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「平成30年7月豪雨」被災地域の事業拠点・取引先動向調査~ 約27万事業所が所在、取引先は全国に約90万社 ~

 西日本を中心に降り続いた記録的な豪雨から2カ月になる。広島県や岡山県、愛媛県など、各地で深刻な被害をもたらしたが、被災地では復旧作業がなおも続いている。
 東京商工リサーチは、保有する企業データベースから、「平成30年7月豪雨」の被災地域である8府県58市36町4村に置かれた本社や店舗、営業所、工場等の事業拠点を抽出、調査した。
 また、取引情報をデータベース化した「企業相関ファイル」で、被災地域に事業拠点を置く企業と取引している仕入先・販売先を調査した。
 被災地域には18万7,030社が本社や支社店、店舗など何らかの事業拠点を置き、事業拠点の総数は27万7,210事業所にのぼる。このうち、「本社」は17万1,030事業所(構成比61.7%)、次いで、「店舗」が3万3,321事業所(同12.0%)だった。
 被災地域に本社や事業所を置く企業と取引している取引先の本社は、都道府県別では仕入先・販売先ともに被災地域内の県が上位を占めた。このため被災地域で直接被害を受けた企業だけでなく、地域内での間接的な影響が根強く残る可能性もあることがわかった。
 企業活動の復旧に時間がかかり、直接被害を受けていない取引先まで含めた経済損失は想定以上に拡がることも危惧される。政府は補助金や融資制度など、中小企業向け支援策を打ち出しているが、被災による損害や操業停止などで中小企業の廃業が増える可能性も残している。


  • ※ 東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベース(約480万社)から、被災地域に事業所を置き、消滅型倒産(破産、特別清算等)、休廃業・解散を除いた生存企業を抽出、分析した。同時に、被災地に事業所または実質本社を置く企業の仕入先、販売先の企業を抽出、分析した。
  • ※ 対象企業は国および地方自治体の公務機関を除く。
  • ※ 被災地は内閣府(防災担当)が発表した「平成30年台風第7号及び前線等に伴う大雨による災害にかかる災害救助法の適用について【第9報】」に基づく。

分析対象は「災害救助法適用」地域

 今回の調査は、「平成30年7月豪雨」で災害救助法の適用対象とされた地域で、岡山県倉敷市や愛媛県宇和島市など、西日本を中心に8府県58市36町4村を対象に行った。

被災地の事業拠点 27万7,210事業所

 被災地に所在する事業拠点は、判明分で27万7,210事業所だった。
 事業拠点の種類区分では、「本社」が17万1,030事業所(構成比61.7%)で最も多かった。次いで、「店舗」が3万3,321事業所(同12.0%)、「支社店・営業所等」が3万1,889事業所(同11.5%)、「工場・作業所等」が1万8,033事業所(同6.5%)、「病院福祉施設」が9,934事業所(同3.5%)と続く。
 本社を除く事業所では、店舗や営業所などの販売関連施設が、工場などの製造関連施設を大きく上回った。

主な事業拠点別

都道府県別 広島県が最多

 都道府県別では、広島県が10万2,140事業所(構成比36.8%)で最多。次いで、岡山県の6万3,549事業所(同22.9%)、岐阜県の3万9,811事業所(同14.3%)、兵庫県の3万5,549事業所(同12.8%)と続く。
 被災地域に指定された市町村が少なかったり、中核都市が指定されなかった府県は、事業拠点数が少ない結果となった。

市町村別事業拠点数 広島市が5万5,877事業所で最多

 事業拠点数を市町村別でみると、広島市が5万5,877事業所で最多となった。次いで、岡山市が3万2,052事業所、兵庫県姫路市が1万9,402事業所、広島県福山市が1万8,132事業所、岡山県倉敷市が1万6,613事業所、岐阜市が1万6,490事業所、愛媛県今治市が7,481事業所と続く。
 被害が大きい倉敷市真備町には302社が本社、事業所を置いていた。内訳は、「本社」302事業所、「店舗」が48事業所、「工場・作業所等」が41事業所、「支社店・営業所等」が37事業所など。

