• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2019年(1-10月)「アパレル小売業者」の倒産状況

 アパレル関連の小売業者の倒産が増加している。2019年1-10月累計の倒産は199件(前年同期比14.3%増)で、2016年同期(211件)以来、3期ぶりに増加した。すでに2018年の年間倒産件数(1-12月・199件)に並び、3年ぶりに前年超えが確実な状況になった。
また、負債額は1-10月累計で453億9,300万円(同135.3%増)と、前年同期の2.3倍に達した。リーマン・ショック後の2010年同期(457億7,400万円)以来の水準で、大型倒産の増加が全体を押し上げた格好となった。
世界戦略を進める「ユニクロ」など一部ブランドを除き、国内アパレルは苦境が続いている。商品の低価格化に加え、生産拠点の中国・アジア諸国の生産コスト上昇など、収益環境が悪化している。店舗売上の比率が高いブランドは固定費負担も重く、ネット通販が主軸のノーブランド勢との競合も激化している。
こうしたなか2019年は、全国に店舗展開する中堅企業以上の破綻が相次ぎ、負債が大型化している。長年、国内ファッション界をリードしてきた老舗セレクトショップの破産が大きな話題になったが、業界では業歴の長さ、知名度の高さも関係ない状況になっている。増税による買い控えなどの不安要因も浮上し、本格化する年末商戦に向けたアパレル小売業の動向が注目される。

  • ※本調査は、「日本標準産業分類 中分類」における「織物・衣服・身の回り品小売業」をアパレル小売業と定義し、 倒産状況を集計し、分析した。なお、同業種には「靴・履物小売」、「かばん・袋物小売」も含む。

2019年1-10月の倒産は119件、負債総額は8年ぶりに400億円超え

 2019年(1-10月)の「アパレル小売業者」の倒産は、119件(前年同期比14.3%増)と2016年同期(211件)以来、3期ぶりに増加に転じた。すでに2018年の年間倒産(199件)に並び、このペースで推移すると、前年の暖冬などの影響で倒産が増加した2016年(245件)に迫る勢いをたどっている。過去20年間では、2001年同期(388件)の半分の水準だが、リーマン・ショック後に減少をたどった倒産が再び、反転する気配が強まっている。
負債額は453億9,300万円(同135.3%増)と、前年同期の2.3倍に達した。負債が400億円台に乗せたのは、2011年同期(425億8,500万円)以来、8年ぶり。負債10億円以上の倒産が8件(前年同期4件)と2倍増し、全体を押し上げた。
負債額の最大はレディースカジュアル販売の(株)ラストステージ(TSR企業コード:152043039、喜多方市、負債66億9,200万円、特別清算)だった。

原因別 販売不振が8割

 2019年1-10月の199件のうち、原因別の最多は「販売不振」が164件(前年同期比9.3%増)で全体の82.4%を占めた。次いで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が13件(同30.0%増)で続き、業績不振が大半を占めている。このほか、粉飾決算などコンプライアンス違反を含む「放漫経営」が6件(同50.0%増)と1.5倍増だった。

形態別 破産が約8割 民事再生も3倍増

 形態別では、破産が172件(前年同期比13.1%増)で、全体の86.4%を占めた。先行きの見通しが立たず事業継続を断念する消滅型が中心。一方、再建型の民事再生も9件(前年同期比200.0%増、前年同期3件)と増加した。中堅規模以上の企業を中心に、店舗運営やブランドを継続しながら再生手続に沿ってスポンサー支援などの再建を模索するケースが増えている。

負債額別 1億円未満が約8割も10億円以上の大型倒産が2倍増

 負債額別は、1億円未満が148件(前年同期比7.2%増、構成比74.3%)で小・零細規模が大半を占めた。ただし、負債1億円以上10億円未満が43件(同34.3%増、同21.6%)、10億円以上は8件(同100.0%増、同4.0%)と、前年同期の2倍に達した。負債額が大きいレンジほど増加率が上昇し、負債の大型化が顕著となった。

主なアパレル小売業の倒産

主な倒産 全国展開する中堅や老舗企業が破綻

 負債額上位では中価格帯の婦人服ブランド「J.FERRY」((株)リファクトリィ、民事再生)や子供服専門店「motherways」(マザウェイズ・ジャパン(株)、破産)など、全国展開する中堅規模以上の企業が目立った。また「グッチ」「フェラガモ」などヨーロッパのブランドを日本へ紹介し、セレクトショップのさきがけとして知られた「SUN MOTOYAMA」((株)サンモトヤマ、破産)などの行き詰まりにも注目が集まった。

 婦人服大手(株)オンワードホールディングス(TSR企業コード:290030471、東証1部)の2020年2月期中間決算は、事業整理損や減損損失などで244億円の最終赤字を計上し、今後、数百店舗の閉鎖を進めるとした。また、英ブランド「バーバリー」とのライセンス契約が終了後、業績が低迷する(株)三陽商会(TSR企業コード:290059666、東証1部)は、今期も4期連続の最終赤字を計上する見通しだ。いずれも有力な販売チャネルである百貨店の不振の煽りを受け、中~高価格帯の「百貨店ブランド」を抱える婦人服大手が苦境に立たされている。
一方、低価格帯でも米国発ファストファッション「フォーエバー21」が、米国連邦破産法11条を申請、これを受け10月末で日本の店舗を閉鎖した。日本市場からの撤退は米本社の方針とはいえ、低価格化の旗手として話題となった日本進出当初の勢いに陰りが見えていた。
市場を牽引したアパレル大手の不振は、業界全体に暗い影を落としている。こうしたなか、全国的な販売網や長年の実績を持つ中規模以上の企業破綻が増えている点も見逃せない。企業規模に関わらず、アパレル小売業者は低価格化とコストアップに苦心し、利益なき消耗戦にさらされている。今後、アパレル業界の倒産は、さらに増勢を強める兆しを強めている。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