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有料老人ホーム経営の(株)未来設計~ 預り金の流用疑惑が発覚 入居者など1,500名が被害に ~

 首都圏を中心に37カ所の有料老人ホームを経営していた(株)未来設計(TSR企業コード:294993290、東京都中央区、洞寛二社長)が1月22日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
 負債総額は有料老人ホームの運営会社としては53億8,600万円の大型倒産となった。
 負債には利用者が入居時の預り金なども含まれる。その預り金などを失った個人債権者は1,500名、総額は約34億円にのぼる。
 未来設計は、2002年の施設開設以来、介護市場の拡大を背景に成長を遂げてきた。だが、M&Aによる経営者の交代をきっかけに前オーナーが法外な報酬を得ていたことや粉飾決算の疑惑が発覚。入居者やその家族など多くの人を巻き込み、波紋は広がっている。
 未来設計は認知症、終末期ケアの有料老人ホーム「未来倶楽部」、「未来邸」を展開していた。創業から年間2施設ペースでホームを開設し、施設数は1都3県に37カ所を数える。公表された決算書では、売上高は右肩上がりで推移してきた。設備の充実した大規模施設も多く、福祉・介護業界では成長企業の一社として存在感を示していた。
 2017年8月期には、売上高100億7,000万円と初めて100億円を突破した。さらに、東京都港区内の高層オフィスタワーに本社を構え、「羽振りのよさ」も垣間見せていた(2018年12月、現本社に移転)。

同業者による買収をきっかけに事態が急変

 2018年7月頃から未来設計に関する問い合わせが急増した。経営陣が刷新し、役員の一部に「解任」登記もあったからだ。
 ほどなく介護施設運営の(株)創生事業団(TSR企業コード:870494953、福岡市博多区、伊東鐘賛社長)が未来設計を買収したことがわかった。
 ところが、これが単なるM&Aではすまなかった。創生事業団の傘下に入ると、未来設計は金融機関や施設オーナーなどへの一部支払いをストップし、トラブルに発展した。これが問い合わせ急増の本当の理由だった。
 未来設計は取引先に「買収後、粉飾決算など過去のデタラメ経営が発覚し、資金繰りが悪化した」と釈明、支払延期を要請していた。

粉飾決算と入居一時金の流用疑惑

 燻っていた同社の経営問題を昨年12月、内部告発でマスコミが一斉に報じた。
 その内容は、旧経営陣らが入居者からの預り金を売上に計上し、運転資金や創業者への高額な報酬に回していたという。
 入居預り金は想定する入居期間に応じ前払いする。入居者が想定よりも早く亡くなった場合、遺族側に返還する義務があり、独立して管理することが必要だ。預かり金は分割して売上に計上する必要があるが、これを一括計上するなどして売上を膨らませ、一方で創業者への高額報酬に充てていたと報じられた。
 民事再生申立書でも「創生事業団は未来設計の前実質的オーナーから、未来設計の持株会社の株式を49億円で買い取り経営権を取得したが、前実質的オーナー主導による大規模な粉飾決算が行われ、恒常的に赤字が発生し、運転資金もショートする恐れがあることが発覚した」(抜粋)としている。

未来設計が入居していたビル

未来設計が入居していたビル

前オーナーは年間2億円以上の役員報酬

 報道された未来設計の創業者で実質的なオーナー(以下、前オーナー)は、2016年に取締役を辞任している。2016年8月期の決算書では、同氏への役員報酬が2億1,000万円と記載されていた。
 役員退任後も前オーナーの支配下にあった未来設計の持株会社には業務委託料の名目で年間3,000万円前後が支払われている。また、前オーナー所有の不動産が「保養所」、「農園」の名目で未来設計に貸し出され、年間2,000万円前後の家賃が前オーナーに支払われていたことも記載されている。
 新経営陣はこうした前オーナーへの巨額報酬や、本社の高額家賃などの放蕩経営が経営悪化の原因と断罪している。
 未来設計はすでに前オーナーほか旧経営陣2名を相手取って損害賠償を求める裁判を提訴した。一方、前オーナーも未来設計に対して複数の訴訟を起こしている。前オーナーは一連の疑惑を否定し、自らの正当性を主張している。両者の争いは法廷に場を移し、司法の判断を仰ぐことになる。

創生事業団の下で再出発

 今後の未来設計の経営は、あらためてスポンサーに就任した創生事業団があたる。民事再生法の申請当日、未来設計の担当者は「社員の雇用も昨年には創生事業団に移っており、現場に大きな混乱はない」とコメントした。
 すでに全従業員が創生事業団から出向という形態をとっている。経営悪化が露呈して以降、民事再生はある意味「規定路線」だったとも言える。運営する37カ所の施設は、すべて継続する。介護サービスは命に関わるだけに、事業がストップし、入居中の高齢者が路頭に迷う最悪の事態だけは避けられた。
 だが、1,500人に及ぶ入居者からの預り金は再生債権となり、カットの対象となる。
 言わずもがなだが、老人ホームへの入居は本人と家族にとって大きな決断だ。熟慮を重ね、未来設計の施設を「終の棲家」として託した個人の財産を、毀損させてしまった責任は重い。

 2018年の老人福祉・介護事業者の倒産は全国で106件(前年比4.5%減)発生した。介護保険法が施行された2000年以降では7年ぶりに前年を下回ったが、高止まりが続いている。とりわけ「有料老人ホーム」は14件(同133.3%増)と前年の2.3倍に達し、急増ぶりが目立つ。
 高齢化社会を迎え、市場拡大をたどる福祉・介護分野だが、慢性的な人材不足など歪みも表面化している。安易な事業計画や杜撰な経営を続ける企業は、遠慮なく淘汰の波にさらされるだろう。だが、抗うすべのない被害者をこれ以上出す事だけは避けるべきだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月7日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)


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