事業拠点を置く企業の9割が被災地域と同一府県

 被災地に本社または事業所を置く企業は、全国で18万7,030社だった。本社地を都道府県別でみると、広島県が6万2,907社(構成比33.6%)で最も多い。次いで、岡山県4万40社(同21.4%)、岐阜県2万5,034社(同13.3%)、兵庫県2万3,365社(同12.4%)と続く。
 被災地の市町村を含む8府県がトップ10に入り、全体の9割(構成比93.4%)を超えた。
 本社と同じ県内や地域内で事業所を展開する企業が多く、本社だけでなく事業所も被災や影響を受けた可能性がある。

主な事業拠点別 都道府県別

事業拠点を置く企業の取引先は仕入・販売ともに約9割が被災地域外の企業

 被災地に事業拠点を置く18万7,030社の取引先は、仕入先で43万744社、販売先で45万7,707社が判明した。このうち、被災地の仕入先は5万2,688社(構成比12.2%)、販売先は5万8,146社(同12.7%)にとどまり、ともに約9割を被災地以外に事業所を構える企業が占めている。

仕入先・販売先ともに建設業が最多

 被災地に事業拠点を置く企業の仕入先43万744社のうち、産業別の最多は建設業で13万2,081社(構成比30.6%)だった。次いで、製造業が9万4,393社(同21.9%)、卸売業が6万5,819社(同15.2%)と続く。
 販売先の45万7,707社では、建設業が9万5,583社(同20.8%)で最も多く、卸売業8万2,520社(同18.0%)、小売業7万8,820社(同17.2%)と続く。

本社・事業所取引先 産業別

被災事業所の取引先 仕入・販売ともに被災地域内で高い

 被災地の事業所と取引している企業を都道府県別比率でみると、仕入先では広島県が30.4%で最多だった。次いで、岐阜県28.5%、岡山県28.3%、愛媛県25.5%、鳥取県21.5%と続く。一方、低かったのは沖縄県の4.5%、熊本県の7.4%、山梨県の7.5%。
 販売先では、岡山県が34.6%でトップとなり、広島県33.1%、愛媛県31.2% 、岐阜県29.6%、島根県29.5%が続く。最も低かったのは、仕入先と同じ沖縄県6.2%で、東京都7.6%、埼玉県8.8%の順。
 仕入・販売ともに被災地を含む県における割合が高く、地域への影響が心配される。

本社・事業所取引先 産業別

 「平成30年7月豪雨」で被災した中小企業や小規模事業者に、政府は様々な支援策を決定している。主なものでは復旧に要する費用への補助金や金融機関からの低利融資、債務の返済猶予のほか、従業員の休業手当などの一部を補助する「雇用調整助成金」の助成率引き上げ、専門家の派遣などがある。さらに資金・人材の両面から被災企業を支援していく構えだ。
 また、住民の生活や企業活動に障壁となる土砂、がれきの迅速な撤去や、農林水産関係の復旧に必要な用水路やため池の整備、観光業の風評被害抑止策として旅行者への宿泊費補助などの支援策も打ち出している。
 だが、時間の経過とともに事業再開を諦め、廃業を決断する事業者も現れてきた。元々の企業体力が弱い中小・零細企業は、迅速な支援を必要としている。 本調査で判明した、被災地に事業拠点を構える企業の取引先は全国に広がっている。仕入先が被災し、メーカーの部品調達に支障を来したり、販売先の被災で販売計画の変更を余儀なくされるケースも想定される。また、交通インフラなどの寸断はサプライチェーンに影響を与えている。過去に東日本大震災や熊本地震でもみられたように、直接の被害がなく特別支援策の対象外となる取引先などへの影響も中・長期的には懸念されている。
 未曽有の大水害に見舞われた企業の関係者は、日常生活でも苦難が続いている。被災地域内の企業だけでなく、間接的な影響を受ける企業にも視野を広げた支援策が緊急の課題に浮上している。

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