5%)から8.5ポイント回復した。ただ、コロナ前の「官製主導」では80%台で推移していた。再び感染が拡大し、「まん延防止等重点措置」の対象が広がる中で、業績回復が遅れた企業は賃上げに慎重になっている様子がうかがえる。
 「実施する」は、中小企業が64.8%にとどまり、大企業は74.1%で財務内容の格差が反映した。賃上げ率の中央値は、大企業が2.0%、中小企業が2.3%で、2%を挟んだ展開になっている。
 ワクチン接種効果で経済活動が本格回復を迎えた場合、人手不足の顕在化が懸念されている。賃金を含む待遇の差は、求人面でのインパクトは大きい。賃上げに対応できない中小企業は、人材獲得での苦戦が避けられないだろう。さらに、求人が計画を下回った場合、生産活動への支障も起きかねず、債務返済や事業再構築にも悪影響が危惧される。
 コロナ禍での各種支援策の副作用で過剰債務に陥った企業と、財務余力を残した企業の差が鮮明になりつつある。無理した賃上げは体力を余計に削ぎかねず、賃上げの状況を見守ることが必要だ。

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